【マイルCS】セリフォスの異次元の末脚 新たなるマイル王が誕生

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2022.11.21


2022マイルCS(GI)セリフォスが優勝 写真:日刊スポーツ/アフロ

第39回マイルCS回顧

 今年のマイルCSの最後の直線、セリフォスが通った進路にはまるでスポットライトが当たっているかのようだった。

 父ダイワメジャー譲りの豊かなスピードを見せ、デビュー当時から非凡なセンスを感じさせた同馬。それだけにデビューから一貫してマイル戦にこだわったローテーションを組んで、2戦目の新潟2歳Sで重賞初制覇。

出遅れながらも上がり3ハロン32秒8という末脚を披露して前を行く馬たちを撫で斬ってみせた。

 その後もデイリー杯2歳Sを制するなど、早くからそのポテンシャルの高さは発揮されていたが......ことGIになると勝てなかった。

無傷の3連勝で迎えた朝日杯FSは1番人気に支持されたが、5番手から一度は先頭に立ったものの、外から伸びてきたドウデュースに屈して2着。明け3歳緒戦となったNHKマイルCも1番人気に推されたが、内を突いて伸びてはいたが4着止まり。

 さらには古馬を相手にする安田記念にも果敢に挑んだが、ここでも外から伸びて4着まで......と、GIになると持ち前の末脚が切れずに惜敗するケースが目立った。

2歳夏から一線級で走っていた馬だけにGIでのものとはいえ、この3連敗は成長具合に疑問符をつけるものでもあった。

「もしかしたら早熟馬なのでは?」という思いがファンの脳裏をよぎったことだろう。

 そして迎えたこの秋、セリフォスは富士Sに挑んだ。古馬相手に再び挑むだけでなくNHKマイルCで先着を許したダノンスコーピオンなどの3歳馬たちとも再戦することになったこの一戦、またも彼は1番人気に支持された。

結果こそ振るわなかったが、一貫したマイルへの強いこだわりに対し、ファンも支持を惜しまなかった。そんなレースでセリフォスは見事に勝利してみせた。

これまでのような先行、もしくは中団早めから抜け出すレース運びではなく、後方で脚を溜めて持ち前の末脚を爆発させるというレーススタイルにシフト。目の覚めるような末脚で突き抜けて重賞3勝目を挙げた。その走りは早熟どころか、ひと夏を越えて成長した姿そのものだった。

 そうして迎えたのが、今回のマイルCSだった。

 GI3勝を誇るソダシ、マイルGIでは馬券圏内を外したことがないシュネルマイスターらの実績豊富な古馬たちを中心に17頭がエントリー。実力馬が揃ったことで人気も割れ、ソダシとシュネルマイスターが1番人気を争うという構図に。

最終的にシュネルマイスターが1番人気に支持されたが、そのオッズは3.6倍。6番人気までの馬が単勝10倍を切るというオッズで混戦模様を呈していた。

 その中でセリフォスはというと単勝9.2倍の6番人気。GI馬4頭に人気を譲るのは仕方がないにしても、富士Sで破ったソウルラッシュにも人気にならなかった。

富士Sを制した当時の斤量よりも2キロ増えることでアドバンテージがなくなったと思われたのか、それともここまでのGIでの勝負弱さが不安視されたか......キャリア8戦でワーストとなる低評価にとどまった。

 迎えたレースはというと、ウインカーネリアンが好スタートを切るも、すぐさまピースオブエイト、ロータスランドがハナを取り合う流れに。

前半の3ハロンが35秒1という平均的なペースで流れたせいか、馬群はひと固まりのままで推移。その中でソダシは先頭から5番手前後の好位に付け、シュネルマイスターは中団に付けて脚を溜めていた。

 そうした流れの中でセリフォスが取った位置取りは12~13番手と、人気に推された馬たちよりもかなり後ろの位置取り。

流れが落ち着いている中でこのポジショニングは後ろすぎるように見えたが、前走の富士Sで見せたあの切れ味を思えばむしろベストポジションのはず......と、この日セリフォスに初めて騎乗した鞍上のダミアン・レーンは思ったことだろう。

レースが動いたのは600mを過ぎたあたり。落ち着いた流れに一石を投じるかのように外からファルコニアが仕掛け先頭に立つと、各馬も一気に仕掛けていき先行集団が固まった状態で最後の直線に入った。

この日の阪神競馬場の芝コースはインコースがだいぶ傷んできたとはいえ、内外を問わずにどこからでも伸びるという状況。それだけに各ジョッキーの選択が問われたが、レーンが選んだのはなんと大外だった。

距離をロスするのは百も承知。それ以上に最もトップスピードが伸びる馬場でセリフォスの末脚をフルに生かしたいという思いからパートナーを大外に持ち出したのだろう。

そんな鞍上の思いに、セリフォスは見事に応えてみせた。

残り200mを過ぎ、レーンの左鞭が入るとセリフォスは弾けるようにスピードを上げていった。最内で粘るロータスランドを捕まえにソダシやダノンザキッドが抜け出してくるのを横目に極上の切れ味で突き抜け、先頭でゴールを駆け抜けた。

上がり3ハロンのタイム33秒0はメンバー最速で、一緒に伸びていたソダシやダノンザキッドらが止まって見えたほど。

他の馬たちとは明らかに違うセリフォスの姿はまるで舞台上でスポットライトに照らされた主役のようにキラキラと光り輝いているように見え、新たなマイル王にふさわしいものだった。

「前と離れていたので届くのかと思ったが、直線に入って終いの脚を見せてくれて2、3完歩で届くと思った」とレースを終えた直後のインタビューでレーンはそう答えた。

4角を回った時点で12~13番手にいただけに直線で届くか不安に思うのは当然だが、セリフォスの異次元の末脚の前ではそんな心配すら杞憂だったと言えるだろう。

さらにレーンは「セリフォスはまだ若いし、どんどん成長しているし能力もある。だからどこに行っても大丈夫」と語り、インタビューを締めくくったが......新たなるマイルの王、セリフォスは今後、どの舞台で輝きを放つのだろうか。


■文/福嶌弘

第39回マイルチャンピオンシップ(GI)着順

11月20日(日)5回阪神6日 発走時刻:15時40分

着順 馬名(性齢 騎手)人気
1着 セリフォス(牡3 D.レーン)6
2着 ダノンザキッド(牡4 北村友一)8
3着 ソダシ(牝4 吉田隼人)2
4着 ソウルラッシュ(牡4 松山弘平)5
5着 シュネルマイスター(牡4 C.ルメール)1
6着 ジャスティンカフェ(牡4 福永祐一)7
7着 エアロロノア(牡5 武豊)11
8着 ロータスランド(牝5 岩田望来)15
9着 ピースオブエイト(牡3 C.デムーロ)12
10着 マテンロウオリオン(牡3 横山典弘)10
11着 ダノンスコーピオン(牡3 川田将雅)4
12着 ウインカーネリアン(牡5 三浦皇成)9
13着 ファルコニア(牡5 池添謙一)13
14着 サリオス(牡5 R.ムーア)3
15着 ホウオウアマゾン(牡4 坂井瑠星)14
16着 ハッピーアワー(牡6 川又賢治)16
17着 ベステンダンク(牡10 藤岡佑介)17

※結果・成績・オッズ等は主催者発表のものと照合してください。