稲見萌寧 自分本位は彼女の強さ、歩み続ける21歳に密着
2021.6.25
稲見萌寧 PHOTO:Getty Images
そこに秘められたドラマをあなたはまだ知らない
日本の女子プロゴルフは今、間違いなく彼女を中心に回っている。稲見萌寧、21歳。
宮里藍サントリーレディスオープンゴルフトーナメントもそうだった。最終日、2位と4打差の首位でスタート。逆転を許したが最終ホールで追いつくチャンスを得る。
ギャラリーの視線を釘付けにした勝負のパットはわずかに入らなかったが、グリーンに落とした涙には人並みはずれた負けん気が滲んだ。
朝から1800キロカロリーの食事で体型維持
その翌日、密着取材のカメラを拒まなかった彼女。千葉の自宅を朝8時に出てある場所に向かった。
サラリーマンの味方、ゆで太郎。ナス肉丼とお椀そばで、朝から推定1800キロカロリー。成人女性のほぼ一日分をお腹に入れた。
着いた先は今年通い始めたトレーニングジム。実は体重が減り過ぎてしまうのが悩みで、多くの選手がオフにあてる月曜日にも休まず体を鍛える。
<動画>【独占インタビュー】 女子ゴルフ・稲見萌寧 肉体改造で5キロ増!公開自主トレ
それもあって先ほど摂取したカロリーはエネルギーとして消費されていく。目の前の試合だけを考えたら月曜日は休んだほうがいい。そうしないのは、もっと遠い未来を見据えているからだ。
プロ3年目の21歳。今はまだ地面の下に広く根を張る時期。
その先にきっと大きな花が咲くと信じている。
快進撃の始まり
快進撃の始まりは3月半ばのヨコハマタイヤゴルフトーナメント。思えば稲見が「らしさ」を存分に発揮した試合だった。武器の正確なショットが冴え渡りバーディラッシュで独走状態。
それでも最終日に追いつかれ決着はプレーオフへ。勢いに乗る相手が有利と普通なら考えるのだが、「プレーオフは大好き」と語る稲見は強気姿勢でプレーオフを制した。
東京オリンピックの1年延期は彼女とって幸運だった。
去年までプロ2年で通算2勝だった選手が今年は優勝ラッシュ。今月末の世界ランクで上位2名が出場できる東京オリンピック。全米女子オープンを制した笹生優花がフィリピン代表として出るため、稲見はこのまま行けば二人目の日本代表になる。
ゴルフを始めたのは小学4年生。すぐに夢中になり、たったひと月でプロになると決めたものの飛び抜けた成績で目立っていたわけではなく19歳で受けたプロテストはぎりぎりの合格。
苦しい時期もあった。やめようかと思ったこともあるが、やめる前に一度だけ死ぬ気でがんばろうと前を向いた。
稲見のやり方
この日は朝からスポンサー対応。
成績に応じて声がかかるのがプロの世界。今年に入ってスポンサーも増えた。
午後はコーチとマンツーマン。今シーズン絶好調の稲見がカメラの前で苛立ちを見せた。距離感はいつも通り。スイングの軌道にも問題はない。
だが、なぜか「いつも気持ち悪い」
言語化も数値化もできない稲見にしか分からない感覚の領域。コーチと険悪な雰囲気になったまま練習は終わった。
付き合う方も骨が折れるがこれが稲見のやり方。
幼馴染みのキャディ
ハードな一日を終えやっと夕食。夕食に同行すると、そこには仲睦まじく同席する男性の姿が。彼の名はジョン・ジウ。
稲見が中学1年生の時からの幼馴染みでひとつ年下のゴルフ仲間。小学生のときには全国3位に入ったこともあり、一緒にプロゴルファーを目指してきたが、今年から稲見のキャディを務めている。
初めて組んだ試合は今年の2戦目。コンビは当たり稲見は見事に優勝を果たした。気心の知れた二人には他者には想像が及ばない、微妙で絶妙な距離感がある。
言ってしまえばただ寄り添っているだけ。ジョンさんは友達のような空気で稲見と接していた。だがそれこそが稲見の求めるキャディだ。
自分本位は彼女の強さ。幼馴染みはそれをいちばんよく知っている。
目の前の道を一歩ずつ。東京オリンピックへ、そしてその先へ。
稲見は着実な歩みを続けている。