【香港国際競走】地元香港勢の飛躍 過去最強布陣の日本馬たちは苦戦

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2022.12.12


Photo by Yu Chun Christoper Wong/Eurasia Sport Images/Getty Images

2022年香港国際競走回顧録

「今年の香港馬は一味違うなぁ......」香港国際競走のメインである香港カップで地元馬ロマンチックウォリアーが突き抜けて勝利姿を見て、思わずそうつぶやいた競馬ファンも少なくないことだろう。

4レース合わせて、今年は13頭が出走したチームジャパン。

毎年のように活躍し、地元香港勢以上の存在感を発揮してきた上、今年は13頭中GⅠ馬が9頭も名を連ねるという超豪華メンバー。

現在の日本競馬のトップホースを集めたと言っても過言ではない布陣だっただけに、史上初の4レース完全制覇も期待されたが......結果は香港ヴァーズの1勝のみ。

馬券に絡んだのも香港ヴァーズに出走した2頭と香港カップで2着に入ったダノンザキッドのみに終わってしまった。

 そんな日本馬たちが苦戦した今年の香港国際競走だったが、この日最初のGⅠだった香港ヴァーズでは日本馬2頭が意地を見せてくれた。

 戦前からここが引退レースとしていた目下2連覇中の王者、グローリーヴェイズが史上初の3連覇を達成するかが最大の焦点となった香港ヴァーズ。

もともと10頭と今回の4つのGⅠレースの中でも最も出走頭数が少なく、さらにこのレースに強い欧州勢に核になりそうな馬がいないという状況。それだけにグローリーヴェイズの3連覇は限りなく濃厚に思われた。

 ドイツのメンドシーノがゲートから出ないというアクシデントがあったスタートだったが、それ以外は特に出遅れることなく各馬スムーズなスタートを切ると、先頭に立ったのは地元香港のセニョールドーバ。

1000mの通過タイムが1分2秒台と平均よりもややゆっくりとした流れで進む流れをグローリーヴェイズは昨年よりも前目の中団、そしてそのすぐ後ろにウインマリリンがつけるという位置取りで流れていった。

 勝負の分かれ目となったのは第4コーナー。緩い流れに耐えかねなかったのか、残り800mを過ぎた辺りから多くの馬が動いていくのを見ていた日本馬2頭は4コーナーを過ぎたところで満を持して進出を開始。

この時、グローリーヴェイズは距離のロスが少ない内側、対するウインマリリンは大外と全く異なるポジショニングを取った。

 そして直線、逃げるセニョールドーバを捕まえたフランスのボタニクを捕まえに行ったのがグローリーヴェイズ。馬群の内側からうまく馬群を捌き、2連覇の相棒ともなった鞍上ジョアン・モレイラの手綱によってグイグイと伸びていく。

このままいけばグローリーヴェイズの3連覇は確実と誰もがそう思った瞬間、外からウインマリリンが飛んできた。

 グローリーヴェイズとほぼ同じタイミングで追い出しに入った彼女は馬群に揉まれるのを避けるため、手綱を握るダミアン・レーンの判断によって外に回されたが、結果的にこれが大成功。

勢いに乗ったウインマリリンはグローリーヴェイズ以上のキレる脚を見せて前を行くボタニクを捕まえると、追いすがるグローリーヴェイズを振り切ってゴール。念願のGⅠ制覇を異国香港の舞台で果たしてみせた。

 これで香港国際競走GⅠ通算20勝目となった日本馬たち。この勢いのまま挑んだのが香港スプリントだ。

 伝統的に地元香港馬が強いとされているレースとして知られる一戦だが、今年の高松宮記念勝ち馬ナランフレグ、スプリンターズSの覇者ジャンダルムなど、現役トップランクのスプリンターが4頭も出走。

それだけに一矢報いるのではとも思われたが......結果的には香港勢の厚い壁に跳ね返される形になった。

 レースは香港のサイトサクセスとシンガポールのリムズコジオスコがハナを争う展開になるも前半3ハロンの時計が35秒台とややゆったりとしたペースに。

これに業を煮やしたのか、3角に入る前からメイケイエールが外から進出し、4コーナーを回るころには先頭に並びかけた。

 ウインマリリンに続き、メイケイエールも香港で初GⅠ制覇かと思われたが、仕掛けが速すぎたのか直線では思うように伸びることができず、他の馬たちもなかなか脚を伸ばせない中、やってきたのは地元香港の実力馬ウェリントン。

