【ホープフルS】14番人気ドゥラエレーデが優勝!大一番で目を覚ました、中山の申し子
2022.12.29
2022ホープフルステークスをドゥラエレーデが制す 写真:日刊現代/アフロ
朝日杯FSを無敗で制し2歳王者に輝いたドルチェモアの雄姿を見て、ドゥラエレーデはどう思ったのだろう――大波乱の決着となったホープフルSのゴール直後、そんなことを考えてしまった。
この2頭は株式会社スリーエイチレーシングが所有する2歳馬。ノーザンファームや社台ファーム、そして下河辺牧場と日本を代表する大牧場で生まれ育った馬たちを所有し、ここ2年で重賞4勝を挙げるなど新進気鋭の法人馬主として注目を集めている。
そんなエリート軍団に所属することになった2頭だが、デビュー前の期待値はむしろドゥラエレーデの方が高かった。
父はタイトルホルダーやスターズオンアースを輩出した2冠馬ドゥラメンテで母父には三冠馬オルフェーヴルが名を連ねるという血統構成を持ち、国内屈指の大牧場ノーザンファームで生まれ育った。仕上がりの早さではドルチェモアに軍配が上がっても、ドゥラエレーデの未来に大きな期待を寄せる声は多かった。
2歳戦が始まった6月から半年が経過した12月半ば、2頭の評価はくっきりと分かれた。
無傷の3連勝で2歳王者へと駆け上がったドルチェモアとダートの未勝利戦で1勝を挙げただけのドゥラエレーデ......デビュー前の評価や期待値を考えたら、ドゥラエレーデがここまで燻るとは誰もが思わなかったことだろう。
そんな中で迎えた2022年最後のGⅠレース、ホープフルS。ドゥラエレーデはこの年末の大一番に挑むことになった。ここまでの戦績は4戦1勝、前走の東京スポーツ杯2歳Sではスタートから果敢に前に付けていったものの、直線で切れ負けして4着止まり。
このレースを勝ったガストリックや上がり最速を記録したハーツコンチェルトと比べるとどうしても末脚の切れで見劣りしてしまい、やはりダート戦が最適かと思われたためか、ドゥラエレーデに付けられた単勝オッズは90.6倍。18頭中14番人気というものだった。
だが、今年のホープフルSはGⅠ昇格以来、初めてとなるフルゲート18頭で行われることになるなど、戦前から絶対的な本命馬が不在の混戦模様と称されたレース。
最終的に1番人気には2連勝でここを迎えたミッキーカプチーノが支持されたが、5番人気の馬までが単勝10倍を切るというオッズだったように、何が勝ってもおかしくないという雰囲気が漂っていた。
そんな空気を察知したのかスタート直後、伏兵トップナイフが先手を奪った。もともと確たる逃げ馬がいないメンバー構成でどの馬がペースを握るか予想もつかなかったが、大ベテラン横山典弘はそうした混戦模様の雰囲気を生かして、息子・和生から引き継いだ相棒を前へとつけさせた。
そのトップナイフに続いて2番手に付けたのがドゥラエレーデだった。東京スポーツ杯2歳Sの時も鞍上ライアン・ムーアが抑えきれないほどの勢いで前を行く馬を追いかけたが、あの時と同じように逃げるトップナイフを追いかけた。
だが、途中でハナを奪った東京スポーツ杯2歳Sとは異なり、ドゥラエレーデは2番手で折り合いをつけ始めた。テン乗りとなった鞍上バウルジャン・ムルザバエフは脚を溜めるのではなく、この馬のペースで走ることを何よりも優先させた。
1000mの通過タイムが1分1秒5というゆったりとした流れでレースは進み、1200m、1400mの1ハロンごとの通過タイムは12秒5という遅さ。この流れでは後ろにいる馬は届かないので、残り600mを過ぎたあたりからペースが上がり、各馬が追われ始めたものの......前を行く2頭は涼しい顔で3コーナーを過ぎて行き、追い上げに入ったミッキーカプチーノらの方がむしろ苦しそうな表情を浮かべるほどだった。
そして迎えた最後の直線は前を行くトップナイフとドゥラエレーデ、2頭だけのものに。他の馬たちが伸び悩む中で、前を行く2頭は懸命な叩き合いを展開してみせた。
一度ドゥラエレーデが先頭に立ったかと思えば、内からもう一度トップナイフが差し返すという具合に両者一歩も引かないデッドヒート。勝負根性に優れた2頭の壮絶なマッチレースが冬の中山の直線で繰り広げられた。
後方からキングズレインが猛追して、彼らに1馬身1/4というところまで迫ってみせたが、感覚的にはもっと離れているように思えるほど、そこには2頭だけの世界が広がっていた。
両者ともに懸命に叩き合い、2頭が並んだところでゴール。ゴール直後はどちらが勝ったかもわからないほどの大接戦となったが、ドゥラエレーデがほんの数センチだけトップナイフよりも前に出たところがゴール。
単勝14番人気馬と7番人気馬による大波乱の決着で2022年最後のGⅠレースは幕を閉じた。
「ゲートをうまく出して、内に逃げる馬がいたので隣に付けられたらというプランを立てた」と、レース後のインタビューでドゥラエレーデの鞍上、ムルザバエフは興奮気味にそう話した。切れ味で屈した東京スポーツ杯2歳Sの反省を生かし、この馬の最大の持ち味である粘りをフルに生かし切った。思えば父も母父も中山でGⅠを制するなど、力の要る中山の馬場を得意とした馬たち。中山の申し子とも言うべき素質馬が大一番で目を覚ました。
これで同馬主のドルチェモアと同様、晴れてGⅠタイトルを掴んだドゥラエレーデ。来る2023年のクラシック戦線。無敗で突き進んできた天才肌のドルチェモアか、それとも大一番での爆発力がすさまじい良血馬ドゥラエレーデ、どちらが覇権を握るのか――2023年の競馬が早くも楽しみになってきた。
■文/福嶌弘
第39回ホープフルステークス(GI)着順
12月28日(水)5回中山9日 発走時刻:15時25分
着順 馬名(性齢 騎手)人気
1着 ドゥラエレーデ(牡2 B.ムルザバエフ)14
2着 トップナイフ(牡2 横山典弘)7
3着 キングズレイン(牡2 C.ルメール)6
4着 ファントムシーフ(牡2 福永祐一)2
5着 ミッキーカプチーノ(牡2 戸崎圭太)1
6着 セブンマジシャン(牡2 C.デムーロ)3
7着 ハーツコンチェルト(牡2 松山弘平)5
8着 セレンディピティ(牡2 武豊)8
9着 シーウィザード(牡2 浜中俊)13
10着 ジェイパームス(牡2 D.イーガン)10
11着 グリューネグリーン(牡2 M.デムーロ)9
12着 ヴェルテンベルク(牡2 横山武史)11
13着 ボーンイングランデ(牡2 斎藤新)17
14着 ジュンツバメガエシ(牡2 石川裕紀人)16
15着 フェイト(牡2 坂井瑠星)12
16着 ガストリック(牡2 三浦皇成)4
17着 モンドプリューム(牡2 横山和生)18
18着 スカパラダイス(牡2 今村聖奈)15
※結果・成績・オッズ等は主催者発表のものと照合してください。