【高松宮記念】3度目の挑戦を実らせたダノンスマッシュ「馬場も季節も関係ない。勝つのは俺だ」

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2021.3.28

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ダノンスマッシュ 写真:アフロ

雨の先に待っていたもの~第51回高松宮記念回顧~

 レースの1時間前から降り出した雨を見て、ダノンスマッシュは何を思ったのだろうか。

 晴れてはいたものの重馬場で行われた昨年のこのレース、ダノンスマッシュは伸びを欠いて生涯最低着順となる10着に敗れた。国内の1200m戦で掲示板を外したことがない堅実派を絵に描いたような馬が大負けしたのだから、やはり道悪馬場でのレースが影響したと誰もが敗因を馬場と考えた。

 否、もしかしたら春のレースが苦手なのかもしれない。過去2回の高松宮記念での成績は4着、10着と国内のスプリント戦で馬券圏内には入れなかったのはこの2回だけで、しかも3歳時にはファルコンSに出走して1番人気に支持されながら7着に敗れている。

改めてダノンスマッシュの成績を見ると3~6月は[2・0・0・6]。あまり得意とは言えない春の時期に開催される高松宮記念は彼にとって決してベストな条件ではないのかもしれない。

おまけに馬場は昨年同様に重馬場......国内GI初制覇、父ロードカナロアとの親子制覇を達成するためには是が非でも勝ちたいはずのダノンスマッシュにはあまりに厳しい条件に思えた。

ファンにもそう映ったのかもしれない。レース当日の天気が雨になるとわかった時点で、ダノンスマッシュを本命に推す声は次第にトーンダウン。

香港スプリントを勝ってGIホースの仲間入りを果たし、短距離重賞では再三のように好成績を残していたにもかかわらず、ダノンスマッシュは1番人気の座を昨年の桜花賞馬レシステンシアに譲った。

レシステンシアは前哨戦の阪急杯を制して上り調子だったとはいえ、スプリントの経験がない馬が海外GIホースを差し置いて1番人気になったのだから、道悪馬場がダノンスマッシュにとってマイナス要素と言うのは誰しもが思うことだったと言える。

しかし、降りしきる雨の中で行われたパドックでダノンスマッシュは外目をキビキビと歩き、秘めたる闘志を瞳に映しているように見えた。まるで「道悪馬場も季節も関係ない。勝つのは俺だ」と言わんばかりの振る舞いは短距離界の絶対王者だった父、ロードカナロアがダブって見えた。

パドックで感じた王者の振る舞いはダノンスマッシュのレース運びにも表れていたように思う。鞍上の川田将雅が「馬の走りたいように走った」と振り返ったようにスタートから無理に前に付けることもなく、レース運びはあくまで自然体そのもの。

これまでGIになると「勝ちたい」という思いが強く出すぎる傾向があり、過去2回とも4番手以内で4コーナーを回っていたが、今回は中団やや後ろの位置取り。末脚のキレが削がれる馬場状態を考えれば、今回こそ前に付けるべきなのだが......。

迎えた直線。ダノンスマッシュは前を行くセイウンコウセイのすぐ後ろから抜け出しを図るという、昨年と全く同じ進路を取った。道悪馬場にスピードを奪われ、伸びることなく失速した昨年の結果を知っているだけに、この進路取りは無謀にも思えたが、ダノンスマッシュは伸びた。

外からクリノガウディーが突っ込んできた昨年と同じようにレシステンシアが迫ってきていたが、怯むことなく前に開いた進路に入り込んで前を行く馬たちに迫っていった。

おそらく昨年までのダノンスマッシュなら、前に進路が開いてもそこに入ることはなかっただろう。今までとは違い、慌てず騒がず自身のリズムを貫いたレースに徹したことでチャンスが巡ってきた。そしてその一瞬の逃さずにつかみ取ったことが勝負を決めた。

結果、ダノンスマッシュは前を行くモズスーパーフレアとインディチャンプを交わし、外から迫るレシステンシアをねじ伏せて先頭でゴール。過去2年惨敗していた高松宮記念を3度目の正直で制し、国内GI初制覇。そして父ロードカナロアとの親子制覇も成し遂げ、真の短距離王として君臨した。

無観客で行われた昨年とは違い、今年はわずかながら来場したファンが新王者誕生を拍手で祝った。降りしきる雨の中、偉大なる父と同じタイトルをつかみ取った人馬はゴール後にファンの前へと戻ってきたが、その姿はものの見事に泥まみれ。涼しい顔でスプリントGIを勝ち続けた父の姿とは似ても似つかない、泥臭い勝利だった。

だが、それでいい。GI制覇まで遠回りした分だけ、その勝利は人馬にとって格別なものになったはず。泥まみれになりながらも笑顔でインタビューに答える川田将雅の表情がそのすべてを物語っていた。

偉大なる父と同様、短距離王に君臨したダノンスマッシュ。父はその後、マイルの安田記念を制して2階級王者へとのし上がっていったが......息子はこの後、どんな道を歩むのだろうか。

■文/秋山玲路

2021年3月28日(日)2回中京6日 発走時刻:15時40分
第51回高松宮記念(GI)

着順 枠-馬番 馬名(性齢 騎手)人気
1着 7-14 ダノンスマッシュ(牡6 川田将雅)2
2着 8-16 レシステンシア(牝4 浜中俊)1
3着 5-9 インディチャンプ(牡6 福永祐一)3
4着 7-13 トゥラヴェスーラ(牡6 鮫島克駿)16
5着 2-4 モズスーパーフレア(牝6 松若風馬)6
6着 8-17 サウンドキアラ(牝6 松山弘平)7
7着 4-8 エイティーンガール(牝5 酒井学)12
8着 7-15 マルターズディオサ(牝4 田辺裕信)9
9着 6-12 セイウンコウセイ(牡8 幸英明)13
10着 8-18 ミッキーブリランテ(牡5 和田竜二)11
11着 3-5 ダイメイフジ(牡7 菱田裕二)18
12着 3-6 ダノンファンタジー(牝5 藤岡佑介)8
13着 4-7 アストラエンブレム(セ8 杉原誠人)17
14着 5-10 ラウダシオン(牡4 M.デムーロ)5
15着 6-11 カツジ(牡6 中井裕二)14
16着 1-1 アウィルアウェイ(牝5 吉田隼人)15
17着 2-3 ライトオンキュー(牡6 横山典弘)4
18着 1-2 レッドアンシェル(牡7 池添謙一)10

※出馬表・結果・オッズ等は主催者発表のものと照合してください。