町田ゼルビアがサッカー天皇杯初優勝、明暗を分けた試合序盤の戦い【サッカー】

サッカー

2025.11.24


優勝し、歓喜する町田ゼルビア (c)SANKEI

J1の町田ゼルビアが11月22日に東京の国立競技場で行われたサッカー天皇杯決勝で大会連覇を目指したヴィッセル神戸にFW藤尾翔太の2得点などで3-1で勝利。

クラブ初のタイトル獲得で来季のAFCチャンピオンズリーグ2(ACL2)出場権も手にしたが、明暗を分けたのは試合序盤の戦いだった。

「前半15分までに必ず得点が動く」町田の黒田剛監督は選手たちにそう話し、試合の入り方を徹底。

それが、前回大会優勝でJリーグ2連覇の神戸に対して、多くの選手が勝てば今回がキャリア初タイトルという町田に"大一番"で奏功した。

試合開始から出足も良く、相手を上回る動きで圧をかけた町田は前半6分、先制に成功する。

左スローインの流れから、相手のクリアボールを拾ったMF中山雄太が左サイドを攻め上がってクロス。FW藤尾翔太がニアに飛び込んで相手GKと競り合いながら頭で押し込んだ。

開始早々にリードを奪った町田は、その後も相手にプレッシャーをかけてボールを奪い、優勢に試合を進めると、前半32分には右サイドでセカンドボールを獲得したFWミッチェル・デュークの斜めのロングパスに、MF相馬勇紀が相手の裏に抜け出して、左足で冷静に追加点を決め、前半で2-0のリードを奪った。

後半序盤は神戸がFW大迫勇也を投入して流れが相手に傾きかけたが、町田は後半11分に中盤の競り合いでボールを獲得すると、MF林幸多郎が中央をドリブルで攻め込んで縦パスを送り、これを受けた藤尾がこの試合2点目を決めて3-0とし、大勢を決めた。

「試合開始15分」の背景には、黒田監督が長年指導した高校サッカー強豪の青森山田高校で何度も戦った「決勝戦」での成功と失敗の経験がある。

「高校サッカー時代にファイナルという本当に重圧のかかったゲーム何試合もやって感じたことを、本当に細かく選手たちに伝えた。選手たちは半信半疑ではあったと思うが、しっかり遂行してくれた」と黒田監督。

「何か一つタイトルを獲ろうと今季をスタートして、天皇杯を獲得して来年のACL2の出場権も獲得できた。選手たちが自分たちの力で手繰り寄せてくれた。心から感謝をしたいし、敬意を表したい」と言った。

相馬は、「ショートカウンターは狙っていたし、この2試合、リスク管理のところを徹底していた。結果としてセカンド回収率も上がって、自分たちが良かった時の攻撃ができた」と言った。

日本代表でもプレーする相馬は自身2つ目のタイトル獲得に、「欲はある。ここまで来たらリーグとACL、いろんなタイトルを獲りたい気持ちになった」と笑顔を見せた。

町田で主将を務めるDF昌子源は、「タイトルはゼロから1にするのが一番難しい。チームとしても相当な覚悟を持って挑んだ一戦だった」と言った。

先輩に頼りながら獲得した鹿島時代に優勝を多く経験したことに触れて、昌子は「(優勝の)経験はこのチームで一番しているので、今度は自分が先頭に立ってタイトルを獲ると準備してきた。

来年以降またこの瞬間を味わいたいと、常に追い求めるサッカー人生でありたい」と述べて、チームメイトに伝えることで、今回のタイトル獲得をきっかけに優勝の実績を積み重ねたいと語った。


肩を落とす神戸の大迫勇也(左)、武藤嘉紀(右)(c)SANKEI

神戸、「らしさ」を欠いて苦戦

一方、大会連覇を目指した神戸はエースのFW大迫をベンチスタートにして、先発の攻撃陣にFW武藤嘉紀、FW佐々木大樹、MF広瀬陸斗を前線に、下がり目の2列目にFW宮代大聖とMF井手口陽介を揃えたが、前半は前

線で起点となれる選手がおらず、思うような攻撃の形を作れずに苦戦した。

神戸の前半の決定機は、20分過ぎにDF酒井高徳のクロスを武藤が相手DFと競り合ってこぼれたボールにゴール前に走り込んだ井手口が右足で捉えて狙ったが、町田GK谷晃生に阻まれた。

神戸の吉田孝行監督は大迫の起用について、「延長まで見据えた上でジョーカーの役割、流れを変える選手を置いておきたかった」と説明した。今大会、神戸は3回戦から準々決勝までの3試合で連続して延長戦を経験(うち1回はPK戦に突入)した影響か。

大迫の登場で神戸は後半は攻撃の質が上がり、後半早々のFKでは大迫がペナルティエリア左の武藤に出して裏を取り、相手ゴールに迫る場面も作った。だが流れを掴みかけたところで、後半11分に3失点目を喫した。

それでも神戸はその0-3となった6分後に佐々木の左クロスに宮代がヘディングで合わせて1点を返した。

だが、全般に相手の出足に対応が遅れ、好調時にみられるような連係や動きの切れが見られず、最後までゴールが遠かった。

神戸MF扇原貴宏は、「決勝という舞台で、試合の入り方が自分たちらしくなかった。試合に入り切れていない段階で失点してしまい、そこで盛り返すのではなく、沈んでしまった」と振り返り、「相手の方が前への勢いやプレスの迫力があった。そういうボールの攻防でも自分たちは負けていた」と言った。

武藤はチームの試合の入り方について、「フワっとしたところがあった。いつもと違う雰囲気で、少し難しさもあったと思うが、そこで僕ら経験のある選手がもっと強く引き締めないといけなかった」と反省の弁が口をついた。

吉田監督は、「今季タイトルを獲れず、責任を感じている。しっかり準備してきたが、前半の2失点が響いた。後半少し流れを持っていったが、その中で3失点目も影響した」と肩を落とした。

J1リーグで3連覇の可能性はすでに消えていた神戸は、今季最後のタイトル獲得のチャンスだった天皇杯も準優勝で終了した。

取材・文:木ノ原句望