【チャンピオンズC】ダート王への見えない壁を砕いた稲妻 ジュンライトボルト&石川裕紀人騎手がGI初V!

写真:東京スポーツ/アフロ
第23回チャンピオンズC 回顧
「今年はテーオーケインズで決まりだよ」――チャンピオンズCのレース前、ほとんどの競馬ファンはそう思ったことだろう。
昨年のこのレースで2着馬に6馬身差をつけてダート界の頂点に立つと、今年は前年に4着に終わったJBCクラシックを制覇。
3つ目のGⅠタイトルを手にした絶対王者に付けられた単勝オッズはこのレース史上でも2番目の低さとなる1.5倍。続く2番人気に推されたグロリアムンディの単勝オッズが7.7倍だったことを考えると、圧倒的な支持を得ていたことがよくわかる。
そんな自身の人気ぶりをテーオーケインズ自身もよくわかっていたのかもしれない。堂々と周回したパドック、そして勇ましいほどのステップを踏んでいった返し馬からは不安に感じる要素がひとつもない。史上2頭目の連覇はまず間違いないと思われた。
テーオーケインズの振る舞いを見た後、他の馬たちに目を向けてみると...... パドックでイレ込んでいる馬こそいなかったが、どこか頼りなげに歩いている馬が多かったように思えたが、それは無理のないことだったことだろう。
というのも、テーオーケインズを除いてGⅠを制していたのは夏にジャパンダートダービーを勝ったノットゥルノのみで、そもそも今回がGⅠ初出走だった馬はエントリーしていた16頭中5頭もいた。
GⅠ出走経験がある馬たちもほとんどが前走で馬券圏内に絡めない大敗を喫した直後ということもあり、テーオーケインズを負かしてダートの王になるのにはとてつもなく大きな壁がそびえ立っていたように思えた。
そうした見えない壁がどんどんと高く、大きくそびえ立っていったことでテーオーケインズが絶対ムードのままレースを迎えることになったが......たった1頭だけ、そうしたレース前の空気を感じていないように振舞っていた馬がいた。
その馬とは......ジュンライトボルトである。
父はキングカメハメハ、そして母系を辿ればエアグルーヴらがいるという超良血を持つ彼はその血統から芝での活躍を期待され、2歳時には朝日杯FSに挑むなど昨年までは芝のマイル戦線を主戦場としている準オープン馬に過ぎなかった。
ジュンライトボルトに転機が訪れたのは今年の夏。22戦目にして初めてダートのレース(ジュライS)に出ることになった。
ここでは2着に敗れたが、オープンに昇級して以来、馬券に絡んでいなかった彼からしたら大健闘の部類で、以降の矛先をダートに向けた。
そして夏の終わりに新潟競馬場で行われたBNS賞でジュンライトボルトはダート初勝利を挙げると、その勢いのままシリウスSを制してダート重賞初挑戦にして初制覇を記録。テーオーケインズからは離されたが、底知れぬ魅力があるとしてここでも3番人気(7.9倍)の支持を集めた。
朝日杯FS以来、3年ぶりとなるGⅠの舞台でのジュンライトボルトの様子はというと、どこか余裕を漂わせながら周回していたテーオーケインズ、そのテーオーケインズを見て萎縮しているほかの馬たちと比べ堂々たる周回を披露。
軽快に駆け抜けていった返し馬の雰囲気はとてもダートGⅠ初挑戦の馬とは思えないほどだった。
迎えたレースはゲートが開いた瞬間にテーオーケインズが立ち上がり、少し遅れるというアクシデント。しかし、すぐにダッシュが付き、いつものように中団やや前目の位置に付けていった。
大外からレッドソルダードが逃げるも、前半の3ハロンの時計はここ3年で最も遅い37秒0。前に付けた馬たちに有利な流れとなった中でもテーオーケインズは動かず、さらにその後ろにジュンライトボルトが付けるという展開になった。
そして迎えた直線。ここまでペースを握ってきたレッドソルダードが失速すると、先頭に立ったのは2番手に付けていた3歳馬クラウンプライド。
前走のJBCクラシックでは逃げてテーオーケインズに最後差されての2着になった彼はここでも前で踏ん張ることで抵抗しようとした。そして早めに動いていった同じ3歳馬のハピがそのあとを追いかけた。
ここでテーオーケインズの鞍上、松山弘平は鞭を入れて追い出しをかけた。
緩やかな流れを見ていつもよりも少し早めに動き、力で捻じ伏せる形で連覇を果たすかと思われたが......そこからテーオーケインズは伸びを欠き、先頭のクラウンプライドどころか内で粘るハピすら捕まえられない。気が付けば隣にいたシャマルを抑え込むのが精いっぱいなほどにもがいた。
クラウンプライドがJBCクラシックのリベンジを果たすかと思われた直後、外から飛び込んできたのがジュンライトボルトだった。
伸びあぐむテーオーケインズを尻目に末脚を伸ばしていくと、ゴールまで100mを切ったところでクラウンプライドを捕まえてゴール。今年の6月までダートを走ったことすらなかった5歳馬が3連勝でGⅠタイトルを掴んでみせた。
まるでつい先日行われた、カタールW杯の日本対スペイン戦のようなジャイアントキリングっぷりにしびれたのか、自身もGⅠ初制覇となったジュンライトボルト鞍上の石川裕紀人はインタビューで「ブラボー!」と長友佑都ばりの雄叫びを挙げ、新ダート王の誕生を心から祝福した。
思えばテーオーケインズよりも後ろからレースを進めて差したのはこの馬だけ。他の馬たちが感じていたテーオーケインズとの間に広がる高く大きな壁はもしかしたらジュンライトボルトには見えていなかったのかもしれない。
いや、そもそも壁なんてなかったのだ。今回のジュンライトボルトの勝利はレース後にそう思わせてくれるほど、鮮やかなものだった。
■文/福嶌弘

第23回チャンピオンズカップ(GI)着順
12月4日(日)6回中京2日 発走時刻:15時30分
着順 馬名(性齢 騎手)人気
1着 ジュンライトボルト(牡5 石川裕紀人)3
2着 クラウンプライド(牡3 福永祐一)4
3着 ハピ(牡3 横山典弘)6
4着 テーオーケインズ(牡5 松山弘平)1
5着 シャマル(牡4 川田将雅)7
6着 サンライズホープ(牡5 幸英明)11
7着 スマッシングハーツ(牡6 鮫島克駿)10
8着 ノットゥルノ(牡3 武豊)5
9着 オーヴェルニュ(牡6 C.ルメール)9
10着 タガノビューティー(牡5 石橋脩)12
11着 レッドガラン(牡7 斎藤新)13
12着 グロリアムンディ(牡4 R.ムーア)2
13着 サクラアリュール(牡7 酒井学)16
14着 バーデンヴァイラー(牡4 D.レーン)8
15着 サンライズノヴァ(牡8 松若風馬)14
16着 レッドソルダード(せん4 丸山元気)15
※結果・成績・オッズ等は主催者発表のものと照合してください。