テイエムオペラオー「古馬の中長距離GIを完全制覇した世紀末覇王」【もうひとつの最強馬伝説】

第123回 天皇賞・春 和田竜二騎手騎乗のテイエムオペラオーが連覇(c)SANKEI
レースも普段も省エネがモットーの絶対王者
1999年に皐月賞を制覇するなど牡馬クラシック戦線を沸かしたテイエムオペラオーは、翌2000年にとてつもない偉業を打ち立てる。
1年を通して無敗の8連勝を達成。しかもその中には天皇賞・春、宝塚記念、天皇賞・秋、ジャパンC、有馬記念という古馬の芝中長距離路線のGIがすべて含まれていた。
今回はそんな世紀末に現れた完全無欠の王者・テイエムオペラオーについて、その全26戦で手綱をとった主戦・和田竜二騎手に聞いた現役時代のお話を、選りすぐりの名馬36頭の素顔と強さの根源に迫った『もうひとつの最強馬伝説〜関係者だけが知る名馬の素顔』(マイクロマガジン社)から一部抜粋してお届け。
以前、和田竜二に「テイエムオペラオーとの一番の思い出は?」と、何ともベタな質問をしたことがあるのだが、てっきり数多ある名勝負からとっておきの逸話が語られるのかと思いきや、「コンクリの上に落とされたこと(笑)」という答えが返ってきて、意外に思ったことがある。
というのも、筆者の中にあるオペラオーのイメージは、〝そういうこと〟をしない馬。何事にも動じず、もちろん折り合いを欠くなんていうこともなく、常に気高さをまとった絶対王者として刻まれていたからだ。
「人間で言うとインテリタイプというか、クレバーな馬だったと思いますよ。賢いし、むちゃくちゃ手を焼かせるわけでもないし。これが一番の思い出なのも、むちゃくちゃ痛かったこともあるけど、僕が落とされたのはそれが最初で最後だったから」
一体どういうシチュエーションだったのだろうか。今回、改めて聞いてみた。
「調教が終わって、厩務員の原口さんと乗り替わろうというときに、いきなりバーン! と尋常じゃない立ち上がり方をしたんです。それこそ、後ろにひっくり返るんじゃないかと思うくらい真っ直ぐに立ち上がった。僕はそのままコンクリートの上に滑り落ちたような感じで、まぁ痛い痛い(苦笑)。せめて馬場の中でやってくれよと思いましたね。休み明けとか、うるさいときはそれなりにうるさかったけど、そこまでになったのは、後にも先にもあのときだけです」
ちなみに、原口厩務員は何度か坂路で落とされていたというが、和田いわく「カラ馬になっても、ケガをするでもなく、そのまま絶対に馬房に帰っていった」というから、やはりクレバーである。
「オペラオーは基本的に〝省エネ〟なんですよ。僕が見た限り、馬房の中ではいつも奥の方でピタッと止まっていた。とにかく動かない馬で、いつ見ても頭を左に向けてジーっと立ってましたね。もしかしてあれ、寝てたのかな(笑)」
〝強い馬ほど普段は無駄な動きをしない説〟は何度も耳にしてきたが、オペラオーもまた、普段は徹底した省エネを実践していたというから、もはや競走馬界の定説といっていい。
「レースでは、早く抜け出すと遊んでしまうところがあったから、僕としてはタイミングを計るのが難しかったんですけど、それも省エネというか、賢かったんだと思いますよ。前にいる馬は絶対に捕まえにいくけど、捕まえた後は無駄な力を使わないというかね」
しかし、オペラオーの省エネは、時に厩務員を悩ませた。和田が「原口さんは大変だったと思いますよ」と振り返るのが、オペラオーの日々の食事である。
「男馬にしては、カイ食いが細かったんですよね。いつもとは違うものが少し混ざっているだけで口をつけないようなところもあって、よく原口さんと岩元(市三)先生が話し合っていました。カイバ桶も、与えるまでずっと蓋をしておいて、時間になったらパッと蓋を外したりしていました。それで食べてくれたらいいけど、けっこう残すこともあったみたいです。
シュッとしている栗毛のとてもキレイな馬でしたが、あの身体が維持できたのは、きっちり食べさせて、きっちりトレーニングを積んでこそですからね。身体を作ることだけじゃなく、体調にあまり変動がなかったのも、原口さんの苦労の賜物だと思いますよ」

(c)SANKEI
■テイエムオペラオー プロフィール
生年月日:1996年3月13日生まれ
性別:牡馬
毛色:栗毛
父:オペラハウス
母:ワンスウェド(母父:ブラッシンググルーム)
調教師:岩元市三
馬主:竹園正継
生産牧場:杵臼牧場(浦河)
戦績:26戦14勝
主な勝ち鞍:皐月賞、天皇賞・春(2回)、天皇賞・秋、有馬記念、宝塚記念、ジャパンC

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