【エリザベス女王杯 見どころ】可憐さの中に輝く強さを見せる女王は、どの馬か

レガレイラ(c)SANKEI
エリザベス女王杯には不思議と華がある――牝馬限定戦ならではと言えばそれまでだが、オークスやヴィクトリアマイルなど、他の牝馬限定GⅠにはない美しさがあるように感じる。
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勝ち方が鮮やかな馬が多かったからだろうか。
史上初の連覇を果たしたイギリスのスノーフェアリーが初来日の2010年は直線でインコースを突いたスノーフェアリーが後続を置き去りにするかのように抜け出し、2着のメイショウベルーガに4馬身差を付けるという圧勝。
ライアン・ムーアの手綱さばきに応えるパワフルさと同時に、どこか可憐な印象を見る者に与えた。
それから9年後の2019年もそうだった。阪神JFを制して2歳女王となって以来、同期のアーモンドアイに押されていたラッキーライラックはクリストフ・スミヨンとともに直線を鮮やかに伸びてきて、2着のクロコスミアには1馬身1/4という決定的な差を付けて勝利。2歳女王の復権を果たし、翌年以降の飛躍につなげた。
大波乱の年となった2022年もそうだ。毎回のように早い上がりで駆け抜けてくるも勝ち切れなかったアカイイトもテン乗りだった幸英明の騎乗に応え、まるで導かれるかのように仁川の直線を伸びて突き抜け、2着のステラリアは2馬身後ろに迫るのが精いっぱいだった。
まるで花が咲いたかのように、ポンと1頭が抜け出して勝利するのがこれまでのエリザベス女王杯のイメージ。そう考えると今年も美しき16頭の中で最も美しく走った馬が栄冠に輝くだろう。
その筆頭格となるのはレガレイアだろう。
「男勝り」という表現は彼女のためにあるのかもしれない。2歳時は同い年の牡馬と走るホープフルSで先に抜け出したシンエンペラーを直線で捕まえて勝利。牡馬をもひれ伏した末脚は世代最高級のキレ味を誇った。
その実力を考え、陣営が目指したのは世代最強への道。3歳緒戦は桜花賞ではなく皐月賞、その後はダービーと挑んだが、2戦とも上がり最速を記録するも6着→5着。ひと夏を越え、牝馬同士ならと挑んだローズSもエリザベスSでも5着。出遅れや直線での不利があったとはいえ、勝ち方を忘れてしまったとさえ思われた。
だが、レガレイラは冬の中山で復活する。混戦模様とされた有馬記念はスローペースの中で自慢の末脚が爆発。3歳も年上のダービー馬シャフリヤールとの競り合いを制して2つ目のGⅠタイトルを奪取すると、今年は宝塚記念から復帰。
11着と大敗したが、秋緒戦となったオールカマーは半兄のドゥラドーレスとともに仕掛けて、並ぶ間もなく差し切り完勝。荒々しさとは無縁なスマートな勝ち方にどこか成長を感じさせた。
昨年5着に敗れたこの舞台。4枠7番という枠はくしくも昨年と同じ。不安になるのは確かだが、昨年よりも成長してきたのは明らか。牝馬最高峰のレースを制して、真の女王へと上り詰めるか。
華やかさという点では、エリカエクスプレスも負けてはいないだろう。
デビュー2戦目となったフェアリーSではスタートから好位に付けて流れに乗り、直線早めに動いていくとそのまま押し切る形で快勝。
軽快なスピードで押していくというレーススタイルで後続馬を置き去りにした彼女は一躍クラシックの主役として扱われるようになった。
だが、マークが厳しくなると辛くなるのが逃げ馬の宿命。1番人気の桜花賞は好スタートを見せるも最後まで踏ん張れずにエンブロイダリーに価値を譲って5着。
距離が長すぎたオークスは10着、そして悪いイメージのまま向かった京成杯AHも無念の11着。フェアリーSで見せた美しい走りはなかなか見られなかった。
そうして迎えた秋華賞。武豊を鞍上に迎えた彼女はスタートから平均ペースで逃げて流れを作り、直線でも踏ん張って2着に健闘。レジェンドの手綱で持ち味が完璧に生きる形となった。
今回のエリザベス女王杯は距離が1ハロン延びる。それをどう克服するかがカギにはなるが、最大の魅力である軽快なスピードをフルに生かすことができれば、後続馬に影をも踏ませない逃走劇を秋の京都で見せるかもしれない。
バラやひまわりといった明るいイメージの花ばかりが花ではない。地道にコツコツと咲き誇る花だって美しい。そうした地道に花を咲かせてきたのがココナッツブラウンだ。
3歳2月のデビューで2勝目を挙げたのは夏の札幌。当然春のクラシックには間に合わず、格上挑戦で挑んだローズSも5着。大舞台には目もくれず、自己条件でコツコツと走り続けた。
そんな彼女が日の目を見たのは今年。5歳になったココナッツブラウンは5月の錦Sで出遅れながらも直線で32秒7というキレる末脚を繰り出して快勝。10戦目にしてオープンの座にたどり着いた。
古馬になって最初の重賞挑戦となったクイーンSはプラス20キロという状態ながらメンバー最速の上がり34秒0の末脚を見せてアルジーヌにアタマ差届かず2着。その勢いのまま臨んだ札幌記念は出遅れながらもめげずに伸びて牝馬最先着となる2着に入った。
5歳の秋、13戦目にして初めて挑むGⅠ。自慢の末脚を生かすことができれば大輪の花を咲かせることは十分可能なはず。念願の重賞制覇をこの大舞台で果たすことができるだろうか。
京都に咲き誇る16輪の美しい花のような馬たち。満員の観客の中で最も美しく輝くのは果たしてどの馬だろうか。
■文/福嶌弘
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