【ヴィクトリアM みどころ】絶対女王に求められる「美しい勝利」

その他

2021.5.15

aflo_148646243.jpg
グランアレグリア 写真:日刊スポーツ/アフロ

勝利の女神はどうやら、美しく勝つ馬がお好みのようだ――

昨今のヴィクトリアマイルを振り返ると、こうした結論にたどり着く。

「クラシック戦線を終えた牝馬たちが、古馬になった後も目標とするGIを」という目的で創設されたヴィクトリアマイル。

その目論見通りにクラシック戦線であと一歩届かなかった馬たちが悲願を果たすシーンも見られたが、昨今では強い牝馬がただただ輝き続ける舞台に変化したように思える。

【動画】春の女王決定戦 ヴィクトリアM(GI)ガチ予想!キャプテン渡辺&森香澄&虎石晃

例えば最後の直線だけで2着馬に9馬身もの差をつけて圧勝した2009年のウオッカ、異次元の末脚でゴール寸前に勝利をもぎ取った2010年のブエナビスタ、そしてノーステッキのまま涼しい顔をしてライバルたちを粉砕した昨年のアーモンドアイなど、強い牝馬がベストパフォーマンスの走りを魅せたというケースが目立つ。

 そのためか、ヴィクトリアマイルを振り返ると勝った馬に対して速かった、強かったというよりも「美しかった」という感想が先に立つ。

ウオッカも昨年のアーモンドアイも直線で自身の走りをファンに魅せつけてゴールした。その瞬間の彼女たちの表情はこれ以上ないまでに美しいものだった。

 歴代の名牝たちが紡いできた美しい勝利の光景こそ、ヴィクトリアマイルの歴史そのもの。今年の出走馬でその系譜を引き継ぐとすれば、グランアレグリアがその筆頭格だろうか。

 3年前の6月。新馬戦が開幕してまだ2日目という速い時期にデビューした彼女は天賦の才とも言うべきそのスピードを見せつけるかのように走り、我々の心を奪った。

3歳になって最初のレースとなった桜花賞でも好位から抜け出してクラシックを制覇。桜色の優勝レイをかけられた彼女は本当に美しかった。

だが、天賦の才ともいえるスピードは時に諸刃の剣に。2歳王者を決める朝日杯FSでは最後に伸びきれないまま3着に終わり、桜花賞後に挑んだNHKマイルCでは直線で爆発することができずに4位入選→5着降着という憂き目に。

才能こそあるも、どこかか細いオンナノコ......それが3歳春のグランアレグリアだった。

 ところがその年の暮れに行われた阪神Cで古馬を蹴散らしてから、グランアレグリアは変わった。4歳緒戦の高松宮記念こそ敗れたが、直線で豪快に追い込んでくる様子は一流馬のそれ。そんな彼女が完全に開花したのが昨年の安田記念だった。

 マイル戦線でトップクラスの馬たちが集まっただけでなく、1つ上の牝馬三冠馬アーモンドアイまでエントリーしているという超豪華メンバーの中、グランアレグリアは中団で折り合い、直線で猛スパート。

メンバー最速となる上がり3ハロン33秒7という脚を繰り出し、あのアーモンドアイを置き去りにして勝利をもぎ取った。その異次元のスピードで新女王誕生を強烈に印象付けた。

 これで勢いに乗った彼女は秋にはスプリンターズS、マイルCSを制してこの年の短距離GIを3勝。距離なんて関係ないと言わんばかりの勝ちっぷりでついには最優秀短距離馬のタイトルまで掴んだ。

 女も男も、距離も関係ない。自らの走りでそうした壁を崩してきた彼女がベストパフォーマンスを発揮した舞台に戻ってくる。果たして最後の直線でグランアレグリアはどんな走りを我々に魅せてくれるだろうか。

 さかのぼること10年前、女王の座に君臨していたブエナビスタを向こうに回して競り勝ったアパパネのように、絶対女王グランアレグリアに挑む馬もいる。

 その馬とは、前に付けるであろうレシステンシアだ。

 父ダイワメジャー譲りのスピードを武器に、デビューからあれよあれよの3連勝で阪神JFを制して2歳女王の座に君臨。

世代最高とも言われたスピードを武器にクラシック戦線でも主役を張ると思われたが、桜花賞ではのちに牝馬三冠を達成するデアリングタクトに差され、復権を期したNHKマイルCではラウダシオンに捕まえられた。

有り余るほどのスピードを生かせず苦悩する様子はかつてのグランアレグリアに似ていなくもない。

 そして彼女が輝きを取り戻したのはやはり短距離路線だった。4歳年明け緒戦となった阪急杯で久々の勝利を挙げると、高松宮記念ではタイム差なしの2着。それも逃げ一辺倒だったレーススタイルから脱却して、中団からスパートをかけるというもの。その成長曲線はまさに昨年のグランアレグリアを見ているかのよう。

 アーモンドアイに一泡吹かせた安田記念での彼女のように、直線早めに抜け出して持ち前のスピードをふんだんに生かすレース運びであっと言わせたい。

 グランアレグリアの後ろでは、世界的良血馬デゼルが虎視眈々と構えているだろう。

 父ディープインパクトは言うまでもないが、母アヴニールセルタンもフランス牝馬2冠馬。フランス語で「翼」と名付けられた彼女はデビューこそ遅かったが、羽の生えたかのような走りで飛躍。とうとう阪神牝馬Sで重賞初制覇を果たすまでになった。

 彼女の魅力はその末脚。直線で首を下げ、まるでチーターのように駆けていく姿は一度見たら忘れられないほどのインパクトがある。バネの効いたあの走りが春の府中に炸裂するか。

 美しい勝利を求められる絶対女王、そしてその女王の座を狙う若い力......勝利の女神は今年、どんな馬に微笑むのだろうか。


■文/福嶌弘

第16回ヴィクトリアマイル(GI)枠順
枠-馬番 馬名(性齢 騎手)
1-1 マジックキャッスル(牝4 戸崎圭太)
1-2 シゲルピンクダイヤ(牝5 和田竜二)
2-3 クリスティ(牝4 斎藤新)
2-4 イベリス(牝5 酒井学)
3-5 デゼル(牝4 川田将雅)
3-6 グランアレグリア(牝5 C.ルメール)
4-7 マルターズディオサ(牝4 田辺裕信)
4-8 ランブリングアレー(牝5 吉田隼人)
5-9 テルツェット(牝4 M.デムーロ)
5-10 レッドベルディエス(牝5 石橋脩)
6-11 ダノンファンタジー(牝5 藤岡佑介)
6-12 サウンドキアラ(牝6 松山弘平)
7-13 プールヴィル(牝5 三浦皇成)
7-14 ディアンドル(牝5 団野大成)
7-15 アフランシール(牝5 大野拓弥)
8-16 リアアメリア(牝4 福永祐一)
8-17 スマイルカナ(牝4 柴田大知)
8-18 レシステンシア(牝4 武豊)

※出馬表・成績・オッズ等は主催者発表のものと照合してください。