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2017.12.29

伊藤美誠「自分の卓球を取り戻した」2017年シーズンの軌跡

伊藤美誠 Photo:Itaru Chiba

 本来のワクワクする卓球がようやく戻ってきた。「世界卓球2018スウェーデン(団体)」日本代表最終選考会で優勝し、栄えある代表の切符を手にした伊藤美誠(スターツSC)だ。決勝ではダブルスのパートナーである同じ17歳の早田ひな(日本生命)と対戦。前評判通りの一騎打ちとなり、第1ゲームを伊藤、第2ゲームを早田が奪う展開で、第3ゲームからは徐々に伊藤が主導権を握り、最後はゲームカウント3-1(世界卓球団体と同じ5ゲームマッチ)で伊藤に軍配が上がった。

世界卓球2018 日本代表最終選考会 女子決勝 伊藤美誠vs早田ひな

 ここまで来るのに1年かかった。2016年のリオ五輪で当時、わずか15歳にして代表入りした伊藤は、夢に見たひのき舞台で福原愛(ANA)、石川佳純(全農)とともに女子団体銅メダルを獲得。一躍時の人ととなり、メディアにも引っ張りだこの超人気者として多忙を極めた。ところが2017年は不振が伊藤を襲う。シーズンの幕開けを告げる全日本選手権で周囲の大きな期待をよそに、まさかの5回戦敗退。自身と同じ表ソフトの異質ラバーを使用する安藤みなみ(専修大学)に対し、いとも簡単に第1ゲームを奪いながら、第2ゲームで逆転され、その後もミスを連発してゲームカウント2-4で自滅した。

 この負けが後々まで響いた伊藤はスランプに陥ってしまったのだが、後になって聞けば、リオ五輪後はなかなかモチベーションが上がらなかったという。いわゆる燃え尽きたというやつだった。


世界卓球2017ドイツを機に復調

 復調の兆しは世界卓球2017ドイツ(5月29日〜6月5日)で見えた。この頃は自身の卓球の立て直しとパワーアップを念頭に、新たなトレーニング法を取り入れたフィジカル強化や、ラバーを瞬発性の高い日本製から粘着性の高い中国製に替え、回転量の多いドライブボールを磨くなど、新しいことにトライしている最中だった。そのため、まだ自身のプレースタイルが固まっておらず、女子シングルス4回戦で同種目銀メダルの朱雨玲(中国)に善戦したものの敗退。しかし、早田ひな(日本生命。当時は希望が高校)とのダブルスでは結成わずか4カ月で銅メダルを獲得し、暗闇に光を見出した。

伊藤美誠/早田ひな Photo:Itaru Chiba

 あの頃を振り返って伊藤は、「今年の前半は本当に良くなくて、世界卓球が自分の卓球を取り戻すきっかけになった。でも、あの前半があったから練習内容を見直すことができたし、自分も変わることができた。だから今は良くなかったシーズン前半に感謝している」と話す。

 その後も8月のワールドツアー・チェコオープンで単複優勝。9月には中国遼寧省へ渡り、世界最高峰といわれる中国スーパーリーグの下部リーグにあたる甲A リーグに参戦し、チームの要として14試合に出場して全勝。チームを決勝トーナメントへと導いた伊藤の活躍は現地メディアでも、「17歳の主力。日本卓球界の天才少女」と取り上げられるほどだった。そして、さらに翌10月にはITTFチャレンジ・ポーランドオープンでシングルス優勝。11月のスウェーデン・オープンはダブルスで優勝と次々と結果を出し、完全復活を印象づけた。

中国破り優勝の伊藤・早田組 勝因に「感情のコントロール」

 今回の代表最終選考会でも、予選リーグは一進一退の苦しい場面がたびたびあったが、「(相手にリードされても)慌てず無茶をせず落ち着くことができた。特に自分の調子がいい時はバンバンいってしまうので、行き過ぎないよう抑えるプレーもできた」と話している。また、試合を見ていた女子日本代表の馬場美香監督も、「苦しくても耐えながらプレーしていたのが目立った。苦しさを乗り越えて代表権を取ったところにすごく成長を感じた」と伊藤を評価した。

伊藤美誠 Photo:Itaru Chiba

 伊藤が成長したのは精神面だけではない。2016年シーズンはあまりやらなかった地道なフットワーク練習などの基礎練習を黙々とこなし、多球練習もして自分を追い込んだ。その積み重ねでフィジカルが強くなり、「足が使えるようになって、苦しい状態からでも相手の苦しいところにボールを打ち返せるようになった」と伊藤は話す。その一方では「苦しい体勢に持ち込まれないようにしなきゃダメなので、そこはまだまだ。だから今は苦しくても絶対に追いついて粘る」と強い気持ちを見せている。

(文=高樹ミナ)

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