なでしこジャパン、五輪初戦を引き分けスタートで貴重な勝点1を獲得

サッカー

2021.7.22


なでしこジャパン Photo by Masashi Hara/Getty Images


 東京オリンピックで女子サッカーが7月21日に始まり、なでしこジャパン日本女子代表は札幌ドームで行われたグループステージ初戦で2大会連続銅メダル獲得のカナダ女子代表と対戦し、1-1で引き分けた。優勝候補筆頭のアメリカがスウェーデンに敗れて初日から波乱の展開の女子サッカーで、なでしこジャパンは貴重な勝点1を手にして、金メダル獲得への戦いをスタートさせた。

 2011年女子ワールドカップに優勝し、2012年ロンドンオリンピックでは銀メダルを獲得した日本女子代表だったが、2016年リオデジャネイロオリンピック出場を逃して、今大会は9年ぶりの五輪の舞台になる。高倉麻子監督の下で2016年4月から世代交代を図りながら世界の頂点を目指してきた。

 しかも、昨年からは新型コロナウィルス感染症の世界的流行を受けた中で、思うような相手との国際試合ができないなど制限も多かったが、4月から6月にかけてウクライナ、メキシコなどと親善試合を実施。

6月17日の五輪メンバー決定後は同月下旬から合宿を行い、7月14日には京都の亀岡で五輪初戦のカナダ(FIFAランク8位)や第2戦のイギリス(同6位)を想定してオーストラリアとの強化試合を行った。

FIFAランクで10位の日本に対して8位のオーストラリアを相手に、守備を確認しながら1-0で勝利。15日から初戦開催地の札幌に入り最終調整を進めてきた。

 そして迎えたオリンピック本番だったが、日本は大会初戦の硬さもほぐれない試合開始6分で失点を許した。

カナダは右サイドバックから縦へつないだパスをFWニシェル・プリンス選手が受けて深い位置まで切り込み、ゴール前にマイナスのボールを入れると、2列目から走り込んだFWクリスティン・シンクレア選手が受けてシュートを放つ。

一度は左ポストに弾かれたが、38 歳のエースFWは跳ね返りを捉えてゴールに押し込み、先制を奪った。シンクレア選手にとっては代表戦300戦目で通算187ゴール目、五輪は4大会目で通算15戦12ゴール目となった。

カナダは2012年大会、2016年大会と2大会連続で銅メダルを獲得した強豪で、シンクレア選手をはじめ、代表戦出場数が50試合以上という国際経験豊富なメンバーが22人中15人という顔ぶれを揃えてきた。

「今回は、メダルの色を変えたい」と話していたベブ・プリーツマン監督の意気込みがうかがえる布陣だ。

中でも主将も務めるシンクレア選手を、この日の試合では従来のトップではなく2列目に配置。DF熊谷紗希選手やDF南萌華選手らが固める日本の最終ラインの呪縛から逃れて、2列目から前線へ飛び出してクロスに合わせるなど、日本のゴールを脅かす狙いが見えた。

そして、この先制はまさにその思惑通りの1点となった。

日本はいきなりのビハインドになり、MF長谷川唯選手やMF塩越柚歩選手を中心に組み立てを試み、前半途中には前線の選手のポジションを入れ替えて仕掛けを図る。

DF清水梨紗選手が攻め上がってシュートを狙う場面も作ったが、大きな得点機を作るには至らずに1点ビハインドのまま、前半を終えた。

思うように自分たちのリズムでプレーできなかった前半を受けて、「人の距離を調整しよう」(高倉監督)と選手間の距離を意識して残り45分に入ると、後半から登場したFW田中美南選手が試合再開直後に大きなチャンスを作る。

長谷川選手のゴール前へのボールにペナルティエリアに走り込んで受けると、詰め寄ってきたGKステファニ・ラベ選手に倒されてPKを獲得。田中選手自らキッカーを務めたが、GKラベ選手にブロックされて、同点の機会を逃した。


PK失敗の田中美南 Photo by Masashi Hara/Getty Images


日本は60過ぎに、オーストラリア戦でも前線でチャンスを作ったMF遠藤純選手をベンチから送り出し、さらに75分過ぎにはMF杉田妃和選手を投入して得点機を探る。

カナダも左サイドの攻撃からプリンス選手がペナルティエリアに持ち込む場面を作り、日本のゴールに迫り、一度はゴールネットを揺らされたが、オフサンドの判定でノーゴールとなった。だが、70分過ぎには中盤の選手を下げてFWディアン・ローズ選手を送り込み、追加点を探る動きを見せた。

しかし、次に試合を動かしたのは日本だった。

84分、右サイドの長谷川選手から相手DFの裏を狙ったロングボールが繰り出されると、岩渕が追いすがる相手DFを振り切り、右足で捉えると交代出場したGKケーレン・シェリダン選手の動きを見ながら冷静に浮かせてゴールネットを揺らした。

代表戦79戦目で5連続となる通算37得点目の一撃が、チームを救った。

チーム最年少の19歳で臨んだ2012年ロンドン大会から、自身2度目の今大会では10番を付けてチームをけん引する。ドイツやイングランドのリーグなどで磨いてきた高い技術力と冷静な判断力が光った得点だった。

岩渕選手は、「なんとか勝点1につながるゴールを獲れてよかった」と安堵の表情を浮かべた。

「頼もしい」岩渕選手の同点弾


同点弾を決めた岩渕真奈 Photo by Masashi Hara/Getty Images

 猛暑の中、中2日で連戦が続く大会で、初戦で勝点を落とさずに波に乗れるかは、大会を勝ち進む上で重要な要素だ。カナダを相手に日本が手にした勝点1は小さくない。

チームを率いる高倉監督も、「なかなかチャンスを多く作れない中で、あのチャンスに決めてくれた。非常に頼もしい」と称賛。強敵との初戦を終えて「勝点1をプラスに捉えて次に進んでいきたい」と話した。

日本サッカー協会の田嶋幸三会長も試合後、「強豪のカナダに対して勝点1位をとれたことは非常に大きい。必ずしも調子が良かったわけではないように感じたが、良くない時にしっかりと勝点を獲れるということは、チームに力がある証」と指摘して、「1次リーグ突破につながる非常に大きな勝点1だった」とコメントし、初戦の奮闘を評価した。

初日を終えて日本の戦うE組では、イギリスがチリに2-0で勝利して首位に立ち、日本とカナダが勝点2差で追う。チリは勝点ゼロで4位スタートとなった。

日本は24日の第2戦でイギリスと再び札幌ドームで対戦し、27日のグループステージ最終戦は宮城に移動してチリと戦う。

各組上位2位までと3位の中で成績上位の2チームが7月30日の準々決勝へ進出する。準決勝は8月2日、3位決定戦が8月5日に行われ、決勝は8月6日に東京の国立競技場で行われる。

日本はカナダ戦では出鼻をくじかれる形で早々に失点を許したが、立ち上がりの失点は避けて試合の流れを掴みたい。

失点の起点となったクロスボールへの対応や相手に良いボールを出させないような動き、選手が互いのサポートをしやすい距離感など、暑さの中での戦いで体力消耗とのバランスもあるが、チェックしたい部分だろう。


取材・文:木ノ原句望