牝馬三冠アーモンドアイ 芝GI9勝・通算15戦11勝「抜群のルックスと圧倒的パフォーマンス」【もうひとつの最強馬伝説】

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2025.5.18

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第15回 ヴィクトリアマイル C.ルメール騎手騎乗のアーモンドアイが芝GI最多タイ7勝目(c)SANKEI

レースですべてのエネルギーを出し尽くしてしまう馬

通算15戦11勝。牝馬三冠を皮切りに、芝GI9勝は史上最多。ラストランとなった2020年のジャパンカップでは、無敗の三冠馬2頭を相手に堂々1着でゴールした稀代の名牝・アーモンドアイ。

その現役時代について、国枝厩舎で同馬を担当していた根岸真彦調教助手に聞いたお話を、選りすぐりの名馬36頭の素顔と強さの根源に迫った『もうひとつの最強馬伝説〜関係者だけが知る名馬の素顔』(マイクロマガジン社)から一部抜粋・編集してお届けする。

馬名の由来である〝アーモンドアイ〟とは、その名の通りアーモンドのような目の形のこと。

目頭と目尻が平行に揃った目元は、美人の顔に多い瞳の形であるとされている。幼駒の頃に初めて対面した国枝栄調教師も「いい顔をしていた」と評したように、その顔立ちは誰もが認める美人だった。

そのルックスの良さに加えて、圧倒的なパフォーマンス。まさに〝完璧なアイドル〟と言っても過言ではない?

そんな疑問をデビュー前から現役引退まで担当し続けた助手の根岸真彦に投げかけると、「確かにアイドルっぽいところはありましたね」と返ってきた。

「ちょっと我が強い面があって、馬房の中で身体を触られたりするのはあまり好きじゃなかったんです。だから手入れとかも気を遣いながらやっていたのですが......外部の人が来ると態度が違うんですよ。GⅠを勝って活躍するようになると、取材などでいろいろな人が厩舎に来る機会が増えたのですが、そういう時は馬房でも大人しく撫でてもらったりして愛嬌を振りまくんです。外面がいいというのか......。アイドル気質ではありましたよね(笑)」

マネージャーなど身内には駄々をこねても、いざファンの前に立てば自らの役割を全うする。これぞまさにアイドルの仕事ぶり?

とはいえアーモンドアイが、ただ可愛いだけのアイドルでなかったことは前述した通り。向かうところ敵なしの強さを支えたのは、とてつもない身体能力の高さにあった。根岸が振り返る。

「デビュー戦当日の鞍付けの時のことです。国枝先生が前に立って装鞍していたのですが、アーモンドに後肢で蹴られてしまったんです。普通なら蹴られないような位置だったんですよ。おかげで国枝先生は少しだけ手にケガをしてしまったんですが(苦笑)、それ以上にあの馬の可動域の広さに2人して驚いたのを覚えています」

類まれなトモ脚の蹴りの強さと柔軟性。これがレースで見せる爆発的な末脚の原動力となったが、それゆえに蹄のトラブルにも見舞われるようになった。

「3歳の春までは大きな問題にはならなかったのですが、ひと夏を越した秋華賞の前は大変でした。身体が10キロ以上増えて成長したことで、前脚と後脚の蹄が激しくぶつかるようになってしまったんです。牧場のスタッフや装蹄師さんと相談しながら、蹄鉄の形や幅、素材などを工夫したほか、プロテクターを装着して脚元に傷ができないように気をつけていました」

陣営が苦労したのは脚元のケアだけではない。

「一番最初に異変を感じさせたのはオークスのレース直後でした。身体が熱くなって熱中症のような症状を見せるようになったんです。おそらくレースに行くと、すべてのエネルギーを燃やし尽くしてしまうのでしょう。そのオークス以降はしばしば同様の症状を見せるようになり、翌年の天皇賞・秋では表彰式を辞退してすぐに厩舎に戻り、水で身体を冷やしていました。そこまで力を出し尽くせる馬なんてほかには聞いたことがありません。そういう意味でもアーモンドはすごい馬だったんだと思いますね」

■アーモンドアイ プロフィール
生年月日:2015年3月10日生まれ
性別:牝馬
毛色:鹿毛
父:ロードカナロア
母:フサイチパンドラ(母父:サンデーサイレンス)
調教師:国枝栄
馬主:シルクレーシング
生産牧場:ノーザンファーム(早来)
戦績:15戦11勝
主な勝ち鞍:桜花賞、オークス、秋華賞、天皇賞・秋(2回)、ジャパンC(2回)、ヴィクトリアマイル、ドバイターフ

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もうひとつの最強馬伝説 ~関係者だけが知る名馬の素顔

第2次競馬ブーム(1990年前後)の立役者・オグリキャップから世界最強馬イクイノックスまで、ターフを彩った名馬36頭をセレクト。強さや速さはもとより、その素顔はどんなものなのか?

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