カンブリア宮殿

村上龍 × 経済人

1161155

テレビ東京系にて放送中

テレ東BIZで配信中

2012119日放送

新分野に挑戦し続けろ
~これが21世紀の多角化経営だ!~

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ブラザー工業 社長
小池 利和(こいけ としかず)

失われた10年を経て、ニッポンの製造業では「選択と集中」が叫ばれてきた。つまり、不採算部門を切り捨て、得意分野に経営資源を集中するという考え方だ。日産のカルロス・ゴーン社長が「選択と集中」で会社を立て直したのをきっかけに、日本の産業界はことごとく「選択と集中」に飛びついた。
しかし、愛知県に本社を置くブラザー工業では、あえて「選択と集中」を否定し、新規事業を開拓し変化を続けることで100年以上をサバイバルしてきた。今では創業のミシン製造から派生した技術を生かし、プリンターや複合機、通信カラオケ事業など多彩な分野に進出する知られざる最先端企業となっている。
今では44の国と地域に進出するグローバル企業となったブラザー工業を率いるのは、23年間にわたりアメリカ法人で勤務した小池だ。挑戦と失敗を繰り返しながら新事業を興し、海外市場を切り開いてきたブラザーが目指す、21世紀型の多角化経営に迫る。

社長の金言

業態を変えなければ会社は伸びない

RYU'S EYE

座右の銘

放送内容詳細

多角化経営でサバイブしろ!

ブラザー工業は1908年に安井ミシン商会として発足、最初は輸入ミシンの修理を行っていた。1926年に安井ミシン兄弟商会と改称し、これが現在の社名「ブラザー」の由来となった。1932年には自社でミシンの製造を開始すると、手作りブームの中、ミシンのトップメーカーに上りつめた。しかし、家庭用ミシンの売上は今や全体の6%に過ぎない。ブラザーは常に「いつかミシンはなくなっていく」という危機感を持ちながら自社の技術を磨き、ミシン製造のノウハウを生かした多角経営を推し進めてきたのだ。ミシンのモーターを利用し洗濯機などの家電製品を作り、プレス加工技術を応用しタイプライターなど情報機器の分野にも進出。ファックスや複合機、さらには通信技術を使い、世界初の通信カラオケまで開発している。今では家庭用ミシン、情報機器、工作機械、通信事業の4つを柱とする多角化経営にたどりついた。 しかし、ただ売り上げ拡大を狙っての多角化ではない。一つの事業に経営資源を集中せずいくつもの柱を持つことで、どんな経済環境の変化にも耐えられる企業を目指しているのだ。

グローバル化で生き残れ!

ブラザー工業は44の国と地域に進出するグローバル企業だ。 元々、ブラザーは「輸入産業を輸出産業にする」という創業の理念のもと、1954年にはミシンの輸出を開始。その後、1984年にはロサンゼルスオリンピックにタイプライターを公式提供するなど世界ブランドとなっていた。しかし、当時すでにタイプライターに代わりパソコンが普及し始めていた。プリンターの需要が高まるなか、ブラザーはプリンター開発では後れを取っていた。その矢先にライバル会社から発売されたのが、レーザープリンターだ。従来のプリンターに比べ飛躍的にスピードが速く、見た目が美しい。その頃アメリカで商品企画を担当していた小池は危機感を感じ、日本本社にレーザープリンターの開発を進言。さらに、90年代に入りアメリカでベンチャー企業が増えると、プリンター、ファックス、コピー機の機能が一体化した小型の複合機の需要を探し当て、いち早く市場に参入。アメリカでのブランド力が高まったブラザーは、この分野でヨーロッパ、アジアへも進出する。現在では売上、生産ともに8割が海外になり、円高リスクを回避できるようになった。

大失敗から生まれた世界初の通信カラオケ

昔はカセットやレーザーディスクが使われていたカラオケ。実は現在の通信カラオケシステムを世界で初めて開発したのが、ブラザーだった。この通信カラオケの開発、実はある大失敗が元になっていた。1985年に電電公社がNTTとなり、電話回線への参入が可能となると、ブラザーはパソコン用のゲームソフト自動販売機「TAKERU」を開発。客は好きなソフトを選び、電話回線を通じてフロッピーにダウンロードできるという画期的なものだった。しかし、電話回線でのダウンロードに時間がかかり、電話代を負担していたブラザーは大赤字となってしまった。ところが、コンテンツをデジタル化し配信するビジネスモデルに可能性を感じた担当の安友は研究を続行。1992年、ついに世界初の通信カラオケを開発する。ブラザーの開発した通信カラオケのジョイサウンドは業界トップシェア。今では携帯電話やスマートフォン向けのコンテンツなどと合わせておよそ500億円を売り上げる事業にまで成長した。たとえ失敗しても技術と経験が残る、だからブラザーは新事業を追求し続けているのだ。

ゲストプロフィール

小池 利和

  • 1955年愛知県生まれ
  • 1979年早稲田大学政治経済学部卒業、ブラザー工業入社
  • 1982年アメリカ現地法人に出向
  • 2004年帰国後に取締役就任
  • 2007年社長に就任

企業プロフィール

  • 会社名:ブラザー工業株式会社
  • 本社:愛知県名古屋市瑞穂区苗代町15番1号
  • 設立:1934年1月
  • 売上高(連結):5028億円(2011年3月期)
  • 経常利益(連結):386億円(2011年3月期)
  • 従業員数(連結):29873人
  • (2011年3月31日現在)

村上龍の
編集
後記

ブラザー工業は創業以来100年を超える歴史を持つが、創業者や歴代社長の自伝の類が極端に少ない。 おそらく「過去を振り返るよりも新規事業のアイデアが優先」という企業文化が根づいているからだ。「製造ではなく創造」という社風は、ミシン修理の際に部品を独自に作ったという創業以来の伝統に由来している。 小池さんは、23年間もアメリカにいて、日本的な序列とは無縁に本社社長に就任した。 ブラザー工業は、「空気」など読まない。ひたすらアイデアを磨き、新規事業とグローバル展開に賭ける。

村上龍

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