【オークス】スターズオンアース 偉大なる血に導かれるように伸びた二冠制覇
2022.5.22
2022オークス スターズオンアースが優勝 写真:東京スポーツ/アフロ
第83回オークス回顧
「この馬の家族はオークスが大好き」――
オークスの最終追い切り後、スターズオンアースに初めて騎乗したクリストフ・ルメールは会見でこう答えた。
その際、「面白いことを言うなぁ」と筆者は思ったが、スターズオンアースの血統を見ると、なるほど、ルメールの言いたいことがよくaわかる。
スターズオンアースの祖母であるスタセリタは現役時代、GIを6勝した名馬で3歳時にはルメールを背にしてフランスオークスを制している。
そして、スタセリタの娘でスターズオンアースの叔母にあたるソウルスターリングも5年前にオークスを制している。この時も鞍上にいたのはルメールだ。
つまり、ルメールはこの一族のことをよくわかっているからこそ、「オークスが大好きな家族」と評したのだろう。
混戦模様の桜花賞を制し一躍、世代の頂点に立ったものの、人気薄での勝利だっただけにどこかにスキがあるのでは?と勘繰られていたスターズオンアースに対する思いの強さ、能力に対する絶対の自信がこのコメントにはあった。
人気薄での激走により、次走は燃え尽きてしまうのかこの20年、桜花賞を4番人気以下で制した馬はオークスで[0・0・1・4]と勝負にならないケースがほとんどだった。
それが関係したかは定かでないが、今年のオークスでもスターズオンアースは1番人気をサークルオブライフに譲り、桜花賞時のパートナー、川田将雅が騎乗することになったアートハウスに続く3番人気に留まるなど思いのほか人気にならなかった。
桜花賞を制したとはいえ、展開がハマっただけのフロック勝ちとでも思われたのか、それとも大幅な距離延長に不安を抱いたか......いずれにしても、レース直前に付けられた単勝オッズは6.5倍の3番人気と桜花賞馬にしてはあまりに低い評価でスターズオンアースは二冠制覇に臨むことになった。
前日までの雨がウソのように晴れ渡ったこの日の府中。出走馬たちは15時過ぎにパドックへと姿を見せたが、その中でスターズオンアースはというと、他の馬たちに負けず劣らずキビキビと歩き、返し馬も無難にこなしていった。
好気配な様子をひけらかすようにパドックを周回するわけでもなければ、勝利を確信したかのような堂々とした返し馬とも無縁。
あくまで謙虚でストイック―― そんな控えめな振る舞いが妙に印象に残るほどだった。
サウンドビバーチェが放馬したことで発走が遅れ、普段以上に輪乗りを経てから迎えたスタートではサークルオブライフが出遅れるというアクシデントがあったが、スターズオンアースは五分のスタートを切り、外から中団に付ける形に。
逃げたニシノラブウインクが作るペースにしっかり対応する形で折り合いをつけていく様子が印象に残った。
そうして迎えた直線。サークルオブライフが最後方から大外に持ち出して突き抜けようとする中、先頭に立とうとしたのはアートハウスだった。
絶好の手応えで逃げ粘るニシノラブウインクを捕まえたかに見えたが、残り200mの時点で脚色がいっぱいに。替わって浮上したのが10番人気の伏兵、スタニングローズだった。
ローズバドやローズキングダムなど、コンスタントに活躍馬を輩出しながら、なぜかクラシックに縁がないことでも知られる「薔薇一族」の血を引く彼女が一族の悲願を果たすべく先頭に立とうとした瞬間、外からあの馬が飛んできた。
"家族揃ってオークスが好きな"スターズオンアースだ。
残り200mを過ぎたあたりからスターズオンアースはまるで祖母や叔母らの一族に導かれるようにストライドを大きく広げて先頭に立つと、追いすがるスタニングローズや内から懸命に伸びるナミュールらを振り切って、先頭でゴールして堂々の二冠達成。文句なしの世代の女王に君臨した。
「ありがとうございます!よっしゃ!!」とインタビューでもいの一番に喜びを伝えたルメールは「1600mも勝って2400mも勝ったので、2000mも勝てると思います」と、早くも3冠目となる秋華賞を見据えたコメントを残すなど、スターズオンアースの未来に大きな期待を寄せていることがうかがえた。
ちなみにスターズオンアースのように桜花賞を4番人気以下で制してオークスを勝ったという二冠馬は1964年のカネケヤキ以来、58年ぶりになるという。
デビューから常に世代のトップに立ち、その勢いのままクラシック二冠を達成する牝馬が多い中、彼女のように叩き上げで二冠を制する馬は本当に珍しい。
この20年で牝馬三冠を達成した馬はスティルインラブ、アパパネ、ジェンティルドンナ、アーモンドアイ、デアリングタクトと5頭いるが、どの馬も今年のスターズオンアースのように叩き上げで勝ってきたというタイプではない。
それだけにもし、スターズオンアースが秋華賞を制して、牝馬三冠を達成した際にはどんな名牝として日本競馬史に名を残すのか...... 少々気が早いが、そんなことまで想像してしまった。それほどまでに強いレースを満天下に見せてくれたのが今年のオークスである。
■文/福嶌弘
第83回優駿牝馬(オークス)(GI)着順
5月22日(日)2回東京10日 発走時刻:15時40分
着順 馬名(性齢 騎手)人気
1着 スターズオンアース(牝3 C.ルメール)3
2着 スタニングローズ(牝3 D.レーン)10
3着 ナミュール(牝3 横山武史)4
4着 ピンハイ(牝3 高倉稜)13
5着 プレサージュリフト(牝3 戸崎圭太)8
6着 ルージュエヴァイユ(牝3 池添謙一)5
7着 アートハウス(牝3 川田将雅)2
8着 ニシノラブウインク(牝3 三浦皇成)14
9着 エリカヴィータ(牝3 福永祐一)6
10着 ベルクレスタ(牝3 吉田隼人)9
11着 ライラック(牝3 横山和生)12
12着 サークルオブライフ(牝3 M.デムーロ)1
13着 ウォーターナビレラ(牝3 武豊)7
14着 シーグラス(牝3 松岡正海)16
15着 ラブパイロー(牝3 野中悠太郎)17
16着 パーソナルハイ(牝3 吉田豊)11
17着 ホウオウバニラ(牝3 横山典弘)15
除外 サウンドビバーチェ(牝3 石橋脩)
※結果・成績・オッズ等は主催者発表のものと照合してください。