グラスワンダー「現役時も引退後も変わらない泰然自若とした態度」【もうひとつの引退馬伝説】

その他

2025.12.21

10000000000000133914_20251221094039364132_P120307896114.jpg
第49回 朝日杯3歳ステークス 的場均騎手騎乗のグラスワンダーが優勝(c)SANKEI

かなりの高齢でも食欲はまったく衰えなかった

グランプリレースで無類の強さを発揮したグラスワンダーは、2歳時からすでにとてつもない強さと能力をファンに見せつけていた。

デビューからの3戦すべて圧勝で迎えた2歳王者決定戦の朝日杯3歳Sでは1番人気に支持され、当時のレコードタイム(1分33秒6)で快勝。

その圧倒的な強さは、同じ外国産にして「スーパーカー」と称された怪物マルゼンスキーと比較されたほどだった。

それだけに3歳以降の活躍が大いに期待されたが、その類まれなる能力の代償か、幾度かの故障に見舞われることとなる。

だがその都度復活を果たし、同世代のライバルたちと数多の名勝負を繰り広げ、多くのファンを熱狂させた。そのグラスワンダーは2025年8月8日、30歳でこの世を去った。

今回はその亡くなる前年、功労馬として余生を送っていた当時の様子を、著名な競走馬の引退後を追った『もうひとつの引退馬伝説〜関係者が語るあの馬たちのその後』(マイクロマガジン社)から一部抜粋・編集してお届けする。

「本当に手がかからない馬でね、これといったエピソードもあまりないんだよねぇ(笑)」

現在(2024年6月)、グラスワンダーが余生を送っている明和牧場の牧場長、浅川明彦さんは笑顔でこう答えてくれた。

2000年の宝塚記念を最後に、現役を引退したグラスワンダーは、種牡馬として社台スタリオンステーションに繋養された。

そこでスクリーンヒーローやアーネストリーといった活躍馬を輩出すると、2007年にはブリーダーズ・スタリオン・ステーション、2016年にビッグレッドファームへとそれぞれ移籍。

2020年に25歳で種牡馬を引退し、功労馬としてやってきたのがこの明和牧場だった。

「ビッグレッドファームの岡田繁幸さんからは『いい馬だからよろしくね』という感じで引き受けました。最初見た時はとにかくガッチリとしていてデカい馬だなと思いましたよ」

種牡馬時代のグラスワンダーといえば、現役のころ以上に丸っこくなった馬体が印象的である。

とくにタンポポを好んで食べたというエピソードは『ウマ娘』でも採用されたほどだ。サラブレッドとしては高齢とされる25歳になった当時ですら、筋肉ムキムキで放牧地に出せばダーッと所狭しと走り回るほどだったという。

それだけに浅川さんが抱いた「ガッチリとしたデカい馬」という印象はグラスワンダーにピタリとハマった。

明和牧場にやってきた当時は、放牧されるとあちこち駆け回るほど元気だったが、年を取るごとにそうした活発さは薄れ、29歳となった今では走り回るようなことは少なくなったという。

その代わりに放牧地をゆったりと歩いては生えている青草を食べ、のんびりと過ごしている。

年齢を重ねるに従って、はちきれんばかりだった馬体は、丸みを帯びたままではあるものの、徐々にしぼみ、現在の馬体重は550キロ~560キロほど。

それでも巨漢だが、600キロは優に超えていたという4年前と比べると、だいぶスリムになった印象を受ける。

ただ、幾分体重が落ちたとはいえ、食欲の方はまったく落ちていないそうだ。明和牧場では1日に3~4回ほど食事を与えているが、グラスワンダーは馬房に戻って食事をする際、用意された飼い葉をしっかりと食べ切るという。

29歳という年齢もあって、さすがに歯が悪くなってきたため、飼い葉は細かく砕かれ、ニンジンなどもフードプロセッサーで細かくしてから与えられる。

それを一度に大量にではなく、ちょこちょことつまむ感じで食べ、毎回ぺろりと平らげてしまう。そのため浅川さんは、馬体が増え過ぎないようにカロリーを抑えた食事を用意するほどだ。

ただ基本的にはなんでも食べるというグラスワンダーだが、唯一苦手としているのがチモシーと呼ばれる乾草。これだけはいくら大食漢なグラスワンダーでも残すことがあるそうだ。

