【天皇賞・秋】ドゥラメンテ産駒のラストクロップ マスカレードボールが優勝!新時代到来とともに感じた”あの馬”の面影

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2025.11.3


C.ルメール騎手騎乗のマスカレードボールが優勝(c)SANKEI

マスカレードボールを見ていると、どうしてもイクイノックスの姿を思い出してしまう... 筆者だけでなく、そうした感想を抱く方も多いだろう。

まずは見た目。黒鹿毛のマスカレードボールよりも青鹿毛のイクイノックスの方が黒いが、2頭とも大きくくくれば黒っぽい毛色の馬で顔には鼻の方まで伸びる大きな作がある。

そして走りにフォーカスを当てれば切れる末脚を武器にするところも一緒で戦績も春クラシックはともに無冠。

ダービーは勝ち馬よりも速い上がりタイムを記録しながら届かず2着に敗れているところも一緒。それでいて秋は菊花賞ではなく、古馬相手の天皇賞(秋)に矛先を向けたところも共通する。

そう考えれば、今年の天皇賞(秋)はマスカレードボールがイクイノックスと同じように勝利するだろう。

歴史は繰り返すのだ――と、予想もスムーズに決まりそうなものだが、実際にイクイノックスとマスカレードボールと大きく違うところがある。

それは「気性」だ。

キャリアを通じてほとんどイレ込むこともなく、騎手に対しても従順に指示を聞いてレースに臨んでいた優等生のイクイノックスと比べると、マスカレードボールはデビュー戦を勝利した直後から騎手に「気性の難しさがどう出るか」と、荒々しい気性について言及があるほど。

パシュファイヤーの効果でパドックではおとなしくとも、返し馬やゲート入りで機嫌を損ねて出遅れたり、位置を取りに行けないなどマイナスな面が出たりする。

血統内に3×3という強いクロスが入った弊害がマスカレードボールの走りを妨げていた。

だが、気性は成長すれば大人しくなっていくもの。だからひと夏を越えて迎える今回、ファンもマスカレードボールに大きな期待を込めていたのだろう。

そうでなければ出走14頭のうち7頭がGⅠ馬という豪華メンバーの中でGⅠ未勝利の同馬が単勝2.7倍の1番人気に支持されないだろう。

もしかしたらファンも待っていたのかもしれない。「イクイノックスの再来」を。

あんな走りを見せる強い馬にもう一度出会えるなら、といった願いがよく似たプロフィールを持つ3歳馬に込められて、この単勝オッズになったのかもしれない。

パドックに現れたマスカレードボールはダービー時よりもプラス4キロの470キロ。

曇り空の中でも黒光りする馬体はまるであの日のイクイノックスのよう。気分よく周回する様子を見て安心したファンも多かったはずだ。

だがレース直前のゲート入りの際、マスカレードボールは若さを見せる。

首を振って機嫌悪そうにしてはゲートになかなか近づかない。ほんの数分までは機嫌よさそうにしていたのに突然ここまで変わるとは、まるでこの日の東京競馬場の天気のよう。

そうして迎えたレース。どの馬も出遅れずにゲートを出た中、ハナを切ったのは宝塚記念を制した4歳馬メイショウタバル。

外枠からのスタートも問題なく逃げを打つと、その後ろにホウオウビスケッツ、そしてコスモキュランダが付けていく。

その中でマスカレードボールはというと後方から5頭目くらいの位置取りに。

いつものように末脚を生かすべく、脚を溜めるようにこの位置を選択。このレースで初めてコンビを組んだクリストフ・ルメールもすっかり手のうちに入れたかのようだった。

メイショウタバルが引っ張るかと思われたペースは意外なまでにスロー。スタートから12秒台を続けていき、前半の1000mは62秒0と予想外の流れになった。

切れ味勝負になることは間違いない。だが、ここまで後ろからだとさすがに届かない。

そう判断したのか、ルメールは3コーナーを過ぎた辺りでマスカレードボールの手綱を動かし始めた。大ケヤキを過ぎるころには外へと進路を取っていた。

迎えた直線。スローな逃げを打ったメイショウタバルにホウオウビスケッツが並びかけた中、外からダミアン・レーンとタスティエーラが動いて先頭に。

昨年2着に食い込み復活を果たしたこの舞台で先頭に立ち、今度こそ勝つという決意のもと、グングンと伸びていく。

残り200m。タスティエーラとメイショウタバルが競り合う中、外から飛んできた馬がいた。

その馬こそが、マスカレードボールだった。

タスティエーラとメイショウタバルに迫り、並ぶ間もなく先頭に立つとそこから差を広げていく。

外から皐月賞馬ミュージアムマイルが猛追してきたが、その豪脚さえ届かないと感じさせるほどにマスカレードボールの末脚がスピードを増していく。

上がり3ハロンの時計は2頭ともにメンバー最速となる32秒3だったが、位置取りの差でマスカレードボールに軍配が上がった。

まさに3年前のイクイノックスを思い出させる堂々たる勝ちっぷりでGⅠ初制覇を成し遂げたマスカレードボール。

2着も同じ3歳馬のミュージアムマイルとレース史上初となる3歳馬のワンツー決着で新時代の到来を予感させた。

「やったー!」と言いながら戻ってきたルメールはインタビューで「3歳で天皇賞を勝ってレベルは高い馬なので改めてGⅠで勝てると思う」とどこか満足げに語っていた。

もしかしたら、ルメール自身も感じていたのかもしれない。マスカレードボールの未来にイクイノックスの足跡があることを。


■文/福嶌弘

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