川崎が初優勝で2冠を達成!引退の中村憲剛 出番なしも優勝に笑顔

サッカー

2021.1.2

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    第100回 天皇杯 川崎フロンターレが初優勝 中村憲剛 写真:YUTAKA/アフロスポーツ

     川崎フロンターレが天皇杯に優勝してJリーグ制覇と併せて2冠を達成した。1月1日に東京の国立競技場での決勝でガンバ大阪にMF三笘薫選手の後半の得点で1-0で勝った戦いには、今シーズンのチームの成長あとが映し出されていた。

     延長で鹿島アントラーズに破れた2016年大会以来の決勝の舞台。今季の台頭を印象付けた若手を中心に攻撃とガンバが終盤に見せた反撃に耐え抜いた守備は、川崎の今季の成功を後押しした要素だ。

    立ち上がりこそ、ガンバが攻め込む場面を作ったものの、その後は川崎がボールを保持して攻める展開。ガンバは通常と異なる3バックを採用して、守備で両ウィングが下がって5バックになる陣形で、人数をかけて守備を固めた。

    網を張った守備に相手が焦れてミスをすれば、そこを突いてカウンターで攻撃に転じて得点しようという思惑が見える。

     ガンバの宮本恒靖監督は、「守備を意識した中でボール奪って速く攻めることと、自分たちがボールを持つ時間を作りながら攻めること」を考えてゲームプランを立て、勝負どころで仕掛けることを考えていたことを試合後に明かした。

     だが、相手は川崎。今季リーグ戦ではリーグ史上最多を記録した総得点88という得点力に目が行くが、守備も34試合で31失点と、リーグ最少2位と安定している。

    誰かがボールを失っても味方がカバーしてボールを確保する姿勢は徹底されていた。それはこの試合でも変わらず、ガンバはボールを奪ってもすぐに絡めとられ、攻めへ転じる間もなく、川崎がボールを保持して試合を進める展開が続いた。

    しかも、川崎がパスワークで相手ゴールに迫る攻撃はこの試合でも健在。シュート数はガンバの7本に対して27本。この日はコンビネーションが噛み合わないところや、フィニッシュの精度を欠くところがあり、前半から三笘選手や田中碧選手、大島僚太選手らを中心に決定機を作ったがゴールを割れずにいた。

     だが、ハーフタイムを挟んで仕切り直すとペースアップ。後半開始から再び試合を支配して攻め続け、相手ゴールに襲い掛かる。その攻撃をガンバGK東口順昭選手は、「めちゃめちゃ怖かった」と振り返った。そして、55分に均衡が破れた。

     中盤で相手のパスを奪った大島選手がFWレアンドロ・ダミアン選手へ預けると、ブラジル人FWは三笘選手へパスを送る。これを受けたルーキーMFは、相手DFを引き連れながらペナルティボックスに持ち込み、前に詰めたGK東口選手の動きを見て冷静に右足で流し込んだ。

     三笘選手は、準決勝のブラウブリッツ秋田戦に続いての連続得点で、Jリーグの新人最多得点タイ記録を立てた今季の好調をそのまま維持。積極的に仕掛けてゴールを狙う動きがゴールに結びついた。


    ガンバの反撃を耐えて「チームが強くなっている」

     だが、5年ぶり6度目の天皇杯獲得を目指すガンバも、予定していた後半15分過ぎのベンチワークを前に川崎に得点を許したものの、後半半ばの給水タイムを境に反撃に出た。

     相次ぐ選手交代で陣形を4バックに変えて前線を2トップにしてFW宇佐美貴史選手を左MFへ動かすと、左サイドバックに入ったMF福田湧也選手が攻め上がり、左サイドの崩しから右MFに入ったFW塚元大選手、前線のパトリック選手、FW渡邉千真選手がゴール前に顔を出して川崎ゴールを脅かした。