「飼い葉は栄養のバランスを考えて配合して出しているので『ちゃんと食べないとダメだよ!』って思っちゃいますけどね(笑)」
 と、浅川さんも苦笑いを浮かべていた。

一昔前は外国産馬というとゴツくて気性が勝っている印象があったが、現役のころからどこかおとなしい雰囲気のあったグラスワンダーには、デビュー前にこんなエピソードがある。

ある日のこと、調教中に放馬したカラ馬が厩舎内に突っ込んできてしまい、グラスワンダーのすぐそばを通過するというアクシデントが起こった。

にもかかわらず、若かりしころのグラスワンダーは迫りくるカラ馬を見ても微動だにせずただボーッと立っていたままだったという。グラスワンダーの精神力の強さを感じさせるエピソードだが、現在でもそうした面があると浅川さんは言う。

「甘噛みくらいはしてくるけれど、悪いことは一切やらないし、とにかく気のいい馬。泰然自若としていてドーンと構えているところは現役のころから変わらないかな。それと人が来ることに慣れているのか、柵の方に寄ってきてくれることもあるよ。管理する僕らからしたら、ストレスを与えたくないので柵の近くに人が来ても、あまりそばに行かずにのんびりとしてほしいと思うけどね」

■グラスワンダー プロフィール
生没年月日:1995年2月18日~2025年8月8日
性別:牡馬
毛色:栗毛
父:シルヴァーホーク
母:アメリフローラ(母父:ダンチヒ)
現役時調教師:尾形充弘
現役時馬主:半沢
戦績:15戦9勝
主な勝ち鞍:有馬記念、宝塚記念、朝日杯3歳S
生産牧場:フィリップスレーシング(米国)
最後の繋養先:明和牧場(新冠)

0C108E9E-8038-4342-8946-93420E670F60.jpg

もうひとつの引退馬伝説~関係者が語るあの馬たちのその後

おかげさまで、重版出来!!

競走馬の引退後の行き先は、種牡馬や繁殖牝馬になる他、乗馬、馬術競技、伝統行事や農業で活躍したりなど多岐に渡ります。本書ではGGIなど重賞を勝った著名な馬の、繁殖生活だけに限らない余生(セカンドキャリア・サードキャリア)にアプローチ。

繋養先でどのように過ごしているのか、現役時代との違いやエピソードなどを関係者へ直撃!引退した著名な競走馬の現在の魅力をとことん掘り下げていきます。


編:マイクロマガジン引退馬取材班
発売日:2024年9月13日
価格:1,980円(本体1,800円+税10%)
購入:https://www.amazon.co.jp/dp/486716626X/

A3_出走表(14頭)フューチュリティS.jpg

■第77回朝日杯フューチュリティステークス(GI)枠順
2025年12月21日(日)5回阪神6日 発走時刻:15時40分

枠順 馬名(性齢 騎手)
1-1 グッドピース(牡2 西村淳也)
2-2 ホワイトオーキッド(牝2 北村友一)
3-3 エコロアルバ(牡2 松山弘平)
3-4 コスモレッド(牝2 藤岡佑介)
4-5 ストームサンダー(牡2 岩田康誠)
4-6 タガノアラリア(牡2 F.ジェルー)
5-7 コルテオソレイユ(牡2 川田将雅)
5-8 カヴァレリッツォ(牡2 C.デムーロ)
6-9 スペルーチェ(牡2 三浦皇成)
6-10 ダイヤモンドノット(牡2 C.ルメール)
7-11 カクウチ(牡2 岩田望来)
7-12 アドマイヤクワッズ(牡2 坂井瑠星)
8-13 リアライズシリウス(牡2 津村明秀)
8-14 レッドリガーレ(牡2 吉村誠之助)
※出馬表・成績・オッズ等は主催者発表のものと照合してください。

繁殖牝馬は縦社会!? オークス馬・ユーバーレーベン 新米ながらボスに君臨【もうひとつの引退馬伝説】

【華麗なる武一家】"サイレンススズカ" 武豊「自身が乗った中で一番強い馬」

【クセ強名馬】二冠馬エアシャカール「アタマの中を見てみたい」武豊も思わず激怒!?