【同世代対談Vol.4】岩隈久志×川﨑宗則「野球は楽しくプレーするもの」

野球

2021.1.4



プロ野球界には同学年に超一流選手が集う稀有な世代が存在する。松坂大輔を筆頭に数々の日本代表を輩出した1980年生まれの「松坂世代」。岩隈久志などMLB選手4人を輩出しイケメン揃いの「81年世代」。

田中将大や坂本勇人など今の球界を牽引する「88年世代」。奇しくもこの3世代の選手はこのオフ人生の転機を迎えた。同級生が再会を果たした時、戦友にだからこそ言える、話せる真実が明らかになる。

【動画】岩隈「家族の存在が大きかった」川﨑「いつでも辞めますよ」~81年世代『岩隈久志×川﨑宗則』今だから話せること~

投手と野手、異なるポジションの選手でありながらまるで写し鏡のように同じ経歴を歩んだ岩隈久志と川崎宗則。若くしてチームの主力となり、侍ジャパンの一員となり、そして同じ年に海を越えてメジャーリーガーになった。

そんな2人だったが、今オフで岩隈が現役を去り、現役を続ける川崎と別の道を行くことになった――今だからこそ話せるお互いへの思いを語ってもらった。


それぞれ葛藤を抱えながら迎えたメジャー1年目

WBCから3年後の2012年、岩隈と川崎はお互いに海外FA権を行使してメジャーへ移籍。お互いに所属したのはシアトル・マリナーズ。尊敬する先輩であるイチローと同じユニフォームを着ることになったが、メジャー契約を勝ち取った岩隈とは異なり、川崎はマイナー契約しか獲れなかった。それだけに当時は焦りや不安があったという。

「スプリングキャンプが始まるときとかは同じ境遇の選手たちばかりでロッカールームもパンパンなんだけど、日程が消化されていくうちに1人減り、また1人減りという感じでどんどんクビを切られていく。だから監督に呼ばれるといよいよ来たかって感じで身構えてね」

今はチームメイトでも、明日にはどうなるかわからない。文字通りのサバイバルで神経をすり減らしていたという川崎だったが、心の支えになっていたのが岩隈と岩隈の家族の存在だったという。

「お互いの家が近いから、ヒーちゃん(岩隈)の家にはよく行ったけど、そこでヒーちゃんの子供たちと遊んで。ウチにはまだ子供はいなかったから新鮮で。ヒーちゃんとこの長男がまだ3歳とかだったから、仮面ライダーごっことかして遊んで、癒されたな」

当時の川崎がピリピリとした気持ちになっていたことに岩隈は「全く気が付かなかった」というが、一方で岩隈もメジャーリーガー1年生。

先発投手としてローテーションを確保したわけでもなければ、日本とは異なるボールやマウンドの角度などに対応していかなければならない。お互いにいっぱいいっぱいな時期がこの頃だという。岩隈が当時を振り返ってこう語った。

「お互いに野球のことでいっぱいいっぱいだったからかな? 一緒に食事をしている時とかお互いの家にいるときとかは野球の話は一切なし。お互いの顔を見て、リラックスしたかったのかもね」



2人がたどり着いた境地「野球は楽しくプレーするもの」

日本球界でそれぞれスター選手として活躍した実績をかなぐり捨て、ともにメジャーへゼロからのスタートとなった2人。1年目のキャンプではそれまでとは考えられないような苦境に立たされることになったが、それでも2人は何一つ後悔しなかったという。

そもそもこの2人がなぜ、メジャーを目指したのか。川崎が当時を振り返りながら教えてくれた

「僕はホークス、ヒーちゃんは楽天で野球をやってきたけど、どんどん下の選手が増えてくるの。そうなると後輩の見本にならなければとか、シンプルに野球を楽しめなくなるんですよ。だからアメリカに行ったことでもう一度、野球に向き合いたかったというのがあるんだと思うな」

この2人に共通しているのが、「野球は楽しくプレーするもの」という思い。プロという厳しい世界に身を置いていても、野球を心の底から楽しみ、プレーする。

ある意味スポーツの原点とも言うべき考えを持っているからこそ、あえて厳しい環境となるアメリカを選び、野球をもう一度見つめなおしたのだろう。

今季、現役引退を決意した岩隈はその決断を下してすぐに川崎に連絡したというが、その時の川崎の返事が二人の野球に対する考え方を物語っている。

「ヒーちゃんには『よくやった!』って言ったよ。よく投げていたもんね。よくさ、野球選手が現役を辞める時、悲壮感みたいなのが漂っているけど、僕は辞めるって全く悪いことじゃないと思っているの。次のステージに行けるし、そこで頑張ればいいじゃんって」

2021年、岩隈は解説者として新たな道に進み、川崎は現役選手として40歳のシーズンを迎える。置かれている環境は違えど、大好きな野球を心の底から楽しむという2人の姿勢は何一つ変わらない。

やっぱり、この2人はよく似ている。1時間ほどの対談を終えた後、改めてそう感じた。


文/五十嵐宇宙