町田樹に独占インタビュー「継承プロジェクト」や田中刑事への思いを語る

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2021.4.21

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【プリンスアイスワールド BSテレ東で放送予定】
町田樹が取り組むフィギュア界初の「継承プロジェクト」。過去に振付、披露された演技を、別のスケーターにそのまま継承していくという新たな試み。その第1弾を演じるのは田中刑事選手。果たして披露される演技は、どんな作品になるのか。連続配信企画。町田樹へのインタビューで、その思いに迫った。


Q.継承プロジェクトとは?

フィギュアスケートのプログラムはいわばオーダーメイド形式の創作なんですね。振付師がいて、選手から依頼され選手のために振付をしてプログラムを伝授する。フィギュアスケートの長い歴史を見ると、傑作のプログラムがいくつもあります。でも、そうした作品は選手の引退と同時に世に出ることは無くなってしまうんです。

それはあまりにももったいない、良い作品は代々踊り滑り継いで次世代に継承していくべきではないかと考えていたので、この継承プロジェクトを立ち上げました。


Q.第1弾は、町田が2014年に自ら振付しプリンスアイスワールドで演じた作品「ジュ・トゥ・ヴ(Je te veux)」。なぜ町田は田中にこの作品を継承しようと決めたのか?

まずどの作品を継承するのかとなった時に、最初の頃に作ったジュ・トゥ・ヴや白夜行は3〜4分、長くて5分くらいと、フィギュア競技のプログラムと同じくらいの尺で比較的滑りやすい。ジュ・トゥ・ヴは、クラシックバレエの基本が備わっていれば的確に演じることができる。それでジュ・トゥ・ヴにしました。

では誰に継承してほしいかとなった時に、私のイメージではジュ・トゥ・ヴは30代後半から40代前半のパリに住む男の物語なんですね。その男を体現してくれるスケーターは誰かと思った時に、田中刑事選手意外に誰も思い当たらなかったです。

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田中選手はスケーターとして身体のプロポーションが整っていますし、容姿も端正でスケーターとして良い身体を持っている。その身体の美しさを存分に発揮すればきっと良い作品になると思いました。

もちろんスケーティングの能力や手の運びなど、表現面の能力についてもきちんと伝えて教えれば「打てば響く」という感じで身に付けてアウトプットしてくれる確信があったので、田中選手に継承プロジェクトのトップバッターとして声をかけました。田中選手も即決で「ぜひ」ということだったので、今回のコラボが実現しました。

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フィギュアの名作を後世に残したいという思いー

フィギュアスケート以外の舞台芸術、バレエだったり演劇だったり、一般的なアート界では当たり前のように継承が行われています。例えばクラシックバレエでは、振付家・プティパが作った「白鳥の湖」は今でも踊り受け継がれています。

それと同じようにフィギュアスケートの良い作品は10年20年30年40年と、先へ続くような作品があっていいと思っていたし、私はその気持ちでプロスケーターとして自ら作品を創り演じてきました。


フィギュアスケートの名作に著作権をー

プログラムを継承する際に基盤となるのが、著作権なんです。今まで法学界では「スポーツは著作物にあらず」が通念だったんですが、私はフィギュアスケートなど音楽を使って踊るアーティスティックスポーツの演技は著作物になり得るのではないかと思い、それを研究テーマとして大学院生時代から研究をしてきました。

2019年にようやく「アーティスティックスポーツの演技は著作物だ」という研究の成果を論文で発表しました。そのことでやっと学術的に実証することができたので、フィギュアスケート界でもこういった試みがどんどん普及していってほしいと思っています。


継承プロジェクトがもたらす恩恵ー

フィギュアスケーターは現在日本には5,000人以上います。コーチ業をせずに振付家一本で生計を立てている人は、5人くらいしかいません。そのような状況下で大勢の選手に良い作品を振付けようとしたら人手が足りないんですね。

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作品を継承する制度が普及すれば、良い作品を生産せずにストックしてそこから再生産をしてスケーターに実演してもらうことができます。こういうシステムが完成すれば、アイスショーの世界でももっと優れた作品がたくさん見られるし、色々と新たな試みが出てきます。


実はこのプロジェクト、昨年4月に水面下で始動したがコロナの影響でわずか1日で中断となった...ー

昨年は水面下から水面上に出て公式に活動できなかったので、中断ではなく頓挫した感じでしたね。でも田中選手はその間も日々バレエを自主練習でやってくれていて、去年演じるよりも更に良いコンディションで演じられると思うので、今思えば1年延期して良かったと心から思います。


Q.町田にとってのプリンスアイスワールドの存在とは?

一言でいえば「母なる舞台」です。

本当に私のことを信頼して自由に任せてくれました。普通、5分以上の時間をゲストスケーターに与えることはまずないんです。常に温かく見守ってくれていた舞台で、ショースケーターとして自分が成長できる場でもあったし、振付や演出をする者としてもプリンスアイスワールドがあったお陰で成長することができました。その舞台にこうした形で貢献できるのは、これ以上ない嬉しさで幸せに思います。


Q.町田は田中にどんなジュ・トゥ・ヴを演じてほしいのか?

田中刑事のジュ・トゥ・ヴを演じてほしい。ジュ・トゥ・ヴは私が振付をして演じましたが、決して町田樹の像を追うのではなくあくまでも田中刑事というスケーターオリジナルの作品に染め上げてほしいですね。見ている人に町田樹を脳裏から消すくらい、田中選手の作品だったんだと思わせるくらいジュ・トゥ・ヴを掌握して、堂々とパリの男を演じてほしいと思います。