60年ぶりの快挙 男子団体金の立役者エース・張本智和が口にした恩師への感謝「日本の層が一番薄い時代に監督。あの4年間があったからこそ」【卓球 アジア競技大会】
張本智和(c)SANKEI
9月20日の開幕と同時に始まり、熱戦が続いているアジア競技大会の卓球競技。
大会5日目の24日には、日本が男子団体決勝で中国をマッチカウント3-2で破り、悲願の金メダルに輝いた。卓球界はもちろん、日本中がお祝いムードに沸いた。
柱となったのは14歳からエースとして代表チームを引っ張ってきた、現在23歳の張本智和(トヨタ自動車)だ。
1番に登場した19歳の松島輝空(個人)が中国のエース・王楚欽にフルゲームの末に惜敗すると、2番の張本は19歳の若手の温瑞博(中国)をゲームカウント3-1で一蹴。
さらに3番の戸上隼輔(井村屋グループ)が林詩棟(中国)にゲームカウント1-3で敗れた後、4番で再びコートに立った王楚欽にはストレートで快勝した。
最高の形で5番の松島にバトンを渡した張本。最終マッチを託されプレッシャーを感じているだろう4歳下の後輩に「勝つから待っとけ」という頼もしい声かけも。
この言葉に触発された松島は、「自分は勝つ準備だけをしていました」と試合後に話したように、同い年の温瑞博をゲームカウント3-1で退け、チームに金メダルをもたらした。
1966年バンコク大会以来、実に60年ぶりに金メダルを手にした日本男子代表。
それ以上に、長年立ちはだかってきた中国の高く厚い壁を打ち破っての優勝は、「打倒中国」を掲げ、たゆまぬ強化を続けてきた日本にとって、格別な意味を持つものとなった。
その険しい道のりを身をもって知る張本は、これまで味わった悔しさ、挫折、葛藤......そのすべてを内包するように、ある恩師への感謝を口にしている。
その恩師とは、元男子代表監督で、現在はTリーグの琉球アスティーダを率いる田㔟邦史監督だ。
田㔟監督は2021年10月に男子代表監督に就任し、2025年3月に退任するまで、張本をはじめとする代表メンバーたちを育ててきた。
とりわけ、倉嶋洋介元代表監督が指揮を執り、団体銅メダルを獲得した2021年東京五輪の後、心身ともに子どもから大人に変わっていく10代から20代への移行期にあった張本の成長を、最も近くで支え、見守ってきた指導者の一人である。
「やっぱり忘れてほしくないのは田㔟監督のこと。日本の選手層が一番薄い時代に監督をやられて、あの3〜4年間(実際は3年5カ月)があったからこそ松島も出てきたし、僕、戸上、篠塚(大登)という(パリ五輪で)悔しい思いをした選手たちが、田㔟さんにこうやって、前回取れなかったメダルを見せられる。まだ団体の金メダル1枚ですけど、田㔟さんの4年間がこの金メダルに繋がっていると思うし、それを岸川(聖也)監督が受け継いで、今日、プレーした3人と(代表メンバー)5人だけではなく、過去の監督やスタッフ、選手たちが繋いできてくれたからこその金メダルだと思います。そういう苦しい時代を一緒に過ごした人たちを、しっかり大切にしたいなと思います」
張本の、田㔟監督への信頼の厚さが伝わってくる。
これに対し、在京で男子団体決勝の戦況を見守り、歴史的快挙を見届けた田㔟監督も次のコメントを寄せてくれた。
「本当に、よくぞこのチャンスをものにしてくれました。私も各地の講習会やイベントのたびに、『今回のアジア競技大会は男子が中国を破り、金メダルを取るので、ぜひ注目してほしい』と話してきたので、それが現実となって本当にうれしいです。しかし、男子はここからがスタートです。アジア競技大会の金メダルだけじゃ物足りない。これまでの鬱憤を晴らすためにも、次は世界選手権でチャンピオン、そしてロス五輪の金メダルに繋げてほしいです。選手たちが頑張っている姿を見て心から感動しました。本当にありがとう。そして、改めて金メダル獲得おめでとう」
決して諦めず、脈々とつないできた思いの先にたどり着いた金メダル。日本男子の次なる挑戦が、ここから始まる。
文=高樹ミナ