5月下旬ロードショー
テアトル新宿

公式ホームページ
http://www.stereofuture.com/
 


中野裕之監督インタビュー

(2000年12月20日 at Peacedelic Studio)

Q: この映画を作るきっかけは?
A: 映画を作ることは長年の夢だったので、実際『サムライフィクション』は何年もかかってやってきました。でもそれは映画監督になりたいということではなくて、自分の表現したいものを映画にすることなんです。『サムライフィクション』の場合は当時自殺者があまりに多いので“命”をテーマにしようということでやってみて『STEREO FUTURE』は“未来”のことを描きたかった。まあ10年前ぐらいから環境問題に興味があったんで、 色々探っていくと未来にはネガティブなことが一杯あった。でもそれは映画になりにくい。じゃあいかにすればそういった問題を映画化できるかとうことと、映画界でもそういったことに興味を持って欲しいと思って何年も模索していたんです。そんな時、彗星捜索家の木内さんとの出会いがあって、彼のドキュメンタリーを撮ろうかと緒川たまきさん達と何回か撮っていた。じゃあそれを次の映画に活かせないかということと、永瀬さんを主役に映画をとらないかという企画があったのでその二つを上手く組み合わせる方法を考えました。そこで長年ためていたSFというキーワード(Stereo Future、Silent Female、Samurai Fighter、Sounds Funky)を並べてみて、それぞれのエピソードに出てもらいたい出演者の方に電話で交渉してみるといけそうな感じがしたので、そこから具体的な脚本を書き始めたんです。最終的には自分の伝えたいことを入れつつエンタテイメントにできる方向性を考えながら、2002年のある時期に起こる色んなエピソードを音楽のMIXテープを作るようなやり方で編集していくとこうなりました。

Q: 以前からいろんな“SF”があったわけですね。
A: そうです。たとえば“SUNDAY FAMILY”だったらこういった話とか。

Q: そこに役者さんを当てこんでみたんですね。
A: そうですね。

Q: なぜこういうテーマを含んだ映画にしたいと思ったのですか?
A: 環境問題について考えているときふと映画とか撮っている場合じゃないと思うことが多いんです。それと映画について言うと絵空事の悪魔とかと戦っている映画ばかりはやめてくれと。どうも納得いかないと。オゾン層の問題とか排気ガスの問題とか合成洗剤とかすぐやめようと思えばやめられることを誰もやめようとしない。なんとかそれを自分なりに表現したいと思った時、僕は映画でそれを言うぞと。やっぱり話を聞くより映像で見せたほうが印象に残るだろうし。僕個人----はいい加減なところもある人間だけれど真っ当なことに関しては言い続けるしかないんじゃないかと。実際僕個人の考え方としては、明るい未来と暗い未来が同時に存在している。でも明るい未来を選ぶにはポジティブな考え方しかないんと思うんです。個人的な問題なら時間が解決してくれることもあると思うけれども、時間が経てば余計悪くなることもあるわけだし。だから僕の言いたいのはこのままでは暗い未来になるというネガティブなことではなくてこうすれば明るい未来を選択することができるというポジティブなことなんです。悪いことは反省してやめる。反省したらポジティブなことを実行する。それが明るい未来を選ぶ唯一の方法だと思っています。それを僕なりのアプローチでやるとこういった映画になった。

Q: そのテーマと恋愛のエピソードとの関連性は?また何故2002年という時代設定にしたんですか。
A: 本編にも出てくるんですけど簡単に言うと“和をもって尊うべし”ですね。結局、皆時には喧嘩したりするわけですよね。和をもってということは基本的に仲直りすることだと思うんで恋愛に関してはそういう話にしたかったのと“和”っていうのは調和とハーモニーでそのバランスが崩れた時環境問題が起こるのであって、“和”っていうのが全体を結びつけているということですかね。実は環境問題と恋愛話が結びつく結末も考えたんですけどそれはやりすぎかなと。
最後に“それでも地球は回っている”というテロップが出てくるんですけど、地球の環境を考えれば2002年はもっと悪い状況に進んでいると思うけれども、それを悲観して震えていてもしょうがない。環境が悪くなって住みにくくなっても恋愛はあるでしょうし。実際ノストラダムスの大予言にしたってその日が来てもみんなそれぞれの生活をしていたわけだし、映画の中に出てくる圭介もどうやったら売れるかということや恋愛のことを考えてたりするわけじゃないですか。その中に人に対する思いやりとか普遍なものもあったり、エリみたいに弱っている時に初めて道端に生えている植物のことを考えたりすることもあるでしょうし。人間の本質的なものは変わってないでしょう。
つまり暗い未来に悲観してもしょうがない、それを回避するために対処の方法を考えた方がいいんじゃない。ということなんです。
それとやっぱり木内さんから聞いたある植物学者の話の中で本当にこのままでは近い将来植物が滅んじゃって酸素がなくなるかもしれないというのがあって。2002年に設定してるのは今から考えましょうということなんです。それにシンメトリー好きなんで2002年。

