浦和と川崎 Jリーグ開幕前哨戦で見えたもの

サッカー

2022.2.14


富士フィルムスーパーカップで勝利を収めた浦和レッズ Photo by Koji Watanabe/Getty Images

Jリーグ2022シーズン開幕の前哨戦となる富士フィルムスーパーカップで勝利を収めた昨季天皇杯優勝の浦和レッズと、敗れたJリーグ王者の川崎フロンターレ。

リーグ戦の本格スタートを一週間後に控えて、今季初の顔合わせで見えたものはなにか。

2月12日(土)、横浜の日産スタジアムで行われた毎年恒例のスーパーカップ公式戦で、浦和はFW江坂任選手の2ゴールでリーグ3連覇を狙う川崎フロンターレに2-0で勝利し、今季最初のタイトルを手にした。浦和のスーパーカップ優勝は16年ぶりだ。

シーズン開幕一週間前に毎年行われる公式戦は、試合の勝敗は当然ながら、チーム全体の仕上がり具合や新加入選手のチームへのフィット感など注目ポイントがいくつかある。その年の序盤やシーズン展望を予想する上で参考になる要素が少なくない。

補強では、川崎は札幌から獲得したタイ代表MFチャナティップ選手、横浜FCから加入のMF瀬古樹選手の外は大卒や高卒、下部組織から昇格した若手中心の8人。

一方、ベテラン選手の引退や移籍が相次いだ浦和は、MFダヴィド・モーベルグ選手やMF岩尾憲選手、DF犬飼智也選手らがそれぞれスパルタ・プラハ、徳島、鹿島から加入するなど、新卒を含めて13人と新加入は多い。

この試合で新顔の先発は、川崎はチャナティップ選手、浦和は岩尾選手と大宮から加入のDF馬渡和彰選手だった。

チャナティップ選手は入国後の隔離期間の影響で合流が遅れた影響か、周囲との連携はまだこれからという様子。ポジションを左サイドから中盤に移して攻撃的MFとしてプレーした後半は、少し攻撃に絡んでゴールに向かう場面もできたが、チームに十分なインパクトを与えるには至らなかった。

存在感を発揮したのは浦和の岩尾選手で、昨季で引退した阿部勇樹氏から背番号22を受け継いだMF柴戸海選手や、左サイドでプレーしたMF伊藤敦樹選手、同サイドバックの馬渡選手ら周囲との連携もよく、チームは中盤が安定。川崎との中盤の戦いで優位に立つことができた。

徳島をJ1昇格に導いたリカルド・ロドリゲス監督の下で4シーズンを過ごした岩尾選手は、浦和の今季の戦いに期待を抱かせる新天地でのデビュー戦で、「チームとして機能したのは良かった。細かい修正はあるが、この段階でここまでできているのはポジティブ」と、手ごたえを口にした。

ハードワークがもたらした得点

選手個々の活躍もさることながら、大前提となる両チームのコンディション面での違いも大きかった。

浦和のロドリゲス監督は、1月17日からの3週間の沖縄キャンプを含めた準備に、「フィジカル的に非常によい状態。まだ進化の途中だが、未来の浦和の顔をここで披露することができると思う」と試合前日の会見でも手ごたえを口にしていたが、チームはその通りのパフォーマンスを披露した。

積極的に相手にプレッシャーをかけて激しく競り合う姿勢を試合を通じて維持。昨季にはなかった一面で、相手に思うようなプレーをさせなかった。

一方の川崎の選手の動きは鈍く、頭と体の反応がまだしっかり一致していないという印象を受けた。

「すべての面で良い状態でなければフロンターレには通用しない。相手にダメージを与えられるような試合をしたい」としていた浦和のスペイン出身指揮官だが、試合と勝利への貪欲さもストレートに表現していた。

チームの中でも動きの切れが光ったのが、先日の日本代表のワールドカップ最終予選でも好調だったDF酒井宏樹選手で、積極的に仕掛けて右サイドからチャンスを作った。

前半7分の先制点もその一つ。右サイドのスローインを競り合い、こぼれたボールに酒井選手が反応。ボールを奪うとそのまま相手の間を抜けてクロスを上げると、ニアサイドに走り込んだFW江坂任選手が右足で合わせてゴールネットを揺らした。


