【ACL】8強敗退のヴィッセル神戸、明暗を分けた選手起用
ヴィッセル神戸 写真:森田直樹/アフロスポーツ
AFCチャンピオンズリーグ(ACL)の東地区準々決勝で、浦和レッズが攻撃力を発揮してタイのBGパトゥムに大勝してベスト4に進出したが、ヴィッセル神戸は本領発揮できずに全北現代モータースに延長戦で敗れて8強で敗退した。
浦和も神戸も16強対戦で快勝していたが、決勝トーナメント2戦目での選手起用が明暗を分けた。
勝っているチームは変えない。
サッカー界で昔からよく言われているセオリーだが、8月22日に埼玉スタジアムで行われた準々決勝は、それを思い起こさせるものだった。
横浜F・マリノスとの16強戦では圧巻のパフォーマンスを見せていた神戸だったが、中3日で迎えた2度のACL優勝経験のある全北現代との対戦には先発7人を変更。
マリノス戦でゴールも決めて勝利に大きく貢献したMF飯野七聖選手とMF汰木康也選手、最終ラインで見事な守備を見せたDFマテウス・トゥーレル選手らをベンチに置き、攻撃の起点となっていたFW大迫勇也選手と足に故障を抱えているというMFアンドレス・イニエスタ選手はベンチ外という編成だった。
だが、人が変わればサッカーも変わる。
キックオフが夏の蒸し暑さも厳しい午後4時ということもあり、スローなテンポで試合は進み、前半を0-0で終えた。だが、神戸は全体に選手同士の距離感が悪く、サポートの動きもセカンドボールへの反応も仕掛けも鈍い。相手にスペースと自由を与えて得点を許すことになった。
後半開始から飯野選手を投入し、後半15分過ぎには汰木選手を送り出し、その直後にDF尾﨑優成選手のシュートのこぼれ球をゴール前に詰めた汰木選手が押し込み、先制した。
そこまでは良かったが、リードは長くは続かず、2分後に失点。左サイドをMFマドウ・バロウ選手に崩されて同点にされた。
その後は押し込まれる時間が続き、GK前川薫也選手の好セーブで失点は逃れていたが、効果的な攻撃の形を作れずに得点も奪えず、試合は延長戦に突入。
延長前半終了前に、再び左サイドをバロウ選手に崩されて途中出場のFWグスタボ選手に決勝ゴールを決められた。試合終了間際には、カウンターから追加点も許して1-3で敗戦となった。
吉田監督「どこかに甘さがあった」
先制直後の失点について、神戸の吉田孝行監督は「どこかに甘さがあった。カバーリングに行けていたら防げたと思う」と振り返った。
また、先発の大幅な選手変更については、「この過密日程で勝っても2日後に試合がある。ましてやキックオフは夏の暑さで16時。3試合すべて勝つこと前提に考えた時に、スタメン入れ替えた方がいいという自分の判断だった」と説明。試合日程や暑さをはじめ、先を見据えての選手起用だったと明かした。
吉田孝行監督 写真:西村尚己/アフロスポーツ
だが、当然ながら一発勝負の大会で、目の前の試合に勝利できなければ次はない。
勝ち進んだ全北現代は18日のラウンド16戦で延長120分を戦い、浦和は中2日の日程で迎えた準々決勝だったが、どちらのチームも先発変更は一人に留めて戦った。
浦和のリカルド・ロドリゲス監督は準々決勝を前に「一度に一つずつ、目の前の試合だけを考えて臨む。過信は良くないし、どのチームも難しい相手だ。先を考えるとミスをする」と話していた。
神戸はアジア制覇を目標に掲げていたが、結果的に足元を見ずに進もうとして躓いてしまった。
短期間での連戦で、選手のコンディションも重要な要素であることは間違いない。起用は悩むところだろう。しかも、吉田監督が「FWは万全な選手がいない」という負傷やコンディション不良が多いなかでは選択肢も限られる。
だが、短期決戦では勝利で勢いや自信も掴めることが少なくない。浦和が良い例だろう。
浦和は自分たちの戦い方をつかみ、ラウンド16のジョホール戦の5-0勝利に続いて、準々決勝ではタイのBGパトゥム・ユナイテッドを4-0で下し、2戦連続での快勝につなげた。
ACLで得た自信を次のリーグ戦などにつなげることで、新たな展開が見える可能性もある。Jリーグで残留争いをしている神戸には、チームが上向くきっかけになっていた可能性もある。
神戸も選手を大幅に入れ替えても、チームが機能していれば問題はなかっただろう。
だが、FWステファン・ムゴシャ選手は先発で120分出場しながら機能せず、途中出場したFW武藤嘉紀選手も動きに好調時のような切れを欠いた。
FW小田裕太郎選手は先発の中でも良い動きで積極的に仕掛けていたが、負傷明けで再発を恐れた吉田監督は「怪我をさせたくない」と前半45分で下げた。後半から飯野選手や汰木選手を送り出したが、チーム全体で攻撃を押し上げることはできなかった。結果として、選手層の薄さが響く形になった。
敗戦の影響も気になる。マリノス戦で見せたパフォーマンスが素晴らしかっただけに、全北現代戦へ期待値も上がっていた。それだけに不完全燃焼ともいえる敗退に、失望感は否めず、チームに与えるマイナス作用も懸念される。
吉田監督は「この結果を真摯に受け止めてJリーグに進まなければならない。みんな、この大会に賭けてきた。しっかりレストを与えて、切り替えていければ...」と言った。
チームの現状や課題を改めて確認する機会になったとは言えるだろう。それを今後へどう活かすか。
神戸は9月3日にアウェイの京都戦でJリーグの戦いを再開する。7日には天皇杯準々決勝で鹿島との対戦もある。踏ん張りどころだ。
取材・文:木ノ原句望