中村憲剛「感謝しかない」今季限りでの引退を発表

サッカー

2020.11.1

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中村憲剛 写真:YUTAKA/アフロスポーツ

 川崎フロンターレMF中村憲剛選手が11月1日、クラブ公式YouTubeチャンネルで今シーズン限りでの現役引退を発表。前日の試合でキャリア初のバースデーゴールでチームをリーグ戦12連勝に導く活躍を見せていただけに、驚きの表明となった。

「私、中村憲剛は、今シーズン限りで川崎フロンターレを引退します」

スーツ姿でクラブの公式チャンネルに姿を見せた中村選手は、そう告げた。

40歳を迎えた誕生日に行われた前日のFC東京戦で、中村選手は切れのあるパフォーマンスを披露。前半から相手のゴールを脅かす場面を作り、後半29分には決勝ゴールを決めてチームを勝利に導いていた。だが、中村選手の中では35歳の時に40歳を区切りとして退くことを決めていたと明かした。

「40というところで区切りをつける。その残り5年を、目の前の1年1年を勝負に頑張ろうと、ここまでやってきた」

東京出身の中村選手は、2003年に当時J2だった川崎でプロキャリアをスタートさせ、18シーズン目となる今季までフロンターレ一筋。当初は練習生として川崎の門を叩いたところからキャリアを積み重ねてきた。

広い視野と鋭い戦術眼、高い技術、努力を惜しまないハードワークで存在感を示し、緩急を織り交ぜた的確なパス、相手の意表を突くスルーパスでチームの攻撃をけん引してきた。

2006年から2010年までの5年連続と、2016年から3年連続でJリーグのベスト11に選出され、2016年には歴代最年長となる36歳でJリーグ最優秀選手を獲得した。

念願のタイトルも、2017年には就任1年目の鬼木達監督の下でクラブ悲願のリーグ制覇を達成し、翌年には連覇。2019年にはルヴァンカップで初優勝も遂げた。

日本代表でも2006年にイヴィチャ・オシム監督の下で初選出され、同年10月のガーナ戦で代表デビュー。以後、2007年アジアカップ、2010年ワールドカップを含めて68試合に出場して6得点を記録した。

だが、昨年11月2日の広島戦で左膝前十字靭帯を損傷したが、懸命のリハビリを続けて今年8月29日のJリーグ清水戦で復帰。その試合で得点も決めた。J1通算はここまで463試合出場74得点(今季は5試合2得点)。J2では75試合出場で9得点をマークした。

この日「引退」を口にした中村選手は、「いつか、この言葉を言う日が来ると思っていた」と穏やかな表情で言った。

昨年39歳で負った大怪我についても、すでに引退を決めていたことで、「なんとしても復帰する。1日でも早く戻って、等々力でみんなの前でプレーする」と目標を設定。高いモチベーションでリハビリに励むことができたと振り返った。

「『中村憲剛、やるじゃん!』と思ってくれるところまで戻したいと、リハビリの時にそれを期待している自分がいた。昨日の試合でそれを見せることができたのは嬉しい」と話した。

シーズン終了まで2か月を残しての発表になったことも、サポーターの気持ちを考えてのことだったという。

「ギリギリまで黙っていて、別れの話をしてから試合がないというのは、自分の中でも『ないな』と思っていた」と話し、「サポーターの存在なしで、今の僕はいないと断言できる。ずっと支えられっぱなしだった。そのみなさんに優勝をプレゼントできたのは、一生忘れられない思い出。感謝しかない」と語った。

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最後まで試合に出続けたい

「この年齢で請われる、求められる選手のまま引退したいというのがあった」と中村選手は言い、後輩の成長と切磋琢磨できる環境に感謝を示した。

「今季、僕がいなくても後輩たちが成長して立派な成績を残している。頼もしさ、タフさは感じていた」と話し、その分、自身の復帰には「すごくハードルが上がった」と認め、それがプラスに働いたと中村選手は指摘した。

「リミットがある僕にとっては、プロ人生で一番ハードルが高い期間だったと思うが、それを乗り越えて試合に出られたときには、いままでの自分の中でも一番というぐらいでやれている感覚がある」と言及。「そういう意味では後輩たちには感謝しかないし、そういう自分を使ってくれてる鬼木監督にも感謝しかない」

 チームは現在リーグ戦25試合を終えて22勝2分1敗で勝点68の成績で独走中。2位のガンバ大阪(同試合数を消化)で勝点17差をつけている。昨日の試合で今季リーグ戦成立基準の75%をクリアした。今季J1の最終節は12月19日。

中村選手にとってはユニフォームを脱ぐまでにリーグ戦は残り9試合。Jリーグで上位2位以内を確保できれば天皇杯準決勝への出場が決まるため、最大で11試合の出場機会を残している。

 「みんなとサッカーできるのはあと2か月。1日に無駄にしたくないし、楽しみたいし、みんなと共にタイトルを獲りたい。僕自身も最後まで試合に出続けたい。チームは連勝しているので、みんなと切磋琢磨して、それに貢献できるようにやりたい。」

 目標を見据えて、中村選手はそう言った。


取材・文:木ノ原句望