『丸山城志郎vs阿部一二三』柔道史上に残るライバルストーリー 五輪代表争い決着の時

柔道

2020.12.12

    柔道史上初!ワンマッチでの五輪代表決定戦 丸山城志郎vs阿部一二三!世紀の一騎打ちを完全生中継!

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    2019年グランドスラム大阪 男子66kg級 決勝 丸山城志郎vs阿部一二三 写真:松尾/アフロスポーツ

     12月13日、巷で"令和の巌流島対決"と話題の一騎討ちがついに行なわれる。東京五輪66kg級代表を決める丸山城志郎(ミキハウス)VS阿部一二三(パーク24)だ。

     舞台は柔道の聖地・講道館の大道場。新型コロナウイルス対策として、無観客で開催される。もともと柔道は東京五輪に向け十分な調整期間が必要という理由で、代表を早々と決める制度を設けていた。

    案の定、昨年11月にはその一番手として、女子78kg超級の素根輝が代表に選出されている。その後他の階級も続々と代表が選出されたが、男子66kg級だけは例外だった。それだけ丸山と阿部の実力が拮抗していたのだ。

     しかも66kg級の最終選考はやりたくてもできない日々が続いていた。当初は今年4月の全日本選抜体重別選手権で選考される予定だったが、コロナの猛威によって大会は延期に。代表選考も宙に浮いた形となってしまったが、そうこうしているうちに今度は東京五輪の開催も1年後になってしまった。

     それから一度は12月に開催が予定されていたグランドスラム東京を選考大会とすると発表されたが、海外からの選手招聘が困難という理由でこの大会も開催中止になってしまう。そこで今回柔道では異例ともいえるワンマッチで雌雄を決することになった。

     山下泰裕と斉藤仁、井上康生と鈴木桂治。柔道の歴史を繙いてみると、過去にもライバルストーリーは枚挙にいとまがない。女子方に目を向けても、阿部の実妹で女子52kg級代表に内定している阿部詩(日本体育大)には1勝3敗と負け越している角田夏実(了徳寺大職)という好敵手がいる。

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    丸山城志郎・阿部一二三 写真:西村尚己/アフロスポーツ


     丸山と阿部はすでに世界の舞台で凌ぎを削っている。

    丸山が昨年の世界選手権優勝者ならば、阿部は17年と18年のチャンピオン。ともに世界の頂きを極めた実力者だけに直接対決でもデットヒートを繰り広げ、丸山が4勝3敗はわずかながら勝ち越しているに過ぎない。かつてこれほどスケールの大きなライバルストーリーはなかったのではないか。

    「世界選手権など他の国際大会のように、どちらとも代表になれないのか」という声も聞くが、東京五輪の出場資格として「2020年5月25日付けの世界ランキングにおいて、男女とも18位以内に位置している選手が直接選出される」「上位18位以内に1国から2名以上の選手が入っている場合、そのうちの誰を代表に選出するかはその国の連盟が決定する」というルールが存在しているのだから仕方あるまい。

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    2019年世界柔道 準決勝 丸山城志郎vs阿部一二三 写真:AFP/アフロ

     直近の対決は昨年11月22日グランドスラム大阪の決勝で実現。このときは支えつり込み足で阿部が勝利を収めている。一方の丸山はこの一戦に勝てば東京オリンピック代表の座に内定していただけに、それまで丸山に3連敗を喫していた阿部は土俵際でライバルのオリンピック出場内定を防いだ格好だった。

     記者の目には、そのひとつ前──昨年8月26日の世界選手権準決勝で実現した通算6度目の直接対決も印象に残っている。試合の途中で丸山は右ヒザを負傷し、明らかに足をかばう動きを見せていた。それでも阿部は手負いのライバルを攻めきれず、結局尻上がりに復調してきた相手に反撃を許し敗北を喫してしまった。非情になりきれるか否かがライバル対決の行方を握っているのか。

     お互い手の内は知り尽くしているだけに、決戦当日のコンディションや気持ちの持ち方が重要になってくる。しかしながら両者ともオリンピック以外の大舞台には慣れているだけに、必要以上のプレッシャーを受けるとは考えにくい。

     勝負のポイントはワンマッチという"一発勝負"にあるのではないか。というのも、柔道の試合はトーナメントが基本。トーナメントでは試合を重ねることで徐々に集中力を高め、準決勝や決勝で実力が拮抗した者同士がぶつかり合う。だから初戦でトーナメントのクライマックスがやってくることなどないに等しい。

    対照的にワンマッチではスロースターターなど許されるはずもない。いったい丸山と阿部はどんな覚悟を胸に決戦の舞台に立つのか。過去のデータから両者の対決は延長戦での決着率が86%という高い数字が出ているが、両者のスタートダッシュに注目だ。


    文=スポーツライター・布施鋼治