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2017年10月19日 放送
革新的家電を続々開発!躍進するバルミューダの秘密

- バルミューダ 社長 寺尾 玄(てらお げん)
今、家電が革新的な進化を遂げている。その中でも注目を集めるメーカーが『バルミューダ』という、東京・武蔵野市に本社を構える家電メーカーだ。社員わずか69人の会社ながら、自然な風を再現する扇風機や、食パンをふっくらと焼き上げるトースター、水蒸気で炊き上げる炊飯器などの革新的家電を発売し、今や大手メーカーも一目置く存在となっている。
しかし、2003年にバルミューダが設立された際、寺尾には家電メーカーに勤務した経験もなければ、ものづくりの専門知識もなかった。10代後半から20代後半まで、ロックスターを目指すミュージシャンだったからだ。30歳を前にして、その夢を捨て、ゼロから這い上がってきた男の、現在の成功の陰には、ある2人の人物との出会いがあったという。
いま最も注目される家電メーカーの強さの秘密と、成功を掴むまでの感動秘話に迫る。
社長の金言
- 「楽」ではなく 「楽しい」人生を選び抜くTweet
RYU’S EYE
座右の銘
放送内容詳細
いま大人気の新興家電メーカー、バルミューダとは
今、家電が革新的な進化を遂げている。
最先端の家電を多く集める東京・二子玉川の蔦屋家電。ここでは『ノックすると扉が透けて中が見える冷蔵庫』や『映し出された鍵盤をたたくと実際に音を鳴るプロジェクター』など、これまでには想像もできなかった商品が並ぶ。
その中でも注目を集めるメーカーがある。『バルミューダ』という家電ベンチャーだ。自然な風を独自技術で再現する扇風機や、食パンをふっくらと焼き上げるトースター、水蒸気で炊き上げる炊飯器など、どれも従来家電の常識を覆す商品ばかり。しかもよく売れている。一昨年発売した『トースター』は、独自のスチーム噴射によってこれまでにない食感に焼きあげる特徴が受け、30万台以上の大ヒットとなった。税込み2万4000円超と高額にもかかわらず売れに売れ、大手メーカーも類似商品を販売したほど。また、今では一般的になったDCモーターを使う高額な扇風機も、7年前にバルミューダが発売した『グリーンファン』(38880円・税込み)のヒットがもとになっている。
東京・武蔵野市。ここにバルミューダの本社がある。社員わずか69人。オフィスの一角、立てかけられたエレキギターの横に座るのが社長の寺尾玄(44歳)だ。寺尾は、「常識を疑うことからものづくりは始まる」と話す。大ヒットとなったトースターは、土砂降りの中で行われた社員同士のバーベキューの際に、炭火グリルで焼いたパンがおいしかったことがヒントになって生まれたという。多くの大手家電メーカーが不振に陥る中、次々とヒットを生み出すバルミューダの裏側に迫る。
バルミューダの創業秘話
2003年のバルミューダ創業時、寺尾は、家電メーカーなどに務めた経験のないズブの素人だった。17歳で高校を中退しヨーロッパを放浪後、10年間、ミュージシャンとして活動していたからだ。音楽活動に限界を感じ、一転ものづくりを志した寺尾は、工作機械を貸してくれる親切な町工場に出会い、パソコン冷却台を自作。これが第1号商品となった。その後、LEDライトなどを製作し、新たな夢は軌道に乗ったかに見えたが、2008年のリーマンショックで倒産寸前に・・・。落ち組む寺尾は、たまたま通りがかったファミレスの前であることに気づく。「自分の商品が売れなかったのは本当に必要とされる商品ではなかったからだ」。そして最後の望みをかけて、「自然の風を再現する扇風機」の開発に乗り出した。試行錯誤の末、画期的な扇風機の開発に成功。多くの人の支援も得て発売にこぎつけ、大ヒットとなった。寺尾は大きな危機を成長のチャンスに変えたのだ。
バルミューダ最新製品に込められた思い
これまでにない家電で業界をリードし続けるバルミューダ。9月に発表された最新の製品は、「オーブンレンジ」だった。革新的が代名詞のバルミューダだが、オーブンレンジとしての機能はいたって普通。ただ、一つだけ違うのが、「チン」という無機質な音の代わりに、アコースティックギターによる「音楽」を採用した点だった。「モノを売るのではなく、体験を売る」と語る寺尾。今後、バルミューダが目指すものづくりの姿とは?
ゲストプロフィール
寺尾 玄
- 1973年千葉県生まれ
- 1990年高校を中退しヨーロッパを放浪、
帰国後ミュージシャンとして活動 - 2003年バルミューダ 設立
企業プロフィール
- 本 社:東京都武蔵野市境南町5-1-21
- 年 商:55億円(2016年度)
- 従業員:69名(2017年9月時点)

大手家電とバルミューダは、規模では比較にならない。だが、恐竜が絶滅したあと、君臨することになったのは、小さな哺乳類だった。寺尾さんは、異色と評されることが多いが、会社・組織が個人を守ることを優先しなくなった時代、むしろ正統ではないだろうか。新しい何かを生みだす人は、必ず協力者に出会う。幸運なのではなく、出会うまで探し続けるからだ。モノは余っている。消費者の需要をイメージするのはむずかしい。それは、開発というより創造だ。今後、家電は、製品ではなく、作品になっていくのかもしれない。