【日本ダービー】デシエルトの激走に期待 69歳初挑戦の安田調教師「ひと泡吹かせてくれると思っている」

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2022.5.27

日本ダービー2022 ~HEROになるために~

3歳馬7522頭の頂点であり、競馬界最高の栄誉である『日本ダービー(GI)』。

このタイトルを手にするために今年も人馬ともに熱い戦いを繰り広げる。

その熾烈な戦いを勝ち抜いて夢の舞台へエントリーしてきた各馬に秘められたエピソードや関係者たちの知られざる想いに迫った。

デシエルトで調教師として初のダービーへ挑む安田隆行調教師。数多くのGI馬を手掛け、騎手としてダービーを制した名伯楽が定年間近に出会った優駿との歩みに迫る。

名伯楽の意外過ぎるエピソード

「僕自身、管理馬を初めてダービーに出すのですごく緊張しています」――今年で69歳になった安田隆行はインタビューでこう語った。

安田隆行と言えば騎手時代、トウカイテイオーに騎乗して1991年のダービーを制覇。

当時38歳、騎手生活20年目にして掴んだ栄冠はトウカイテイオーの人気も相まって、当時は大きな話題となった。

「安田隆行=トウカイテイオーは切っても切り離せない」と、当時のパートナーとの思い出を語る安田。

そんな父を見て育ち、ホースマンとなったのが長男の景一朗。現在は調教助手として18年間もの長きにわたり、父の厩舎を支える存在となっている。

調教師と調教助手というタッグで安田父子はこれまでにロードカナロアやカレンチャンといった世界に名だたるスプリンターを育て上げてきたが、意外にもクラシック、それもダービーへの出走馬はただの1頭も出走させたことがなかった。

父の隆行に至っては調教師になってから28年間もダービーとは無縁だったという。

キャリア通算900勝、国内外でGIを20勝も挙げた名伯楽とは思えない意外なエピソードに驚く関係者も多く、安田自身も「まだダービー出たことなかったの!?」と周囲から驚かれたり、景一朗にとっては「夢のレース」になっていたりするほどだった。

そんな2人は今年のダービーに若葉Sを制したデシエルトで初めて臨むことになった。定年が間近に迫った父の隆行にとってはもしかしたらこれが最初で最後のダービー挑戦になるかもしれないという。

ひとつのチャンスが潰えた中で現れた、新たな希望

とはいえ、この親子。実は1年前にもダービー出走に向けて大きな期待を持つ3歳馬を管理していた。

その馬とはズバリ、ダノンザキッド。2年前にホープフルSを制して一躍クラシック候補として名乗りを上げるも、ダービーを目前にしてまさかの骨折。戦線離脱を余儀なくされた。

「競馬のむずかしさをしみじみと感じた」と、安田は当時を振り返ったが、定年までのカウントダウンが刻一刻と迫っていた。その中で現れたのがデシエルトである。

父は皐月賞馬ジオグリフと同じドレフォン、そして母は2015年にダービーを制したドゥラメンテの全姉という良血馬。

デビューからとんとん拍子で連勝を飾り、3勝目に挙げたのは皐月賞トライアルの若葉S。

本番はあえなく16着に敗れてしまったが、獲得賞金によってダービー出走は可能に。安田にとっては69歳にして初めてのダービー挑戦が実現した。

管理馬の初めてのダービー挑戦を前に安田は「これまでダービーに縁がなかったので、今回は本当に出走させたい。スタートさえまともに出てくれれば、ひと泡吹かせてくれると思っているし、期待したい」と胸を張ってみせた。

隆行、そして景一朗の親子で挑めるダービーは残すところあと2回。「その時(父の定年)を迎える時に後悔しないよう、みんなで頑張っていきたい」と息子・景一朗は語る。

親子で挑む初めてのダービー、デシエルトの激走に期待せざるを得ない。


■文/福嶌 弘