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<渋谷シネマライズ他にて大ヒット公開中>

公式HP:http://www.amelie-movie.com


 2001年上半期のフランス映画のなかで、あらゆる意味でもっとも話題になった作品、それが『アメリ』だ。まず4月末の公開一週間でいきなり120万人もの観客を動員したこと。それを受けて、5月のカンヌ映画祭に出品されなかったことに対してマスコミが事務局側の判断を揶揄し、論争を巻き起こしたこと。さらにその後も衰えることなく膨張する動員数と称賛の声に、今度は反旗を翻すかのように一部の批評家が、「移民がきれいに排除された復古的、右寄りの映画」と批判した等々。

実際、映画の評判を聞いてシラク大統領やジョスパン首相までもが鑑賞したというのだから、その加熱ぶりは推して知るべしだろう(先出の批判的な意見は、レトロなパリの良さを描いたこの作品が、政治家たちにプロパガンダとして用いられるのを恐れたゆえの、いささか作意的な行為でもあった)。いずれにせよ確かなことは、『アメリ』がそれだけ多くの人に愛されたという事実だ。その一番の理由は、情緒あふれるモンマルトルを舞台にしたこのチャーミングなコメディが観客を温かな気分に誘うから。

よくよく考えればここに登場するキャラクターは決して恵まれた人々ではない。内気で人と深い繋がりが持てないヒロイン、孤独な一人暮らしの老人、売れない作家、偏執的で女に嫌われる中年男…。そんな彼らが奏でる昔ながらの人情味に満ちた物語、なにより他人の人生を明るくすることを密やかな楽しみとするヒロイン(これを読んで「そんなの余計なお世話」と思うひねくれ者のあなたも、オドレイのお茶目な瞳を見れば降伏せざるをえないはず)の憎めないいたずらぶりと、清爽としたラストには、誰もが心地よい余韻を抱くに違いない。

とはいえ、この作品の監督がジャン=ピエール・ジュネだということを忘れてはならない。なんと言っても『デリカテッセン』『ロスト・チルドレン』をマルク・キャロと共同監督し、ハリウッドに招聘されて撮った『エイリアン4』にすら、お気に入りのでこぼこコンビ、ドミニク・ピノンとロン・パ−ルマンを連れていった監督である。もちろん、ふつうの映画であるわけがない。ジュネらしさの最たるものといえばまず、徹底して作り込んだその映像。"古き良きパリの姿"というのはあくまでエスプリに関してであり、実際はたんにレトロにこしらえているわけではない。むしろその非リアリスティックな色調、メトロや通 りのポスター一枚に至るまですべて貼り替えた(あるいは合成した)キッチュな装飾等は、この物語をどこにもない、シュールなおとぎ話として成立させている。

『アメリ』はまたキャスティングの点でも素晴らしい。ヒロインのオドレイ・トトゥは『エステサロン/ヴィーナス・ビューティ』で注目を浴びてはいたものの、これまで主役をはったことのないほぼ新人。だが監督が絶賛する天性の勘の良さとしっかりした演劇的下地が相まって、これ以上はない適役ぶりを披露している(正直、当初予定されていたというエミリー・ワトソンに決まらなくて良かったと思う)。相手役のマチュ−・カソヴィッツは言わずもがな、フランスきっての若手人気監督であると同時に『天使が隣で眠る夜』、自作の『アサシンズ』などで異才を発揮する俳優。「本業は監督。役者業にとくに魅力は感じない」と公言する彼だが、ジュネが「カメラに愛される役者」と称えるだけに、ひとたびスクリーンに現れると磁石のような魅力を発揮するのはさすがだ。さらに脇を固める面 子には、人気コメディアンのジャメル、常連組のドミニク・ピノンやリュフュス、イザベル・ナンティ等、「クセのある顔」が集結している。


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