これぞ名手の技!福永祐一の神騎乗レース5選「らしさ全開」な名レースの数々

福永祐一 JRA最終騎乗後インタビュー 写真:スポニチ/アフロ
逃げ差し自在の"らしさ全開"な名レースの数々
JRA歴代4位となる通算2636勝を記録して、27年の騎手生活に別れを告げた福永祐一。
数多く記録した勝利の中には「彼でないと勝てない」と思わせる好騎乗、騎手の腕がモノをいう結果となったレースも多数存在する。
そこで今回は福永祐一らしさが存分にあふれ出た「神騎乗」とも言うべきレースを紹介する。
■1999年桜花賞(騎乗馬:プリモディーネ)
福永祐一にとって記念すべきGⅠ初制覇となったレース。
騎乗したプリモディーネとともに4番人気でこのレースを迎えたが、スタートから後方に位置して1番人気馬スティンガーを見ながら脚を溜めると、4コーナーまで後方13番手に付けるという大胆な戦法を敢行する。
直線を向いた直後は前が壁になっていたため万事休すかと思われたが、福永は慌てず、前の馬たちが動いて進路を開くのを待ってからスパート。
するとプリモディーネはメンバー最速となる上がり3ハロン35秒7の末脚を繰り出し、先行したトゥザヴィクトリーやフサイチエアデールらを退けて快勝した。
デビュー4年目、当時22歳の福永はレース後に「たくさんの方に応援してもらっていて、やっといい結果を出せてよかった」と多くの関係者、ファンに感謝の言葉を残したのも印象深い。
■2005年桜花賞(騎乗馬:ラインクラフト)

2005年の桜花賞 ラインクラフトがシーザリオの猛追を凌いで優勝 写真:山根英一/アフロ
プリモディーネの勝利から6年後、節目の10年目を迎えてすっかり貫禄が付いてきた福永祐一はこの年、ラインクラフトとシーザリオという2頭の牝馬と出会い、桜花賞ではどちらに乗るかが注目された中でラインクラフトを選択。
迎えた桜花賞は自身のお手馬の2強対決となったが、福永は前走で差し切り勝ちを収めたラインクラフトを積極的に前に生かせるという意外な作戦を取った。
好位3~4番手で折り合い、追走したラインクラフトは最後の直線に入ると、残り200mを過ぎたころに先頭に。最後に最大のライバルであるシーザリオが猛追してきたが、セーフティーリードを取っていたラインクラフトはこれをアタマ差凌いで勝利。
ラインクラフトが持つ素軽いスピードをフルに生かしてシーザリオを力でねじ伏せる完璧な騎乗を見せた。
■2013年菊花賞(騎乗馬:エピファネイア)

2013年の菊花賞 エピファネイアが優勝 写真:山根英一/アフロ
牝馬での活躍は目立ったものの、牡馬クラシックとは長らく無縁の存在だった福永祐一。
この年はかつてのパートナー、シーザリオの息子であるエピファネイアとタッグを組んだものの、春は皐月賞、ダービーともに2着に惜敗。エピファネイアの気性の荒さを克服できずに苦心していた。
しかし、クラシック最後の1冠となったこのレースでは春二冠とは異なる先行策を選択。
無理に抑えて気性の悪さを露呈するより、気分よく走らせることを優先させると、スタート当初口を割っていたエピファネイアは中盤から落ち着きを取り戻して直線では早めに先頭に立って、不良馬場をものともしないパワフルな走りで2着馬に5馬身差をつける独走で圧勝した。
鞭をほとんど使わずに他馬を置き去りにする圧勝劇で牡馬クラシック初制覇を飾った福永はその後、牡馬とのコンビでもGIを量産。気性の悪い馬も難なく乗りこなすところを見せつけた。
■2018年ダービー(騎乗馬:ワグネリアン)

2018年の日本ダービーをワグネリアンが優勝 福永祐一悲願のダービー制覇 写真:つのだよしお/アフロ
「福永家の悲願」と常々語っていたように、ダービーには人一倍思い入れが強かった福永祐一だが、この年までに18度挑戦するも未勝利となかなか勝ちに恵まれなかった。
この年にタッグを組んだワグネリアンも皐月賞で7着に惨敗し、さらに引いた枠番はダービーでは不利とされる8枠17番という外枠。枠順が決まった瞬間、さすがの福永も「終わった」と思ったという。
しかしレース本番、福永はこれまで中団からレースをしていたワグネリアンを先行させるという作戦を敢行。迎えた直線ではあらかじめ外に出したことで前はふさがれず、反対にワグネリアンよりも内側にいた人気馬の進路をふさぐ形で追い出しを開始。
するとワグネリアンは持ち味である切れる末脚を存分に発揮し、皐月賞馬エポカドーロを半馬身振り切って勝利。福永は19回目の挑戦にして念願のダービージョッキーの栄冠に輝いた。
■2020年皐月賞(騎乗馬:コントレイル)

2020年皐月賞 コントレイルが優勝 写真:東京スポーツ/アフロ
福永祐一の騎乗馬の中でも「最強のパートナー」とも名高いコントレイルだが、福永の腕が際立ったレースと言えば、クラシック1冠目の皐月賞が挙げられる。
コントレイルも含め無敗馬が4頭もいるというハイレベルな一戦の中で1番人気に支持されたコントレイルは最内枠からスタートしたものの、外から来る馬たちによって押し込められる形になり、図らずして後方に位置することに。
ここまで先行抜け出しで勝ってきた馬だけに、早めに位置を取りに行くかと思われたが福永は焦ることなく後方で脚を溜めると3コーナー過ぎから一気に仕掛け、直線ではコントレイルを大外に持ち出してスパートを開始。
するとコントレイルは鋭い末脚を見せて先に抜け出したサリオスに並んで、叩き合いの末に半馬身交わしてゴール。4戦4勝で皐月賞を制した。
この勝利で福永はクラシック完全制覇、77年にこのレースを制した父・洋一との親子制覇をそれぞれ達成。内ラチ沿いを芸術的に抜けてきた父とは真逆の戦法で突き抜けるという名手の腕が光った一戦となった。
■文/福嶌弘