Q: 2002年も人は変わらないですかね。
A: 変わらないですよ。基本的には。

Q: 実際の撮影はどうでしたか?
A: 99年の8月にこの映画を撮ると決めて3週間で第1稿があがって、撮影は11月11日にインして20日間で終わりました。撮影は今までは1シーンを1カットずつどう撮るかを決めて撮ってたんですけど今回はそれをやめて、マスターショットを3回セットぐらい撮るやり方をしました。同じ芝居でなくてもいいから違うアングルから何テイクも撮るやり方です。だから編集のバリエーションも何通 りもあったんですよ。それぞれブロック別に編集していって出来上がったブロックをリミックス1とかリミックス2とか台本通 りだとこういう並びだとか再構築していくわけです。音楽がないので頭の中で音楽を鳴らしながら。結局81パターンくらいのバリエーションができて。ワープロでシーンナンバーを書いて順番を決めたりして。例えばシーンの順番を変えただけで主人公の圭介は女の子に二股かけてたりする見方もできるんですよ。完成したのがまあ一番見観やすいものになっているんじゃないかな。

Q: 中野さんの映画は音楽が重要なファクターだと思いますが?
A: 音楽は基本的にキャラクターにあった音楽をつけてみたという感じで、例えば監督(風間杜夫)には常にサンバがなってるし麻生久美子さんも同じテーマがなってるし、エリにはピアノの曲が使われているけど聞き様によっては悲しい局になったり優しい曲になったりする。要するにャラクターの波動が音楽になっているという感じでしょうか。その感じを清水さんとかに頼んだり、既成楽曲を使ったりと。シネマ・ジョッキーていうジャンルがあるとすればそういう感じですかね。それに気楽に音楽を聞きく感覚でみる映画があってもいいんじゃないかと。

Q: 絵がとにかくきれいですね。
A: 僕も正直驚きました。前はモノクロでしたし。普通 の映画のフィルムは赤が強く出て茶色っぽいものが多いと思うんですよね。今回はなるべく青が強く出るものを撮りたくてフィルターとかも全部シアン系のものをかけて撮りました。あとは光線のきれいなところで撮っているつもりなんですけどね。特に自然に関しては特にこだわりを持って撮っているからきれいだと思います。特に秋から冬にかけては一番空気がきれいですからね。映画って画館で見るときにお客さんをどこかに連れて行ってあげるわけじゃないですか。森の中に連れて行くとか。そういった意味で体感して欲しいですね。

Q: 完成した作品を観てどうですか?
A: 僕が撮る場合どんな話の映画でも“ピース”なものを入れていくわけだし、自分にとっては映画を作ることも環境問題について考えるのも同じ次元なわけです。出来上がった映画について文句をつけられるのは全く構わない。でもホラー映画を3本見た後SFを見れば絶対救われると思うし、僕の映画は映画の役割で言えば漢方薬みたいなもんですよ。
これを見た僕のことを知っている人たちは「まんまやね。(中野裕之の)」と言いますね。『サムライフィクション』はある意味映画らしい映画ですよね。シナリオは6割以上が斉藤さんだったし。『STEREO FUTURE』は9割以上が自分なわけですよ。映画のダイナミズムからいうと色々意見は出ると思いますけれど、映画は別 にハリウッドの大作だけではないじゃないですか。ヌーヴェル・バーグとかストーリーはイマイチだけど絵がよかったねとか、音はいいねとか、役者がいいねとか。色々あるわけだし。まとめると『STEREO FUTURE』は色んな要素が詰まっていて、どこか好きなところがあってそこを気に入ってもらえればいいと思うんです。僕がクラブのDJであったりVJであったりしてその中で竹中さんのようなキャラクターを楽しんでくれたりすればいいし、映像作家か映画監督かっていうとこれは気持ち的には映像作家として撮ってい入る作品で、あくまでも自分ありきの作品なんです。 見る人は何を期待して観に来るか解らないし『STEREO FUTURE』を観て期待してたものと違うといわれてもしょうがない。今言っておきたいことが僕の頭の中で映像化されているものなので。あとはやっぱり作れる間は作りつづけるしかないかなと。そうしないと次が見えてこないんで。