Jリーグ アジアで初導入のSPL(スポーツ・ポジティブ・リーグ)で気候変動対策に挑戦
2026.2.20
Jリーグ百年構想リーグ (c)SANKEI
Jリーグの新シーズンがシーズン移行前の特別大会、「明治安田生命百年構想リーグ」で2月6~8日の週末に開幕したが、ピッチ外でも今年は新たな取り組みがスタート。
Jリーグの気候変動対策の一環である「SPL(スポーツ・ポジティブ・リーグ)」が始まった。アジア初となる環境改善へのピッチ外の取り組みとはなにか。
近年、急激な気候変動の影響を受けて豪雨や台風で試合中止となる例が後を絶たない。この傾向は2018年を境に非常に顕著で、同年以降で台風や線状降水帯などによる中止は平均約9.5試合を数え、2017年までの約2試合から激増した。
冬も然りで、先日2月8日の今季開幕節には大雪により3試合が中止。影響は試合だけでなくクラブのスクール活動へのダメージも報告されており、ジェフ千葉では昨年6~8月で65クラスの活動がキャンセルされたという。
この状況に危機感を抱いているJリーグが導入したのがSPLだ。Jクラブの気候変動対策を数値化して、進捗状況や方向性を分かりやすく把握する仕組みで、Jリーグでは日本財団の協力を受けて今年1月から正式参画した。
個々に環境改善に対策を進めているクラブもあるが、SPL導入によりリーグ全体での活動として始動。
再生可能エネルギーやエネルギー効率、環境負荷の少ない移動手段、ごみや廃棄物の削減管理、教育など、活動のポイントとなる12項目についてJクラブの達成レベルに応じて点数が付与され、試合のようにSPLでも取り組みの成果が「順位表」で表示される。
今年は1月から6月までの活動を対象にデータを集め、その後2か月で審査し、11月下旬に結果を発表する予定で、上位20クラブが公表の対象となる。
各クラブの取り組みで効果的な手法などの情報共有やモチベーション向上を諮る狙いがあるが、順位に応じて助成金の配分も決まる。
イングランドのプレミアリーグやチャンピオンシップ、ドイツのブンデスリーガ、フランスのリーグアンで既に導入済みで成果も確認されているが、アジアでは今回のJリーグが初導入となる。
Jリーグの役割と連携
本格スタートに合わせて、1月28日には東京都内で「サステナビリティカンファレンス2026」が開催され、各Jクラブ関係者やスポンサー企業や他競技団体などから約200人が参加した。
SPL創設者のクレア・プール氏やブリストル・シティFCでサステナビリティ活動を担当するピーター・スミス氏が講演し、ワークショップでの意見交換も行われた。
スミス氏はブリストル・シティで部門ごとに孤立して失敗した事例も紹介し、効果を生むには「コミュニケーションと連携が不可欠」と指摘した。
Jリーグのサステナビリティ担当で今回のSPL導入を進めてきた辻井隆行理事は会合を終えて、「仲間が増えて、広がりをすごく感じた時間になった」と手ごたえを得た様子で、「リーグの役割はプラットフォーマー。クラブと一緒になってコスト削減や利益増につながるような事例を作っていきたい」と語った。
参加したJクラブからは活動にかかるコストへの懸念の声も少なくなかったが、辻井氏は各クラブとのやり取りを通してそれぞれの事例に応じて柔軟に対応する意向を示した。
ひとつのアイデアとして、あるクラブの成功事例などの情報をリーグが橋渡しすることや、プレミアリーグとリバプールの例を参考に必要な資材をリーグが一括購入してクラブに販売する案などを挙げた。
ファンを巻き込んだ取り組み
Jリーグでは2030年までにリーグ全体で排出するCO2の50%削減を目標に掲げているが、SPLでは各クラブの活動状況が馴染みのある「順位表」で表示されることで、ファンやサポーターの理解を促し、より多くの人を巻き込んだ活動になることが期待されている。
プール氏は、「SPLの項目の多くはスタジアムへの移動や会場での飲食などファンの行動に関わるもの。スタジアムの所有権がない場合でも、変化への影響を及ぼすことはできる」と言う。
「ピッチ上のパフォーマンスと同じで、1年良くても次の年に止めれば元の木阿弥になってしまう。SPLには優勝も降格もないが、正しいマインドセットを持てば、このプロジェクトを前進させて環境へより良いインパクトを与えることができる」と説いている。
2018年創設から5年でプレミアリーグやELが参加しているイギリスでは当初導入していた順位表も不要になるほど改善が見られたと明かし、「Jリーグのリーダーシップで、5年後にはSPLが不要になるぐらい、共通認識が浸透することを望んでいる」とプール氏は言う。
スミス氏も、「今回の会合は新しい取り組みの一歩だが、数年後に振り返った時に『良かった』と思えるものになるだろう。今後は、我々の方が日本のクラブから学んでイングランドで取り入れることがあるに違いないと思っている」と話し、日本での活動の浸透と進展に期待した。
辻井氏は言う。
「社会が変わるときは大勢の人が『それ、いいよね』とメインストリームになっていくことがすごく大事。日本の強みとして、コレクティブにみんなでやっていくのが得意というのがある。みんなでやっていくとなったらみんなで動く。そういう強みを活かして進んでいきたい」
今季の特別大会「百年構想リーグ」開幕節の3日間で、大雪の影響を受ける悪天候にもかかわらず、Jリーグは過去最多入場者数を記録した。1試合平均24,550人が来場して2025年(22,788人)の記録を塗り替えた。
彼らの興味をピッチ上のパフォーマンスだけでなく、各クラブのSPL気候変動対策にも向けて理解と参加を促すことができるか。Jリーグと各クラブの新たな取り組みに注目したい。
取材・文:木ノ原句望