     川崎は押し込まれて苦しい時間が続く。後半38分には、パトリック選手にGKが引き付けられて空いたゴールをFW渡邉千真選手に狙われたが、DFがカバーに入ってクリア。

    その2分後、福田選手のシュートのリバウンドに反応した宇佐美選手が右足を振ったが、GKキム・ジンヒョン選手がセーブ。川崎は最後まで1点を守り切って勝利した。

     ガンバのMF倉田秋選手は、「最後は良かったが、全体的にみると僕らの攻撃は相手の脅威になっていない」と指摘し、「僕らにクオリティはある。それをどう出すかだと思う」と課題を口にした。

     川崎の鬼木達監督は、「最後に点を決められず、自分たちで難しくしてしまったところがある」と評したが、終盤の相手の猛攻をしのいだ点について、「失点してもおかしくなかった。4年前なら我慢しきれなかったかもしれない」と指摘。「体を張る、意識を合わせるところは成長してくれた」と話した。

     「決勝で1-0なら、そういう展開もあり得ると思っていた」という谷口選手は、「ああいう展開でも何が何でも守って逃げきれるのは、チームが強くなっていると感じる」と胸を張った。

    準決勝に続いて安定したプレーで試合を組み立てた大島選手は、「勝ちが全て」という大一番でしっかり勝ったことが成長だと話し、「このチームで最後の試合。(中村)憲剛さんの引退やチームを離れる人もいて、なんとしても勝ちたいと思っていた」と、安堵の表情を見せていた。


    引退の中村選手、出番なしも優勝に笑顔

     川崎は勝利で優勝は飾ったものの、チャンスに追加点を獲れずに終盤に押し込まれたことで、今季限りで引退のMF中村憲剛選手の出番は回ってこなかった。

     決勝ゴールを決めた三笘選手は、「タイトルを獲れて、それに貢献できてうれしい」と話したが、すぐに「もっと楽にできた。前半のチャンスに決めていたら、憲剛さんも試合に出られていたかもしれない。反省材料は多い」と話した。

     鬼木監督は、終盤ガンバに押し込まれたことで延長も想定。その場合に「スタジアムの雰囲気を変えられる選手」として、中村選手投入を考えていたことを明かした。

     だがそうはならず、いつもは選手を起用できずに謝ることはないという指揮官だが、この日は中村選手の現役最後の試合ということで、試合後に「使えなくて申し訳なかった」と声をかけ、延長を想定していたことを伝えたという。

     鬼木監督は、「今日の試合には出られなかったが、彼がここまでやってきてくれたことで数多くのタイトルを獲ることができた。彼の功績をたたえてほしい。憲剛あっての川崎フロンターレ。心からお疲れさまと言いたい」と語り、背番号14に称賛と労いの言葉を送った。

     「2冠を獲れてほっとした」という中村選手は、出番がなく終わったことについて「俺でもそうする。これはこれでよかった」と指揮官の采配に理解を示した。

    40歳の元日本代表MFは、試合ではピッチ脇でウォームアップを続けて、最後まで戦う準備を続けていた。

    「フロンターレが勝つために、どうやったら力になれるか。最後の最後までチームのために頭をフル回転させて考えていた」と言い、その姿勢を最後まで貫けたことに胸を張った。

    中村選手は試合後、チームメートに「みんな成長したし、今日も強いフロンターレを見せてくれた。僕は安心して先に行けるから、来年以降もタイトルを獲ってほしい」と伝えたことを明かし、「こんな幸せなラストを迎えられて本当にうれしい。僕は世界一、幸せなサッカー選手だと思う」と語った。

    「全てを教えてもらった」と中村選手に感謝する大島選手は、「今後負ければ『やっぱり憲剛さんかな...』と言われる。そこは自分が引っ張っていく覚悟を持って戦っていきたい」と言葉に力を込め、「圧倒し続けて、どう試合を終わらせるかが課題」と新たなシーズンへ気持ちを引き締めていた。

    天皇杯優勝と2冠達成。川崎は成長を確認して選手を送り出し、2020シーズンを終えた。


    取材・文:木ノ原句望