【朝日杯FS】2歳王者・ドルチェモア 決め手は、アタマの良さ

その他

2022.12.20

    aflo_206655038.jpg
    写真:山根英一/アフロ

    「なんて、アタマがいい馬なんだろう」――

     ドルチェモアが朝日杯FSのゴールを駆け抜けた瞬間、不意にそんな言葉がこぼれた。

     もともとソツのない馬という印象は持っていた。札幌競馬場でデビューした時も、先行馬が有利だった当時の馬場コンディションを考慮してか、スタートから先頭に立つとそのままペースを握って押し切ったし、重賞初挑戦となったサウジアラビアRCでもスタートから 2番手に付けて流れに乗るという積極的なレース運びを披露。そして直線に入ると上がり3ハロン33秒4という末脚を見せて突き抜けてみせた。

     この日の東京競馬場はひと夏を越しておよそ4ヵ月ぶりの開催で、馬場状態は時計の出やすい絶好のコンディション。ただでさえ先行馬が有利な中でこれだけ切れる脚が使えれば勝つのは容易にさえ思えるほど。それだけにドルチェモアの2歳馬離れしたレース運びが印象に残った。

     名門・下河辺牧場で生まれ、桜花賞馬のアユサンを母に持つ良血馬だけに素質が高いのは間違いないが、それにしても完成しきっている。

     母のアユサンはもちろん、父のルーラーシップの現役時代を振り返ると、爆発的な強さを見せる時がある一方、思わぬポカがあるタイプの馬で、ややもすれば不器用に映る時があったほどだった。

     それなのにその血を引いた息子ドルチェモアは、2歳馬とは思えないような器用なレース運びであっさりと2連勝を飾るのだから、本当に面白いものである。

     さて、そんなドルチェモアが迎えた今年の朝日杯FSだが、戦前は確たる主役がいない混戦模様という下馬評だった。

     この馬を含め、重賞で連対してきた馬が6頭エントリーし、さらに無敗馬は重賞勝ち馬を含め5頭いるという具合に将来性溢れるメンバーが揃った。それだけに人気も割れ、ドルチェモアも有力馬の1頭に名を連ねていたものの、1番人気の座をダノンダッチダウンと最後まで争ったほど。

     最終的にはドルチェモアが1番人気に支持されたが、そのオッズは3.1倍とここ5年で最も高かったように、絶対視された存在ではなかった。

     迎えたパドック。500キロを優に超える雄大な馬体を誇るものの、まだまだ未完成な感じが否めないダノンタッチダウンをはじめ、どこか頼りなげに映る馬が多い中でドルチェモアはただ1頭、気合を前面に出して周回し、レース前の集中力はまさに歴戦の古馬も顔負けなほど。悠然と本馬場に出てくる姿は逞しくさえ映るほどだった。

     そんなドルチェモアだからこそ、こんなレース運びができたのだろう。

     ゲートが開いた直後、出走17頭の中でドルチェモアは最高のスタートを切った。

     並の......否、普通の2歳馬ならそのまま逃げてペースを握ろうとするだろう。ただでさえ、この日の阪神競馬場はインコースを走った先行馬が残りやすい馬場コンディション。その恩恵を生かすのであれば、少しでも前に付けたほうがいいに決まっている。

     ところが、ドルチェモアと鞍上の坂井瑠星はハナにこだわらず、すぐに隣のオールパルフェに先頭を譲った。それどころか、戦前から逃げ宣言を出していたグラニットにも先に行かせる形で3番手に控える形を取った。

     絶好のスタートを切ったにもかかわらず、これだけあっさりと前を譲るのは本当に珍しく、まだレース経験の浅い2歳馬なら口を割って、折り合いを欠くシーンも想像したが......

     ドルチェモアは鞍上の指示に素直に従い、3番手で追走。その姿はまるでこの日が初騎乗となる坂井瑠星の意図を汲んでいるかのようにも思えるほどだった。

     出走馬の大半が逃げて好走した経験のある馬たちばかりというメンバー構成だけに、前半3ハロンの時計は34秒1とこの10年でも3番目に速いペースに。これだけ前が速くなると後ろの馬が有利になりそうなものだが......。

     そうして迎えた最後の直線。この速い流れを作ったオールパルフェがインコースで懸命に粘る中、ドルチェモアは内から外へ進路を取って進出を開始。

    3番手に控えていたとはいえ、この速いペースを前で追走していただけに、後続の馬たちに差される可能性は十分にあったが、そんなことはお構いなしとばかりに坂井瑠星の左鞭に応え、残り200mのところで前を行くオールパルフェを捕まえて先頭に立った。

     残り200m。さすがにこのペースを追走したツケが出てしまったのか、ドルチェモアの脚色が鈍った。そこに外から仕掛けてきたレイベリング、さらに直線で末脚を伸ばしてきたダノンタッチダウンが猛追してきたが、ドルチェモアは坂井瑠星の懸命な鞭に応える形でもうひと伸び。最後は追いすがるダノンタッチダウンをクビ差抑えてゴール。3戦無敗の2歳王者の誕生となった。

     スタートから道中の位置取り、そして直線でのスパートのタイミングと、何から何までソツがない、アタマの良さを感じるレース運びを見せたドルチェモア。

     彼の完成度の高さが最後の最後でモノをいう形になったが、そうしたドルチェモアのアタマの良さを鞍上の坂井瑠星も理解していたように思う。そう感じたのはレース後の勝利騎手インタビューだった。

    「4回続けて追い切りで騎乗して、この馬のことはバッチリわかっていた。レースもイメージ通りに進めたし、速いペースも想定通り。直線でもしっかり反応してくれたので、あとは何とか凌いでくれればと思っていた」

     追い切りで数回乗っていたとはいえ、GⅠの大舞台で初騎乗だったにもかかわらず、馬の能力を引き出した坂井瑠星もすごいが、それ以上に鞍上の意を汲み取って、その通りに動いて結果を出す馬もまた立派。それが歴戦の古馬ではなく、ここまでにたった2戦しかしていない2歳馬だというのだから本当に恐れ入る。

     ソツのなさ、アタマの良さばかりが印象に残る今年の2歳王者、ドルチェモア。来年の春にはいったい、どんなレースを見せてくれるのだろうか。


    ■文/福嶌弘

    第74回 朝日杯フューチュリティステークス(GI)着順
    12月18日(日)6回阪神6日 発走時刻:15時40分

    着順 馬名(性齢 騎手)人気
    1着 ドルチェモア(牡2 坂井瑠星)1
    2着 ダノンタッチダウン(牡2 川田将雅)2
    3着 レイベリング(牡2 横山武史)3
    4着 キョウエイブリッサ(牡2 川須栄彦)16
    5着 バグラダス(牡2 吉田隼人)8
    6着 オールパルフェ(牡2 大野拓弥)4
    7着 オオバンブルマイ(牡2 C.ルメール)5
    8着 ティニア(牡2 福永祐一)7
    9着 コーパスクリスティ(牡2 D.イーガン)6
    10着 グラニット(牡2 松山弘平)9
    11着 ニシノベストワン(牡2 藤岡佑介)15
    12着 ドンデンガエシ(牡2 横山典弘)11
    13着 スズカダブル(牡2 鮫島克駿)12
    14着 ミシェラドラータ(牡2 酒井学)17
    15着 ウメムスビ(牡2 角田大河)14
    16着 フロムダスク(牡2 武豊)13
    17着 エンファサイズ(牡2 藤岡康太)10

    ※結果・成績・オッズ等は主催者発表のものと照合してください。