浦和レッズ・江坂任 Photo by Hiroki Watanabe/Getty Images

浦和のハードワークは後半になっても落ちず、81分の江坂任選手の2点目も、FW明本孝浩選手が相手にプレッシャーをかけてボールロストを誘い、素早く攻撃に転じたところから始まった。

中盤で奪ったボールを受けた伊藤選手は前線へ送ると、これに鋭く反応した明本選手がペナルティボックス手間まで持ち上がり、DF車屋紳太郎選手を背負って江坂選手へパス。江坂選手は冷静に川崎DF谷口彰悟選手をかわして左足を鋭く振り、ゴールに突き刺した。

明本選手の中盤でのプレスと攻撃力、伊藤選手の適格なフィード、1月17日からの日本代表候補合宿に参加していた江坂選手の動きの良さと冷静な判断も光った。

ロドリゲス監督は、「選手たちが非常によく戦ってくれた。欲を言えば、敵陣近くでボールを持って攻める時間をもっと長くしたいが、選手たちの頑張りがこの結果をもたらしてくれた」と今季初タイトルに満足感を示した。

開幕へ見えた課題

川崎は、攻守で良さを見せられなかった。

1月17日の始動後、24日から沖縄で合宿を置きなってきたが、この試合間近になって選手とチームスタッフに相次いで新型コロナ感染者が出たことで練習に予定変更が生じるなど不運な面もあった。

失点場面では、昨季終盤の怪我で戦列から離れているDFジェジエウ選手の不在が改めて浮き彫りになる形にもなった。攻撃でも、先制点を許した後はボールを保持していたものの、仕掛けが少ない展開で、物足りなさが残った。

チームは昨季まで攻守両面で広範囲で貢献度の高かったMF旗手玲央選手(セルティック)や、抜群の突破力が魅力で攻撃のアクセントになっていたMF三笘薫選手(サンジロワーズ)を昨季途中に移籍で手放した。その穴を補うだけのプレーは、この日はまだ見られなかった。

DF谷口彰悟選手は、「チャンスの見極めや相手を引き出す動きがまだまだできていない」と振り返り、MFチャナティップ選手も「自分のプレーが硬かった。周りを見過ぎて相手を見れなくなった」と振り返り、札幌で5シーズン活躍してきたタイ代表MFも新天地での不慣れなところがあったことを打ち明けた。


川崎F・チャナティップ(右) Photo by Kaz Photography/Getty Images

試合前から「力試しの場」として開幕へ向けてチームの現在地を図る機会と受け止めていた川崎の鬼木監督は試合後、「強い気持ちをもって挑んできた相手に受けてしまった。球際で(ボールを)こぼして持って行かれるシーンが本当に数多くあった」と指摘。その修正を試合中にできなかった点や、自分たちからアクションを起こす動きが少なかった点を課題に挙げた。

その一方で、川崎指揮官は新戦力のチャナティップ選手の起用で「公式戦で覚悟を持ってやってくる相手に何ができるか、評価ができた」と話し、より具体的な戦いのイメージを手にしたことを示唆した。

鬼木監督は、「選手たちは自分たちが持っている100%で戦ってくれた。それで見えてきた課題がある。開幕に向けて修正するための試合になった」と語った。

川崎は今季リーグ3連覇とACL(AFCチャンピオンズリーグ)初制覇を目標に掲げているが、指揮官は全てプラスに受けとめて目標達成へ活かすつもりだ。どこまでプレーを改善し、磨きをかけることができるか。

Jリーグ開幕戦は、川崎は2月18日(金)にFC東京をホームに迎えて「多摩川クラシコ」での対戦。浦和は翌19日(土)にアウェイで昇格組の京都戦に臨む。

今季はW杯カタール大会開催の関係でリーグ戦は11月5日までとなり、その間には両チームも出場するACLもある。

シーズンインはもうすぐだ。


取材・文:木ノ原 句望