外から一気に逃げるサイトサクセスを交わして先頭に立つと、あとはスカイフィールドらの追撃を振り切ってゴール。落馬事故の影響で7着に終わった昨年のリベンジを果たす形になった。

なお、日本馬は先に動いたメイケイエールの5着が最先着だったように、前残りの展開に泣かされた形になった。

 続く香港マイルはここまで目下2連覇中の香港の大エース・ゴールデンシックスティが圧倒的な人気を背負う舞台。

日本馬は昨年3着だったサリオスが跛行による出走取消というアクシデントもあり、シュネルマイスターとダノンスコーピオンの2頭で絶対王者に挑む形となった。

 だが、日本馬2頭はゲートで後手を踏むという最悪のスタートに。香港の新鋭カリフォルニアスパングルがハナを奪うと、前半3ハロンを36秒台というペースで逃げ、それを見ながらゴールデンシックスティが脚を溜めているという状況に。

3コーナーに入る前にこの流れに嫌気がさしたのかビューティジョイが先頭に立って最後の直線へ。

 ビューティジョイが最後まで踏ん張るのを尻目に、一度先頭を譲った形になったカリフォルニアスパングルが残り300mを過ぎた段階で再び先頭に。

この時、外からゴールデンシックスティが懸命に追いかけ始めていたが、ゆったりとした流れだったことが災いしたかなかなか差を詰めることができず、結局カリフォルニアスパングルがゴールデンシックスティの追撃をクビ差封じて勝利。

3連覇を阻止するとともに世代交代を高らかに宣言してみせた。

 香港馬同士の一騎打ちの中、ダノンスコーピオンとシュネルマイスターは直線に入っても自分たちの持ち味発揮できないまま。結局ダノンスコーピオンが6着、シュネルマイスターは最下位の9着に終わってしまった。

 ここまでの2戦、思うようなレースができなかったチームジャパンだが、最後の香港カップこそ史上最強とも言うべきメンバーが顔を揃えた。

 出走12頭中、欧州からの遠征馬はオーダーオブオーストラリアのみであとはすべて日本馬と香港馬という構成になった今年の香港カップ。

中でも日本馬はドバイターフでGⅠ初制覇を飾ったパンサラッサなど、GⅠ馬4頭を含め5頭が大挙してエントリーした。

一方の香港勢はクイーンエリザベス2世Cを制したロマンチックウォリアー以外はこれといった実績がないというメンバー構成。それだけに戦前の下馬評では「日本馬VSロマンチックウォリアー」という構図だった。

しかし、結果的に日本馬はロマンチックウォリアーに圧倒される形になった。ゲートが開いた瞬間、好スタートを切ったロマンチックウォリアーからパンサラッサがハナを奪いペースを握ろうとしたが、伏兵のカーインスターにマークされてしまいいつものような大逃げはできずじまい。

それを追いかけるようにレイパパレが3番手に付けて、前に付けたいジャックドールは中団で脚を溜めるという意外な作戦に。そしてダノンザキッドとジオグリフはさらに後ろに付ける形になった。

 パンサラッサの逃げは前半1000mで1分ちょうどくらいというこの馬にしては緩い流れの逃げになったが、終始マークされながらの逃げで息が入らなかったのが災いしたのか、直線に入るころにはすでに青息吐息に。

その他の日本馬たちもなかなかエンジンが掛からずに伸びあぐねる中、突き抜けてきたのがロマンチックウォリアーだった。

 先行馬たちを並ぶ間もなく交わすと、ロマンチックウォリアーは後続を引き離す一方。

ダノンザキッドが懸命に追いすがっても時すでに遅く、ロマンチックウォリアーは2着に入ったダノンザキッドに4馬身半という圧倒的な差をつけて香港カップのゴールを駆け抜けた。

 史上最強とも言うべき布陣で臨んだものの、レベルアップが顕著な香港馬たちの洗礼を受ける形になった今年の日本馬たち。このリベンジは来年、果たしてくれることを期待したい。


■文/福嶌弘