【日本ダービー】1998年スペシャルウィーク 天才・武豊をダービージョッキーへと導いた日本総大将

武豊騎手 スペシャルウィークで日本ダービー初勝利(c)SANKEI
競馬界のレジェンドである武豊。
これまでに日本ダービーを史上最多となる6勝を記録するなど、レジェンドの名にふさわしい成績を残しているが......実は武豊はダービーを制するまで11年の歳月を要した。
そんな武豊が悲願とも言える日本ダービー制覇をプレゼントしたのが、スペシャルウィークである。
父は当時の日本競馬界を席巻した不世出の大種牡馬サンデーサイレンス。
母キャンペンガールは未勝利だったが、日本有数の名牝系であるシラオキ系の血を引く名門の出身。
そんな両親から生まれたスペシャルウィークは気性の荒い馬が多いサンデーサイレンスの産駒としては珍しい大人しい気性で、坂路を走れば軽快なスピードを見せ非凡な才能を見せていた。
そんな素質馬は2歳になると栗東の白井寿昭厩舎へと所属し、武豊と出会う。
白井が自身の厩舎の看板馬、ダンスパートナーに似ていると評せば、武豊は自身が騎乗したダンスパートナーの全弟で菊花賞馬のダンスインザダークに近いと語るなど、両者から高いポテンシャルを認められたスペシャルウィークは12月のデビュー戦を快勝。
3歳になるときさらぎ賞で重賞初制覇を飾り、一躍クラシック候補に躍り出た。
続く弥生賞では前年に東京スポーツ杯3歳S(当時)を制したキングヘイローとここまで2戦2勝だったセイウンスカイとの初顔合わせとなったが、直線で豪快に差し切り重賞2勝目。
その豪快な勝ちっぷりから三冠制覇の期待が高まった。
しかし単勝1番人気に支持された皐月賞は大外枠に入ったことで思うように伸びきれず、逃げたセイウンスカイを捕らえられずに3着に完敗。
レース後には武豊も珍しく馬場に苦言を呈するなど、悔しさをあらわにする場面も見られた。
これだけの馬だからこそ、もう負けられない――そうして迎えたのが6月7日、第65回日本ダービーだった。
皐月賞惜敗の鬱憤を晴らす、栄光への独走

第65回日本ダービー 後続を突き放すスペシャルウィーク(c)SANKEI
曇り空の中で迎えた一戦となったこの年のダービー。
皐月賞で負けたとはいえ、末脚のキレ味、重賞2勝という実績を評価されたスペシャルウィークは単勝1番人気に支持。
2番人気には皐月賞2着の良血馬キングヘイロー、皐月賞馬セイウンスカイは3番人気に留まるというオッズに。
4番人気以下の馬は大きく離され、数字上は3強対決となった。
スタート直後、波乱が起こる。逃げると思われた皐月賞馬セイウンスカイではなく、これまで逃げたことがないキングヘイローが先頭に立ってレースを進めていく。
これがダービー初騎乗となった福永祐一の手綱で先手を取ったキングヘイローは前半1000mを60秒6という平均ペースで逃げる。
それをマークするようにセイウンスカイが2番手、3番手にエスパシオ、タヤスアゲインらが付けるという展開になった。
この時、スペシャルウィークは18頭中10番手。これまでのように馬群の後ろに付けて末脚を溜めることに。
末脚のキレ味では負けない、この馬が一番強いと信じていたからこそ、武豊とスペシャルウィークはこの位置に付け、徐々に外へと進路を取っていった。
第3コーナーを回り、大ケヤキを通過し、迎えた第4コーナーから最後の直線。それまで先頭を走っていたキングヘイローが失速。
2番手にいたセイウンスカイが先頭に立った。二冠制覇へ向けてひた走る中、馬群を割るようにして飛んできた馬がいた。
武豊とスペシャルウィークだ。
ゴールまで残り200m過ぎの時点でセイウンスカイを捕まえたスペシャルウィークは並ぶことなく一気に抜き去って先頭に立つと、後続馬との差を広げるように独走。
他の馬たちもスペシャルウィークを懸命に追っていくも、差は詰まるどころか離されていくばかり。
実はこの時、武豊は直線で鞭を落としていたというが、鞭を入れる必要がないくらいにスペシャルウィークはダービーの直線を疾走していく。
そしてスペシャルウィークは独走のまま先頭でゴール。
2着に入った伏兵ボールドエンペラーに付けた着差はなんと5馬身。皐月賞で負けた鬱憤を一気に晴らすかのような走りでダービー馬となった。
そしてこの勝利が武豊のダービー初制覇。
1987年にデビューして以来、数多くのGⅠを制して天才騎手と称されながらもなぜかダービーだけは勝てず、競馬界の七不思議に数えられていたが、10度目の挑戦で遂にダービージョッキーとなった。
この勝利で勝ち方を覚えたのか、武豊はこの後日本ダービーをさらに5勝して、2025年時点で史上最多となるダービー6勝の大記録を樹立した。
そしてスペシャルウィークはこの後、天皇賞の春秋制覇に加え、ジャパンCでは日本馬の総大将として挑み、凱旋門賞馬のモンジューを破るなどGⅠ4勝を記録。種牡馬としてもブエナビスタ、シーザリオなどGⅠ馬を5頭輩出。
2025年の日本ダービーにも皐月賞馬ミュージアムマイルをはじめ、彼の血を引く馬が5頭出走している。
レジェンドに初のダービーをプレゼントしたスペシャルウィーク。その偉業は今も色あせない。
■文/福嶌 弘

第92回日本ダービー(東京優駿)(GI)枠順
2025年6月1日(日) 2回東京12日 発走時刻:15時40分
枠順 馬名(性齢 騎手名)
1-1 リラエンブレム(牡3 浜中俊)
1-2 ショウヘイ(牡3 C.ルメール)
2-3 エリキング(牡3 川田将雅)
2-4 ドラゴンブースト(牡3 丹内祐次)
3-5 レディネス(牡3 横山典弘)
3-6 ファンダム(牡3 北村宏司)
4-7 ミュージアムマイル(牡3 D.レーン)
4-8 エムズ(牡3 戸崎圭太)
5-9 ジョバンニ(牡3 松山弘平)
5-10 トッピボーン(牡3 岩田望来)
6-11 ニシノエージェント(牡3 津村明秀)
6-12 カラマティアノス(牡3 池添謙一)
7-13 クロワデュノール(牡3 北村友一)
7-14 ホウオウアートマン(牡3 田辺裕信)
7-15 ファウストラーゼン(牡3 M.デムーロ)
8-16 ファイアンクランツ(牡3 佐々木大輔)
8-17 マスカレードボール(牡3 坂井瑠星)
8-18 サトノシャイニング(牡3 武豊)
※出馬表・成績・オッズ等は主催者発表のものと照合してください。