永遠の愛に包まれた純白のアイドル・ソダシ ~多くの人間に愛され、愛し続けた3年間の競走馬生活~

その他

2023.10.8

    df928beaf20a5113a5b7f94df7788123f9e0e58f.jpg

    「ちょうどいいタイミングでバトンを渡せるのではないか」――

    妹ママコチャがGⅠホースになったその日、ソダシは現役引退を発表した。競馬界に現れた唯一無二のアイドルホースの突然すぎる別れに多くの競馬ファンは驚かされた。

    1万頭に1頭という確率でしか生まれない白毛馬としてこの世に生を受けたソダシ。

    母ブチコ、祖母シラユキヒメから連なる日本競馬界が誇る白毛馬のラインを引き継いだ彼女は多くの人たちから注目を集めてきた。そのためか、幼少期の彼女は手がかからず、放牧地でもスタッフについていくなど人間が大好きな馬だったという。

    aflo_143676455_thm.jpg

    「私のことを応援してくれる人はみんな仲間」――

    日頃世話をしてきたスタッフはもちろん、その美しい白毛に惹かれて応援に来たファンたちの愛を幼少期から受けてきたソダシはそう思ったに違いない。そしてそうした想いが彼女の競走馬生活に大きな影響をもたらしたことだろう。

    「かなり頭がいい子で、すごく甘えたがり」。ソダシをそう評したのは須貝尚介調教師。幼少期から人間の愛を存分に受けてきたソダシの人懐っこい性格は2歳になっても変わらなかった。

    競走馬になってからの彼女を担当した今浪隆利もそうしたソダシの性格を理解し、レース以外では彼女の好きなようにさせ、無償の愛を注ぎ続けた。

    そんな愛されて育ったソダシはレースでも結果を残し始めた。デビュー戦となった札幌での新馬戦は好位から抜け出して2着馬に2馬身半差をつける勝利。白毛馬としてデビュー戦を勝った最初の馬となった。

    aflo_149923918.jpg
    ソダシ 写真:日刊スポーツ/アフロ

    続く札幌2歳Sで白毛馬初の芝重賞制覇を果たすと、続くアルテミスSも快勝。3戦無敗でこの世代の牝馬戦線のトップランナーとなったソダシは2歳女王決定戦の阪神ジュベナイルフィリーズに挑んだ。

    1番人気の重圧からか珍しくゲート入りを嫌がったが、レースが始まるといつものように好位から動いて早めに先頭に立ち、最後はサトノレイナスに迫られたが、何とか踏ん張り勝利。白毛馬初のGⅠ制覇という快挙を無傷の4連勝で成し遂げた。

    3歳になってもソダシの快進撃は止まらなかった。

    休み明けで迎えた牝馬クラシック第1弾の桜花賞は好スタートから先行策を取り、ここでも直線早めに先頭に立って抜け出すとサトノレイナスの追撃を再度封じて桜花賞を制覇。

    勝ち時計の1分31秒1はコースレコードとなる破格の勝利でソダシは白毛馬初のクラシックホースに。この快挙は日本だけにとどまらず、海外のメディアからも注目を集めた。

    無敗のまま、桜の女王になったソダシ。純白の馬体にピンク色の優勝レイを纏う姿はあまりに美しく、多くのファンを虜に。

    その人気の高さから彼女のぬいぐるみは発売初日、10分も経たないうちに完売し、競馬場には彼女に会いたいという一心でファンが集まるなど、いつしかソダシは競馬界屈指のアイドルホースとなった。

    aflo_157924260 (2).jpg
    写真:日刊スポーツ/アフロ

    このままでは終われない――

    4歳になり、リベンジに燃えるソダシが挑んだのはフェブラリーSだった。

    ここ2戦とも10着以下に大敗していたためか、人気も4番人気、単勝オッズも8.2倍といずれも自己ワーストだったが、レースでは最後まで踏ん張り3着に。久々の好走に関係者もファンもソダシの復活を感じたことだろう。

    そして迎えた5月15日。ソダシはヴィクトリアマイルに挑んだ。最も得意とする芝マイルでのGⅠレースということもあり、彼女の持ち味がフルに発揮され、2着のファインルージュに2馬身差をつけて勝利。

    9ヵ月ぶりの勝利は多くのファンから祝福を受け、レース後のウイニングランではファンからの歓声が鳴りやまなかった。

    aflo_188289292 (1).jpg
    2022ヴィクトリアマイル ソダシが優勝 写真:スポニチ/アフロ

    その後、ソダシは札幌記念5着、府中牝馬S2着、マイルCS3着。

    5歳になった今年も連覇を狙ったヴィクトリアマイルで2着、ラストランとなった安田記念は7着と惜しくも勝ち星に恵まれなかったが、最後まで懸命に走り、踏ん張るソダシの姿は多くの競馬ファンに感動を与えたのは間違いないだろう。

    関係者やファンがソダシへと注いでくれた愛に応えるかのように、ソダシは懸命に走り続けた。物言わぬサラブレッドであるソダシにとって、その走りこそが彼女なりのとびきりの愛情表現だったのかもしれない。

    aflo_188290477 (1).jpg
    写真:日刊スポーツ/アフロ

    そんなソダシが、現役を去る。突然のことだけにショックを受けたファンも多いことだろう。

    だが、ソダシは我々の中から消えることはない。あの麗しい表情に純白の馬体、そして闘志満点で走るあの走り......それらはすべて、妹ママコチャやこれから誕生するソダシの子供たちに引き継がれたのだ。

    数年後、ソダシの子供たちが競馬場に現れることだろう。ソダシのように美しく、可憐で、そして多くの愛に包まれたアイドルホースが我々の前に現れる日をただただ心待ちにしたい。


    ■文/福嶌弘

    ソダシ
    馬主:金子真人ホールディングス株式会社
    調教師:須貝尚介(栗東)
    生年月日:2018年3月8日
    血統:父 クロフネ・母 ブチコ
    成績:
    JRA通算成績 16戦7勝
    JRA獲得賞金 629,234,000円(付加賞含む)
    重賞勝鞍:
    2020年 札幌2歳ステークス(GIII)
    2020年 アルテミスステークス(GIII)
    2020年 阪神ジュベナイルフィリーズ(GI)
    2021年 桜花賞(GI)
    2021年 札幌記念(GII)
    2022年 ヴィクトリアマイル(GI)