前田大然 ベストイレブン初選出「マリノスはもっと強くなれる」今季の熾烈な上位争いを振り返る|2021Jリーグアウォーズ

サッカー

2021.12.9


横浜F・マリノス 前田大然 Photo by Hiroki Watanabe/Getty Images

2021年のJリーグ・アウォーズが12月6日に行われ、川崎フロンターレの優勝に貢献したFWレアンドロ・ダミアン選手が最優秀選手賞(MVP)に選ばれてリーグ得点王とダブル受賞。

ベストイレブンには川崎から7人が選出され、J1優秀監督に浦和レッズのリカルド・ロドリゲス監督が選出されるなど、今季のリーグを象徴する内容となった。

今季のベストイレブンには、ダミアン選手のほか川崎からDF谷口彰悟選手、DFジェジエウ選手、DF山根視来選手、MF家長昭博選手、MF脇坂泰斗選手とFW旗手怜央選手が加わった。

同賞には名古屋のGKランゲラック選手とMF稲垣祥選手、マリノスの前田大然選手が初選出。2度目の受賞となった神戸MFアンドレス・イニエスタ選手が名を連ね、優勝争いを繰り広げたチームから受賞者が並んだ。

1位と2位の差

リーグ優勝チームの選手が過半数を占めるのは、川崎から過去最多の9人が選出された昨季と同じく7人が選出された2018年に続いての傾向だが、昨季ほどの圧倒感はなく、2位以下の選手の存在感も表れた。谷口選手は「今年も多くの選手がベストイレブンに選ばれたことを嬉しく思う。Jリーグを引っ張っていく存在ということを意識して体現していくことが大事になる」と話した。

川崎はシーズン途中にMF三笘薫選手(サンジロワーズ)とMF田中碧選手(デュッセルドルフ)という主力2人を海外移籍で失いながら、黒星は38試合中2試合のみ。思うようなプレーを発揮できない試合でも、しぶとさを発揮して28勝8分で勝点92を積み上げた。順位も開幕節こそ3位だったが、第2節で1位に浮上すると、その後は一度もトップの座を譲ることなくシーズンを終えた。


川崎フロンターレ Photo by Koji Watanabe/Getty Images

2位のマリノスはシーズン途中の監督交代という難しい状況を、後任のケビン・マスカット監督の下で克服。前半戦では18位に落ち込んだ時期もあったが、優勝争いに踏みとどまり、24勝7分7敗の勝点79で終了。川崎との勝点差は13だった。

前田選手は「僕らは連敗してフロンターレは連勝した。そこに違いが出た」と指摘。シーズンを通した安定感の発揮は来季への課題だろう。

11月3日、首位を走っていた川崎が浦和に引き分け、マリノスは勝点を取れば優勝争いが継続するところだったがガンバ大阪に敗れて連敗を喫し、川崎の優勝が決まった。

「優勝できずに悔しい」と言った前田選手だが、「チームは攻撃的サッカーを掲げて、総得点は自分たちが1位でシーズンを終えた。これをもっとやれれば、マリノスはもっと強くなれる」と手ごたえも口にした。

マリノスは総得点では81得点の川崎を抜いて最多の82得点をマークし、総合順位9位に終わった昨季の69得点から大幅にアップ。前田選手は、その中の約4分の1を叩き出した。なお、チームは失点数でも昨季の34試合56失点から今季は38試合35失点と固さを加えている。

試合中のスプリント回数で最多64回など他を圧倒する記録を出している前田選手は、「ゴールを奪うことは成長したと思う。チームメイトに感謝したい」と語り、「これを続けないと、この時だけと言われる。ここからがスタート」と続けた。

今夏の東京オリンピックでの活躍後、11月にはフル代表へ約2年ぶりに招集され、来年1月のウズベキスタンとの親善試合のメンバーにも選ばれた。周囲の評価が上がり、海外移籍の可能性も取り沙汰されており、去就が注目されている。

3位争いは終盤に明暗

AFCチャンピオンズリーグ(ACL)の出場権獲得圏内となる3位をかけたバトルも激しかった。

最終的に3位に入ったヴィッセル神戸は、後半の追い上げで21勝10分7敗の勝点73とし、4強入りした2020年大会以来となるACLへの足掛かりをつかんだ。

シーズン序盤はMFアンドレス・イニエスタ選手、半ばからはMF山口蛍選手など主力の負傷欠場が相次ぎ、6〜7月にはベルギー代表DFトーマス・フェルマーレン選手が欧州選手権で抜け、21試合15得点を挙げていたFW古橋亨梧選手がセルティック移籍でチームを離れるなど選手の出入りは多かった。


ヴィッセル神戸 アンドレス・イニエスタ Photo by Etsuo Hara/Getty Images

だが、三浦淳宏監督がメンバーやシステムをやりくりしながら奮闘。常に8位から3位以内を推移して大崩れをしなかった。

夏の移籍で日本代表のFW大迫勇也選手とFW武藤嘉紀選手、さらにFCバルセロナでイニエスタ選手の元同僚でスペイン代表経験のあるFWボージャン・クルキッチ選手を獲得するとパワーアップ。復帰したイニエスタ選手らとの連携アップにつれて、観客を魅了する場面も増えた。

武藤選手と大迫選手の加入後の15試合では10勝2分3敗だったが、川崎、名古屋、マリノスの上位陣との対戦では1分2敗で勝点を積み上げることができなかった。

一方、名古屋グランパスは今季ルヴァンカップで初優勝。リーグ戦もシーズン半ばまでは2位につけていたが、ACLのグループステージから帰国後の7月17日からの3試合で3連敗を喫して2位から6位にダウン。約1か月間、タイの猛暑と行動制限のあるバブル形成の中で戦ったACLでの疲労の影響は否定できないだろう。

夏の移籍でポーランド代表FWシュビルツォク選手が加入。リーグ戦14試合で7得点をマークし、ACLでも決勝トーナメント1回戦の韓国との大邱戦でハットトリックを決めるなど存在感を示した。

だが、チームは総失点では川崎の28に次ぐリーグ2位最小の30と固さを見せた一方で、総得点では44とトップ2の川崎とマリノスの約半分に留まった。10月3日の広島での敗戦からの終盤7試合は2勝3分2敗で、ゴールが遠く、勝点を積めずに失速。勝点66の5位で終わった。

入れ替わりに4位に浮上したのが鹿島アントラーズだった。シーズン序盤は18位に沈む時期もあったが、シーズン途中で着任したクラブOBの相馬直樹監督の下で建て直した。10月2日のホームの横浜FC戦での黒星を最後に、残る6試合を5勝1分無敗で一気に追い上げて、勝点69で名古屋を追い抜いた。最後の数試合で明暗が分かれた。

今季のベストヤングプレーヤー賞を受賞した19歳のFW荒木遼太郎選手は36試合で10得点を挙げ、リーグ得点ランク4位のFW上田綺世選手の29試合14得点に次いでチーム2位の得点力で勝利に貢献した。

この結果、来季のACLには川崎とマリノスが天皇杯優勝チームとともに本戦から出場し、神戸がプレーオフから参戦することが決まった。4位の鹿島は、天皇杯準決勝に駒を進めている川崎が優勝した場合に限り、繰り上げでプレーオフからの参戦可能となり、その場合は神戸が本戦出場権を得る。

なお、天皇杯は12月12日に準決勝が行われ、川崎はホームで大分トリニータと対戦。勝者が浦和レッズとセレッソ大阪の勝者と12月19日の決勝で対戦する。


取材・文:木ノ原句望