【大阪杯】ジャイアントキリングでも、大波乱でもない ゴール直後に写ったのは「いつもの風景」

その他

2021.4.5

aflo_157451607.jpg
2021 大阪杯 (G1) レイパパレが優勝 写真:スポーツニッポン/アフロ

第65回大阪杯(GI)回顧

大阪杯のゴール直後、レイパパレの瞳には何が写っていたのだろうか。

無敗の三冠馬と最速女王の一騎打ちと言う下馬評で迎えた今年の大阪杯。レース前の話題は当然ながらコントレイルとグランアレグリアで持ちきりに。

5戦無敗でこのレースに駒を進めたレイパパレは本来ならばもっと話題になってもいいはずだったが、この豪華メンバーの中では脇役扱いに過ぎなかった。

それはレース当日の昼、雨が降り出してからも変わらなかった。馬場状態が悪化してよりタフな馬場になったことで500キロを優に超える馬体を誇るサリオスに逆転の目が出てきたが、ここまで無敗の彼女がその記録を伸ばすとは誰も想像していなかった。

レイパパレが「もしかしたら......」と思わせたのは、パドックに入ってからだった。降りしきる雨の中を悠然と周回する様子はまさに一流馬のそれ。

風格は感じるものの、明らかに短距離向きな馬体のグランアレグリアやサリオスよりも彼女の方がずっとよく見えたし、プラス16キロにビルドアップしてきたコントレイルにだって勝るとも劣らない。

だが、それでも世間はコントレイルとグランアレグリアの一騎打ちを信じた。レイパパレの単勝オッズは12.2倍だったが、コントレイルとグランアレグリアの単勝オッズはそれぞれ1.8倍と2.8倍。無敗の彼女は結局、レースが始まるまで脇役扱いだった。

しかし、それだけ主役と目された馬たちが素晴らしかったのも確か。実際にコントレイルはプラス16キロの馬体重が示した通りに馬体が一回り大きくなり、3歳時に感じていたひ弱さはなく、どこか頼りなげに周回することが多かったパドックでも堂々と周回していた。

その様子はまさに「俺が最強馬だ」と言わんばかりに。普段は慎重なコメントを残す鞍上の福永祐一もこの馬に関しては例外で、インタビューは常に自信ありげ。時にふてぶてしささえ感じるその振る舞いには「コントレイルに勝てる馬なんていない」と言っているようだった。

そうして迎えたレース。コントレイルが後方からレースを進めるのとは対照的に、レイパパレはハナを奪いに行った。

スピードが出づらい道悪馬場を生かして、相手の末脚を封じるには自身が前に出てペースを握るしかない。レイパパレと鞍上の川田将雅は無敗馬ながら、挑戦者の立場でレースに臨んだ。

1コーナーを過ぎるころにはレイパパレに競りかける馬はいなくなり、番手にサリオス、中団にグランアレグリア、その2頭を見ながらコントレイルという位置取りに。

レイパパレは前半1000mを59秒8というペースで引っ張った。馬場を考えたら決して緩い流れではなく、むしろ先行する馬たちには厳しい流れのはずだが、その逃げに迷いはなかった。

このレース一番の見どころとなったのは3コーナー過ぎ。レイパパレを追いかけていた先行馬たちが失速する中で上がっていったのが三冠馬コントレイルと短距離女王のグランアレグリア。

そこにインコースで懸命に粘っていたサリオスが並び、いよいよ4コーナーへ。逃げるレイパパレをコントレイルとグランアレグリアが捕まえるのはもう時間の問題。直線はこの2頭の一騎打ちになると誰もがそう確信した。

ところが、直線に入ってもレイパパレは失速するどころか伸び続け、反対にコントレイルたちの方が道悪馬場に脚を取られて伸びあぐねている。

気が付けば前を行くレイパパレは涼しい顔のまま走り続け、外からは伏兵モズベッロが突っ込んでくる始末。無敗の三冠馬と最速女王の一騎打ちはあまりにあっけなく幕を閉じた。

結局、レイパパレが後続に4馬身差をつけて快勝するというジャイアントキリング。

道悪馬場に乗じて伸びてきたモズベッロが2着に食い込み、コントレイルはグランアレグリアを競り落としての3着が精一杯。泥をかぶらず軽快に走ったレイパパレと泥だらけになったコントレイルとグランアレグリアの姿はあまりに対照的だった。

これでコントレイルは前走のジャパンCから2連敗、前を行く馬を捕まえられないだけでなく、外から来た馬に差し切られるという屈辱を味わっただけにその無念さは想像に難くないが、鞍上の福永祐一は馬場に敗因を求めつつ、「しっかりと最後までグランアレグリアには競り勝ってくれた」とコントレイルの闘志を讃えた。

父譲りの切れ味を武器とする馬だけに良馬場でこそリベンジを果たしたい。

一方、無敗の6連勝でGIホースとなったレイパパレ。鞍上を務めた川田将雅は「不安の方が大きかったが、あっさりと克服してくれた」と相棒の走りをたたえたが、あれだけの強豪を相手にして「あっさり」という言葉がスッと出てくるあたり、レイパパレの底知れぬポテンシャルの高さを感じさせる。

ここまで負け知らずのレイパパレからしたら、ゴール直後自身の前にライバルがいないのはいつものこと。もしかすると彼女からしたら、今回の勝利はジャイアントキリングでも大波乱でもなんでもなく、「いつもの風景」だったのかもしれない。


■文/秋山玲路