「もう十分、やりきった」平成の怪物・松坂大輔引退発表でキヨシがアテネ五輪の思い出&江川卓との比較をぶっちゃける

野球

2021.9.6

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引退を発表した 平成の怪物・松坂大輔/テレビ東京スポーツ

21年の現役生活にピリオドを打つという決断を下した松坂大輔。

甲子園を沸かせた高校時代から現在まで平成の怪物と称された男とアテネ五輪でともに戦った中畑清は松坂にどんな印象を持っていたのか、そして松坂と同じ「怪物」の称号を欲しいままにした江川卓ともプレーしている中畑。

間近で見ていたからこそわかる2人の怪物の投球、投手としてのプライド、その素顔と性格をキヨシが余すところなく語った。

昭和と平成の2人の怪物、共通点は人懐っこさ

7月7日、平成の怪物と称された松坂大輔が今季限りで現役を引退すると発表。

昨年7月に手術を受け、2018年以来となる一軍マウンドでの登板を目指して懸命にリハビリに励んでいたものの、右腕のしびれが最後まで取れず満足のいくコンディションでの投球ができないことを理由に21年の現役生活に別れを告げることを決断した。

「来るべき時が来たかなというのが、素直な気持ちかな」と、少々残念そうにコメントしたのは中畑清。

中畑が現役を引退しておよそ10年後にプロ入りした松坂とは対戦経験はおろか、さほど接点がないように映るが、実はこの2人、2004年のアテネ五輪の野球日本代表で監督と選手として日の丸を背負っている。

エースとして銅メダル獲得に貢献した松坂に対し、中畑は特別な思いを抱いているようだった。

「松坂のベストピッチングは?」という問いに対し、中畑が挙げたのはアテネ五輪の対キューバ戦だった。当時を思い出しながら、中畑はこう語った。

「(当時の松坂は)全盛期に近い状態だと思うけど、キューバに勝つには誰が勝てる投手かというのを私なりに考えたし、大野豊投手コーチも含めて考えた。その結果、力対力で行くのならということでみんな文句なしで松坂を先発にって決めたの。本人もその気持ちがものすごく強かったよ」

当時、五輪の舞台で日本はキューバに勝ったことがなかった。史上初めてオールプロで臨み、金メダル獲得が絶対とされた中でどうしても破らなければならない強敵を負かすために監督の中畑は先発に松坂を指名。

その思いに松坂も応え、初回からエンジン全開の投球で強打者揃いのキューバ打線をきりきり舞いに。そして迎えた4回裏、中畑にとって忘れられないシーンがあったという。

「グリエルとの対戦だね。グリエルと松坂との力対力の対決で、グリエルのピッチャーライナーが投げ終わった松坂のここ(右腕)だよここ!ホントにボールの後、アオタンができていて、当たった瞬間うずくまるくらいの感じで1回引き上げたんだ。ボールの跡を見た瞬間に『ダメだろう』と思ったから『大輔ヤバいぞ、無理だろう』と言ったら『大丈夫です中畑さん、やらしてください!行かせてください!!』というスゴイ気迫だったんだよ。もうこのチャンスしかないという大輔の覚悟を感じたね」

和田一浩の2ランで先制し、ここまで日本代表が優位な流れで投げていた松坂。

日本代表の悲願とも言える対キューバ戦での初勝利、そして国際大会で活躍して、その実力を世界にアピールしたいという思いが重なり、右腕に激痛が走ろうともマウンドを降りることを拒んだ。

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アテネ五輪 日本対キューバ 松坂大輔 Photo by Clive Mason/Getty Images

そんな悲壮な思いが届いたのか、この日の松坂はキューバ打線を8回まで無失点に抑える完璧なピッチングを披露。このままいけば完封かと思われたが、9回にとうとう捕まり3失点。

ピンチに追い込まれた際、中畑はリリーフの石井弘寿への交代を告げにマウンドに上がった時の松坂の様子を今でも覚えているという。

「抑えの石井弘寿に変えるから、マウンドへ行って『大輔、もういいぞ』と言ってボールをもらおうとしたら、松坂は『いいです!まだイケます!!』って(笑)。こっちも『いいから替われ!』と言ったら、マウンドにボールをボーンとぶん投げてさ、スゴイ反骨心だったよ。絶対自分で行くんだという感じね。あの気迫は今でも忘れないな。俺は監督だったけど、立場なかったから(笑)」

石井弘寿にスイッチしたことで日本代表はピンチを脱し、キューバ代表の猛攻を凌いで6対3で念願の勝利。中畑監督の継投策が実った形になった。

結果的に勝利したが、降板を告げた際の松坂のマウンドでの態度は一歩間違えば、監督への造反行為として処罰されてもおかしくないもの。しかし、この松坂の一連の行動について中畑はこう評し、現役引退という決断を下した松坂への思いを語ってくれた。

「あの不貞腐れた態度から、投手として松坂大輔という日本を代表する投手の原点を見ることができたと思う。そのあとメジャーに行って野球人生を全うした。ちゃんとやり切ったというかね。そういう彼の姿を見てきただけに、もういいんじゃないかって思うよ」

日本代表のエースとして、誰よりも強い意志を持って投げていた松坂の思いを汲み、そしてボロボロになるまで現役にこだわった松坂に対し、ねぎらいの言葉をかけた。

松坂とは選手と監督という関係だった中畑だが、もう一人の「怪物」、江川卓とは現役時代ともにプレーした仲。

高校時代からその名を全国にとどろかせてきた2人の怪物を知る貴重な人物として、この2投手を比較してくれた。

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松坂大輔・江川卓/テレビ東京スポーツ

「松坂も江川も変化球の切れ、まっすぐの威力というと際立っているけれど、タイプは違うかな。球種で言うと江川の方がまっすぐオンリーって言ってもいいくらいだった。でも大輔はとんでもないスライダーがあるし、フォークもあるし器用だった。江川は決して器用ではなかったね。ただ、ストレートだけである程度三振を奪いに行ける。狙って取りに行けるという凄さが江川にはあった。一方の大輔はタイミングを変えていろいろな変化球を混ぜて最終的にはストレートで三振を取るんだけど、投球の幅、それに関しては大輔の方が合ったんじゃないかな」

ホップするように伸びたという直球を武器にした江川とストレートだけでなく、多彩な変化球を織り交ぜて投球してきた松坂とでは時代背景もあるが、やはり松坂の方が投球に幅があると中畑は評したが、反対によく似ているところでは両者の性格面を挙げた。

「性格は2人とも似ていると思うよ。愛されるキャラというかね。江川はそんなキャラに見えなかったかもしれないけど、マスコミにだけは一線を引いていた。ファンやチームメイトには本当に人懐っこい奴だったよ。大輔もそういうところあるでしょ? 前に俺がインタビューに行った時とか思いっきりナメてかかったりとかね(笑)。江川もそうだけど。みんなから愛されるし、いいキャラなんだと思うよ」

最後に松坂の今後について、中畑はこんなコメントを残して締めくくってくれた。

「一番は指導者になることだよ。我々と同じように裏に回って評論家や解説になるのもあるけど、ユニフォームを着て彼の経験を生かすというのもね。そういうのを待っている若手も多いだろうし、彼の考え方が伝えるためにもやっぱりユニフォームを着ていて欲しいなって思うよ」

高校時代から常に世間の注目を浴び、日本だけでなくメジャーリーグや国際大会でも無類の勝負強さを発揮した「平成の怪物」松坂大輔が現役でいられるのは残りわずか。

中畑が語ったようにその貴重な体験を後輩たちに伝える日がやって来るのだろうか。

(文/五十嵐宇宙)