6階級で日本勢が表彰台を独占!パリ五輪へ熾烈な国内代表争い【柔道GS東京 初日総括】
2022.12.5
日本勢が表彰台を独占 左上から橋本、髙市、増山、舟久保、小原、新添 PHOTO:Itaru Chiba
「やあ~っ!」
掛け声もろとも、技が鮮やかに決まると、観客席から大きなどよめきが起こった。コロナ禍での開催なので声出しは禁止ながら、思わず出てしまう言葉なき声は誰も規制できない。格闘競技ならではの熱気。国際大会ならではの緊張感。音響効果で観客に拍手を促すなどの大会演出も素晴らしい。
東京体育館で5年ぶりの開催となった『グランドスラム(以下GSと略)東京2022』第1日(12月3日)は有観客ならではの熱気に包まれていた。やはりスポーツイベントはアスリートと観客が一体となって作り上げるもの。GS東京は忘れかけていた何かを思い出させてくれた。
大会初日、女子63㎏級で今年9月に世界チャンピオンになったばかりの堀川恵(パーク24)は今大会で優勝すれば全日本柔道連盟の規定により、来年の同選手権への出場が内定するといわれていた。
巷ではリオデジャネロ、東京と2大会連続でオリンピックに出場した髙市未来(コマツ)との対決が期待されていたが、準決勝でアグレッシブな組手が身の上の渡邉聖子(警視庁)に敗れてしまう。
女子63㎏級準決勝 堀川恵vs渡邉聖子 PHOTO:Itaru Chiba
現役の世界チャンピオンが当たり前のように敗れる。それだけ国内レベルは高く、代表争いは熾烈を極めているということか。
もう一方のブロックからは髙市が初戦から磐石の強さを見せ3戦連続で勝ち上がってきたが、鍋倉那美(了徳寺大学職)との準決勝は接戦となり、守勢を余儀なくされる。ぐいぐい攻めまくる鍋倉の攻撃で、髙市が場外に吹っ飛ばされるシーンはそれを如実に物語っていた。
しかし、ゴールデンスコア(延長戦)になると、鍋倉は失速し髙市は勝利をモノにした。
決勝は10月の講道館杯決勝と同じ渡邉との一騎討ちになった。激しい組手争いで髙市は二度もサミングを受けたが、ペースを乱すことはない。逆に徐々にプレッシャーを強めて渡邉を追い込み反則勝ちを収めた。
女子63㎏級決勝 髙市未来vs渡邉聖子 PHOTO:Itaru Chiba
3大会連続オリンピック出場に向け幸先いいスタートを切った髙市だが、笑顔はなかった。なぜか。「優勝したことは評価できるが、内容が情けなくて。しっかりと反省して、次につなげたい」
髙市は今年11月に結婚。田代から髙市姓になって初めての大会だった。今後は堀川とともに「結婚してからも第一線で活躍できる」柔道家としての活躍が期待される。
一方、男子90㎏級では今年になってGSブタペストやGSパリを制するなど急成長を遂げている村尾三四郎(東海大)の活躍が期待されたが、準決勝で敗北。リオデジャネイロオリンピック同級金メダルリストのベイカー茉秋(中央競馬会)と、東京オリンピック日本代表の向翔一郎(ALSOK)はともに3位決定戦で敗れた。
日本代表として決勝に勝ち上がったのは増山香補(パーク24)。準決勝では東京オリンピック金メダリストで今年の世界選手権で辛酸を舐めさせられたベカウリ(ジョージア)を敗る殊勲の星を上げ、決勝では東京オリンピック銀メダリストのトリッペル(ドイツ)を相手にダイナミックな背負い投げを決め1本勝ち。昨年11月のGSバグーに続き、IJFワールド柔道ツアーで通算2度目の優勝を飾った。
男子90㎏級決勝 増山香補vsトリッペル PHOTO:Itaru Chiba
「世界選手権で負け自信がなくなっていた状態での大会だったので、今日は1試合ずつでしか見ていなかった。その中で(1試合ずつ勝ち上がり)金メダルにつながったので、少しは自信が戻ったのかなと」
何よりも東京五輪のトップ2を立て続けに撃破した実績はパリオリンピックに向け、大きくモノをいってきそうだ。
またオリンピック2大会連続金メダリストの大野将平(旭化成)の欠場で波乱を呼んだ男子73㎏級は大野の代役として出場した"平成の三四郎"こと故・古賀稔彦さんの長男・古賀颯人(慶應義塾高校教員)が大活躍。
男子73㎏級決勝 橋本壮市vs古賀颯人 PHOTO:Itaru Chiba
組手を武器に決勝まで進出し、今年の世界選手権第2位の橋本壮市(パーク24)と組み合った。橋本を相手にしても古賀は攻め手をゆるめることなく前に出続けたが、最後は橋本に技ありを奪われて敗北。銀メダルに終わった。
この階級で金メダル候補といわれた大野は大会5日前に欠場を表明しただけに、優勝を決めた橋本は唇を噛んだ。「絶対倒してやるという気持ちで準備していた。欠場を聞いた時は残念だった」
耐えに耐えて優勝を飾った橋本は大野と同い年。絶対王者の影に隠れながら、今回でGS6回目の優勝を飾った知る人ぞ知る実力者。今後73㎏級を背負って立つ存在になるか。
なお女子57㎏級は舟久保遥香(三井住友海上)、女子70㎏級は新添左季(自衛隊体育学校が金メダルを獲得。
男子81㎏級では小原拳哉(パーク24)が東京オリンピック金メダルの永瀬貴規を敗って優勝と、日本勢が表彰台を独占した。
(スポーツライター 布施鋼治)
男子81㎏級決勝 小原拳哉vs永瀬貴規 PHOTO:Itaru Chiba
【初日 各階級結果】
●男子73kg級
優勝:橋本壮市(パーク24)
準優勝:古賀颯人(慶應義塾高校教員)
3位:大吉賢(了徳寺大学職員)、モルカ(ポーランド)
PHOTO:Itaru Chiba
●男子81kg級
優勝:小原拳哉(パーク24)
準優勝:永瀬貴規(旭化成)
3位:藤原崇太郎(旭化成)、ジャロ(フランス)
PHOTO:Itaru Chiba
●男子90kg級
優勝:増山香補(パーク24)
準優勝:トリッペル(イタリア)
3位:村尾三四郎(東海大)、ベカウリ(ジョージア)
PHOTO:Itaru Chiba
●女子57kg級
優勝:舟久保遥香(三井住友海上)
準優勝:芳田司(コマツ)
3位:玉置桃(三井住友海上)、大森朱莉(帝京大)
PHOTO:Itaru Chiba
●女子63kg級
優勝:髙市未来(コマツ)
準優勝:渡邉聖子(警視庁)
3位:鍋倉那美(三井住友海上)、堀川恵(パーク24)
PHOTO:Itaru Chiba
●女子70kg級
優勝:新添左季(自衛隊体育学校)
準優勝:コフラン(オーストラリア)
3位:ツノダロウスタント(スペイン)、テルツィドウ(ギリシャ)
PHOTO:Itaru Chiba