なでしこジャパン 五輪8強敗退で痛感した世界トップとの差【五輪女子サッカー】

サッカー

2021.7.31

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ベスト8敗退のなでしこジャパン Photo by Maja Hitij/Getty Images

 サッカー日本女子代表のなでしこジャパンは、準優勝した2012年ロンドン大会以来2大会ぶりの出場となる東京オリンピックで初の金メダル獲得を目指したが、7月30日に埼玉スタジアムで行われた準々決勝でスウェーデンに1-3で敗れて敗退。世界トップチームとのギャップを痛感させられた大会となった。

 3日前のグループステージ最終戦でチリに勝利してようやく今大会の初勝利を手にし、なんとかE組3位で8強に進出したなでしこジャパンだったが、その先に進む力はなかった。

スウェーデンは今大会初戦で優勝候補のアメリカに3-0と快勝してG組を3戦全勝の1位で勝ち上がり、グループステージ3戦目を休んでリフレッシュした主力が、この試合の立ち上がりから勢いのある攻撃を展開した。

 日本はスピードのあるスウェーデンのプレーに前半7分のCKから攻撃を畳みかけられて押し込まれ、最後は左クロスをDFマグダレナ・エリクソン選手にヘディングで捉えられて、いきなり0-1のビハインドになった。

 それでも、相手のプレーに慣れてくると徐々にボールを保持。相手にプレッシャーをかける積極的な守備や細かいパスをつないだ攻撃を見せて、前半24分には最終ラインから右サイドバックのDF清水梨紗選手からMF長谷川唯選手とつないで、長谷川選手の右クロスに今大会初先発のFW田中美南選手がゴール前に走り込んで左足を合わせて、同点に追いついた。

 さらに、前半30分には岩渕選手のスルーパスに田中選手がペナルティボックスで反応してPKの判定を得た。だが、これはVAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)のチェックで取り消された。

 それでも日本は田中選手が前線で積極的に動いて、岩渕選手との連携で相手ゴールに迫る場面を作り、追加点を期待させる流れを作った。

 しかし、後半に入ると早い時間帯に再びスウェーデンに攻め込まれ、後半8分にアメリカ戦で2得点をマークしたFWスティナ・ブラクステニウス選手にペナルティエリアに持ち込まれ、2点目を決められた。

 そして後半23分には、ペナルティボックス内で相手選手のシュートブロックを試みたMF三浦成美選手が、VARでハンドがあったと確認されてスウェーデンにPKを献上。これをFWコソバレ・アスラニ選手に決められて1-3とされた。

 日本はボールを保持しても、ブロックを敷いて組織的に守備を固めるスウェーデンに苦戦。後半半ばからは、連戦の疲れからか動きが落ちて相手を崩せず、選手交代も遅れて効果的な押し上げもできず、終盤はシュートを打つ積極性も姿を消して、最後まで点差を埋めることはできなかった。

 「いい時間帯は作れたと思うが、スウェーデンが非常にいいチームで、及ばなかった」と、なでしこジャパンの高倉麻子監督は肩を落とした。

 今大会で背番号10を付けて奮闘した岩渕選手も、「結果が全ての世界。残念だが、やれることはやったと思う」と話したが、日本は最後まで持ち味を十分に発揮するには至らなかった。

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ベスト8敗退のなでしこジャパン Photo by Maja Hitij/Getty Images


 日本はスロースタートというべきか。グループステージ2戦目まで、相手にプレッシャーをかける積極性や勝利への貪欲さはあまり感じられず、4試合目のスウェーデン戦で、ようやく日本の良さが出て日本のペースで試合を運ぶ場面も他の試合よりは多く見られたものの、全般に日本の技術力を活かした連携や相手を崩す工夫も、鳴りを潜めたままだった。

不利な状況で軌道修正を図るための経験や、強いリーダーシップに欠けていたのではないか。

 選手やチームは、試合を通して見えたプラスやマイナスを次に反映させて積み上げを図ることができる。特に厳しい相手との対戦は、自分たちの立ち位置を知る上で欠かせない。だが、今回の五輪へ至るまでの日本女子選手の実戦環境はどうだったか。

 国内リーグは今年9月に新たにスタートするWEリーグ発足を前に、前身のなでしこリーグのシーズンが昨年11月に終了。プレー機会を求めて海外へ移った代表選手もいたが、大会前までの半年間、多くの選手にとって国内リーグで公式戦に臨む機会はなかった。

代表チームも、2019年夏の女子ワールドカップ(W杯)を16強で終わると、その年の試合は11月の南アフリカ戦が最後。2020年の年明けから新型コロナウィルス感染症が世界的流行を受けて、例年参加してきたアメリカでの親善大会への参加を見送らざるを得なくなり、東京五輪までの最後の1年半は国際試合の機会が限られた。

今年4月から6月にかけて、ようやく親善試合を行うことができたが、4試合の対戦相手はFIFAランクで日本の10位に対してパラグアイ50位、パナマ60位、ウクライナ28位、メキシコ31位。

世界トップ12チームが集結する五輪の本大会を睨んで、日本の現在地をチェックするには十分とは言い難く、力が試されるようなレベルの対戦は、7月14日のオーストラリア(FIFAランク9位)まで待たなくてはならなかった。

 そもそも、男子に比べて女子の国際試合の機会は少ない。機会があっても、適切な相手と試合を組めるか、そこも問題だ。

 岩渕選手は、「世界と勝負する、世界に勝つという部分ではもっと全員が貪欲に、本当に上を目指してやる環境を求めなければ多分、勝てない」と指摘する。

 日本は2011年女子ワールドカップに優勝し、翌2012年のロンドン五輪では銀メダルを獲得した。だが、その後、各国でも持ち前のフィジカルの強さに、技術を加える傾向が定着した。もはや、技術重視だけでは世界のトップと競うことはできない。日本人選手が持つ技術や俊敏性を発揮するためにも、フィジカルやメンタルの強さ、相手のプレーを攻略するための対応力、それを身につけるための経験は不可欠だろう。

長谷川選手は、「大会を通して力不足を感じた。世界のサッカーが本当に成長してきている中で、日本ではリーグもそうだが、レベルをどんどん上げていかないと、置いて行かれてしまう」と危機感を口にした。


文:木ノ原句望