サッカー日本代表 ベトナム戦で浮かんだ課題

サッカー

2022.4.2


2022 FIFA W杯 アジア最終予選 森保一監督

 サッカーのワールドカップ(W杯)カタール大会への出場を決めた日本代表が3月29日、アジア最終予選でベトナム代表と1-1で引き分け、7勝1分2敗のB組2位の成績で最終予選を終えた。

格下相手に勝利を手にできなかっただけでなく、選手層に不安を覚える内容で、本大会まで約8ヵ月となってチームの底上げという課題が改めて浮き彫りになった。

 予選突破を決めて、今年11月21日に開幕する本大会へ、最終戦のベトナムとの一戦から新たな段階に入った日本代表だったが、メンバーを大きく入れ替えたチームが機能せず、満足のいく結果を得ることはできなかった。

 グループ2位以内確定でカタール行きの切符をつかんだシドニーでのオーストラリア戦から移動を含めて中4日、1勝8敗で6チーム中6位のベトナムに、日本は先発9人を入れ替えて臨んだが、連携を欠いたプレーで前半19分に失点。CKからゴール前でグエン・タイン・ビン選手に合わされた。

 約9カ月ぶりの試合出場となったGK川島永嗣選手は、「いいボールがはいって、マークがはっきりつけていなかった。メンバー変わったなかで、そういうずれは少なからずあるかと予測していたが、そこにも対応できなかった」と振り返った。

 それまで出場機会がほとんどなかった選手中心に編成された先発で、アピールの意識が強すぎて空回りした格好だ。失点場面ではマークが甘くなり、攻撃でもボールを持ってから考えて動くのでプレーのリズムが悪かった。アピールが主眼となって、守備を固める相手に対して崩し方に工夫も見られず、チームとして効果的な攻撃はできなかった。

 一度に多くの選手を変えすぎて、チームの軸が不在だった。キャプテンのDF吉田麻也選手(サンプドリア)をはじめ、前回ロシア大会を経験したMF柴崎岳選手(レガネス)やMF原口元気選手(ウニオン・ベルリン)、ゴールには川島選手もいた。

だが、前線にはFW上田綺世選手(鹿島)、MF久保建英選手(マジョルカ)、MF三笘薫選手(サンジロワーズ)、MF旗手玲央選手(セルティック)、左サイドバックにはDF中山雄太選手が入り、東京五輪でプレーした若手が中心。DF谷口彰悟選手(川崎)、DF山根視来選手(川崎)を含めて、チームとしての連動性は乏しかった。

 後半開始からMF伊東純也選手(ヘンク)を投入して4-3-3から4-2-3-1へ陣形を変更。伊東選手のスピードのあるドリブルで右サイドを深くえぐるプレーが加わり、全体のプレーに方向性が備わって動きが活性化した。

後半9分には、吉田選手のインターセプトから久保選手を経由して原口選手がシュート。相手GKが弾いたところに、ゴール前まで顔を出した吉田選手が鋭く反応して押し込んだ。

 その後、60分過ぎに交代でMF南野拓実選手、MF田中碧選手、MF守田英正選手が久保、柴崎、原口の3選手に変わってベンチから入り、全体の連携が滑らかになり、相手ゴールに迫る場面も増えた。

後半25分には田中選手、同43分には上田選手がゴールネットを揺らしたが、前者はVARチェックで味方のハンドがあったとして、後者は得点者がオフサイドポジションだったとしてゴールは認められなかった。

「勝って終わりたかった」と吉田選手は渋い表情だった。「メンバーを大幅に変えたのでチグハグ感は出ると考えて、そこを含めてチャレンジという位置づけで臨んだ。それでも前半は悪すぎた。得点するまで時間がかかりすぎた」と反省の弁が続いた。

代表3戦目で初めて90分プレーした三笘選手も、「自分のプレーにはまったく納得していない。ゴールに絡むプレーができず、失点後も単調で相手を崩せずに課題が残った」と振り返り、田中選手は、「どんな相手でも勝つことが大前提。そのなかで内容を突き詰めないとならない」と言った。

 シュートは相手の1本に対して日本は23本を放ったが、最後まで追加点が遠かった。連続無失点試合は5で止まり、連勝も6でストップした。グループ1位には、オーストラリアに勝ったサウジアラビアが返り咲いた。

コロナ禍による入場制限撤廃後の初試合で、4万5千人近い観客がスタジアムに足を運んだが、日本はホームのファンを前に勝利を手にできなかった。同時に、本大会の組合わせ抽選会のポット分けの基準となるFIFAランキングを勝利で上げるチャンスを逃した。

限られた準備時間、6月にキリンカップなど4試合

 予選突破も決まって、ベトナム戦では新たな戦力の台頭や攻撃の形などが期待されていたが不発に終わった。もっとも、先発11人中9人を経験の浅い選手を中心にすれば、前半の展開は当然とも言える。

 カタール大会への予選は、コロナ禍の影響を受けて日程変更が繰り返され、昨年9月からの国際マッチデー期間はすべて最終予選に充てられた。

結果として、親善試合の機会が失われた。さらに、最終予選序盤で2敗を喫して勝点を落とせない試合が続いたこともあって、予選の間に多くの選手を試す余裕もなくなった。そのしわ寄せが、ベトナム戦前半に表れた格好だ。

 問題は、最終予選を戦ってきた主力組と、出場機会に恵まなかった選手とのプレーの質のギャップで、ベンチの層の薄さだ。

 ベトナム戦後、森保監督は前半について「選手たちは積極的にプレーしてくれていたが、互いのプレーのイメージを合わせることができず、チームとして機能する点では難しかった」と振り返り、本大会を睨んで「もっとチーム全体として、誰が出ても相手に隙をつかれずに、やろうとすることをよりスムースに発揮できるように、選手層の幅を広げなければならない」と厳しい表情で語った。

カタール大会で初のベスト8入りを目指す日本だが、世界の強豪が集結する1ヵ月の大会を勝ち進むためには、主力11人とわずかな選手だけでは戦えない。細かい部分でのレベルアップが問われ、大会メンバー23人の誰が出てもそん色がない、選手層の充実が求められている。

だが、11月の大会までの強化試合は6月と9月の6試合ほどに限られる。6月には国内での親善試合2試合(2日、6日)とキリンカップ2試合(10日、14日)が実施される予定(対戦相手は未定)で、チーム力アップへ貴重な機会になることは言うまでもない。

森保監督はベトナム戦後、「6月から親善試合がある。もう一度選手の幅を広げて、チームの底上げをやっていきたい」と語った。

W杯3大会を経験してきた川島選手は、「自分たちがどういうプランを持って、どういう質でプレーするのか、より課題を持ってやらないとならない」と話した。

 吉田選手は、本大会へ向けて「今から急激にすごい選手が出てくることは考えづらい。今あるベースにどれだけ積み上げられるか。

(大会メンバー)23人の中でいろんな武器を手にしておかないとならない。選手みんなが特長を出して、『こういう時にはこいつを使いたい』と監督が思えるように、結果を出さないといけない」と語った。


取材・文:木ノ原句望