世界女王・角田 「諦めが悪いんです」悲願の五輪金へ階級変更も激戦必至の伝統階級、女子48㎏級【柔道GS東京】

柔道

2022.12.3


角田夏実 写真:松尾_アフロスポーツ

「世界選手権で優勝したことは一度忘れて、自分の柔道ができるように一戦一戦大事にしながら優勝を目指して頑張りたい」

グランドスラム東京に向け、女子48㎏級の世界女王・角田夏実(了徳寺大職)がスパートをかける。10月の世界選手権ではオール一本勝ちで、2年連続世界一になったばかり。しかしながら今大会からパリオリンピックに向けた本格的な選考がスタートするだけに、角田は楽観視していない。

「世界選手権に向けいろいろ準備をしていたけど、結局(得意とする)巴投げと関節技で終わってしまった部分がある。(グランドスラム東京では)新しい技をどんどん広げていければいいと思っています」

角田のライバルのひとりである東京オリンピックの銀メダリスト渡名喜風南(パーク24)は今大会を欠場するが、一方で昨年の世界選手権で角田と10年ぶりの日本勢同士の決勝を実現させた古賀若菜(山梨学院大)は出場する。

角田は古賀について「全体的に柔らかい柔道をする選手」と評する。「柔軟性の中に力があったりして、立ち技から寝技までの全てが流れているようなスタイルなので、ペースを持っていかれると負けてしまう」

ともに寝技が得意なタイプながら、闘い方は根本的に違う。「古賀選手は相手がカメの状態になったらすごく強いイメージがある。一方、私は自分から寝技に引き込んで攻めていくタイプ。寝技勝負になったらそんなにやられる心配はないと思うけど、立ち技から寝技に移行するときに潰れたような体勢になったら怖い」

角田の必殺技は、関節技の中では王道ともいえる腕ひしぎ十字固め。世界選手権でも、見事に極めていた。そのコツは?

「考えるより先に自分の身体を動かして、とりにいくことが大事。考えてしまうと、相手もホント一瞬のスキで締めたりするので即座に反応できるようにしないといけない」

関節技のスキルを磨くために、角田はレスリングに関節技や締め技を加えた組み技格闘技『グラップリング』の練習にも余念がない。なぜ道衣を着ないこの競技をやっているのかといえば、衣を持って引っ張り出すような動きができないからだという。

「グラップリングでは少しのスキで相手に肘をしまわれて(防がれて)しまう。そのために自分の身体でしっかりと押さえたうえで相手の肘をとりにいくことが必要。柔道で素早く同じように肘をとる動きを練習するためには最適な競技だと思う」

階級変更をする前の52㎏級時代は阿部詩(日体大)や志々目愛(了徳寺大職)と三つ巴で激しく争っていたが、東京オリンピック出場を目指し2019年に48㎏級へ転向した。その夢は渡名喜によって阻まれたが、角田は2024年パリオリンピックでの金メダルを貪欲に狙う。

「東京オリンピックには出られなかったけど、まだまだ柔道をしていきたいという思いがあったから今の自分がいる。諦めが悪いんですよね。柔道は自分の一部。なくなったら、何をしていいかわからない」

日本のお家芸とも言われる最軽量級・女子48kg級。角田、古賀の他にも講道館杯を連覇した立川莉奈(福岡県警察)やその立川に決勝で敗れながらも講道館杯で2位と頭角を現した高校生の宮木果乃(修徳高校)が出場する。

それら強豪のなかでも存在感を見せる角田。現在30歳ながら、三十路を越えてからオリンピックで金を獲った濱田尚里の例もある。巴投げで凱旋門のようなアーチを描けるか。


(スポーツライター 布施鋼治)