【第86回日本ダービー】ロジャーバローズ「断然人気の僚馬がもたつく中で最高の栄誉を掴み取る」【もうひとつの名勝負伝説】

第86回日本ダービー ロジャーバローズが優勝(c)SANKEI
調教師は理想通りの展開と最悪の展開に複雑な心境だった
2019年の日本ダービー。
単勝10倍を切る馬がサートゥルナーリア、ダノンキングリー、ヴェロックスの3頭という、まさしく3強の構図の中、先行策から直線早め先頭で押し切り栄冠を掴んだのは12番人気の伏兵ロジャーバローズだった。
その調教師にして、1番人気のサートゥルナーリアも管理していた角居勝彦元調教師に聞いた、大波乱の日本ダービーのお話を、過去の競馬の名勝負28の舞台裏をそれぞれの関係者に聞いてまとめた『もうひとつの名勝負伝説〜関係者だけが知る激闘の裏側』(2025年5月26日刊・マイクロマガジン社)から一部抜粋してお届けする。
ゲートが開いた瞬間、スタンドからの歓声が悲鳴に変わった。
2019年の日本ダービー。無敗の皐月賞馬サートゥルナーリアが立ち上がり、出遅れてしまった。
対して、絶好のスタートを切ったのが、同じ角居厩舎の1枠1番ロジャーバローズ。
京都新聞杯で2着に入り、滑り込みで本番の切符を手にしたこともあり、単勝オッズは12番人気の超人気薄。管理していた角居勝彦が当時のことを振り返ってくれた。
「サートゥルが出遅れた瞬間は、正直〝あちゃーっ〟と思いました。反対にロジャーはポンっといいスタートを切れてよかったなと。両方を目で追うことはできないので、サートゥルを見て、ロジャーを見てと、交互に見ていましたね」
逃げ宣言をしていたリオンリオンが外から押してハナを奪う。ロジャーバローズは内の2番手につけた。
「ロジャーは絶対に逃げなきゃいけないという馬ではなかったので、速いペースで引っ張ってくれる馬がいて、その2番手。それもちょっと先頭から少し間があいた2番手が理想だろうなと、スタッフとレース前に話をしていたんです。そうしたら、話していた通りに展開がぴったりハマりました」
スローだと引っ掛かってしまう可能性がある。だから、ハイペースで飛ばしてくれる馬がいてくれた方がロジャーバローズにとっては好都合だった。
最初のコーナーを回り、向正面に入っても逃げるリオンリオンはペースを落とさない。ロジャーバローズは差を詰めすぎず、かといって離されすぎない、10馬身ほどの差を保ちながら2番手をキープしていた。
いっぽう、出遅れたサートゥルナーリアはというと、スタート直後に遅れを取り戻そうとするも、上手くいかず後方からの競馬に。
向正面では動くに動けない状況に陥ってしまった。他馬はサートゥルナーリアがジッとしているのと、逃げるリオンリオンのペースが速かったため、あまり動くことなく、レースは縦長の展開になっていた。
「サートゥルは展開的にごちゃごちゃして、エネルギーをロスするような競馬になってしまった。それが結果的にマイペースで行きたいロジャーにはいい展開になるという...」
両馬を管理する角居にとっては複雑な心境だった。無敗でホープフルSと皐月賞を制し、下馬評では春の二冠は確実といわれていた断然人気のサートゥルナーリア。
それがまさかの展開になってしまった。角居が苦境に陥ったサートゥルナーリアの方を目で追ってしまうのはごく自然のことだったろう。
3コーナーに入ってもリオンリオンはペースを落とさない。そんな中、ロジャーバローズと鞍上の浜中俊は少しずつ差を詰めていき、4コーナー手前から早めのスパートを敢行する。
「スパッと切れるというより、持続的に脚を使うタイプなので、あのあたりからゴールまで脚を残せればっていう作戦だったと思います。ただ正直〝ここから仕掛けて持つんか〟って思いましたよね(笑)」
普段から角居は、ジョッキーに馬の状態について話すことはあっても、レース前に作戦面の話をすることはなかったという。
「そこはジョッキーと担当者が、一生懸命に考えていますので。競馬は展開によって変化するので、先入観を与えるようなことはしません。第三者が口を挟んでしまうと、ジョッキーもどう乗ったらいいかわからなくなりますから」
■ロジャーバローズ プロフィール
生年月日:2016年1月24日生まれ
性別:牡馬
毛色:鹿毛
父:ディープインパクト
母:リトルブック(母父:リブレティスト)
調教師:中竹和也→角居勝彦
馬主:猪熊広次
戦績:6戦3勝
主な勝ち鞍:日本ダービー
生産牧場:飛野牧場(新ひだか)

もうひとつの名勝負伝説 ~関係者だけが知る激闘の裏側
手に汗握った名勝負、名馬の衝撃のパフォーマンス、あっと驚く大波乱決着、騎手のGⅠ初勝利など、競馬史に残る感動の名レースをピックアップし、関係者への取材を基にそのレースの真相を明らかにしていく一冊です。
取材対象となる関係者は、そのレースに騎乗した騎手の他、調教師や担当厩務員、調教助手など。騎手のレース中の駆け引きにとどまらず、戦前の馬の様子や陣営の思惑、レース後の感想やエピソードなども取り上げながら、感動と興奮を呼んだあの名勝負の舞台裏に迫ります。
編:マイクロマガジン名勝負取材班
発売日:2025年5月26日
価格:1,980円(本体1,800円+税10%)
購入:https://www.amazon.co.jp/dp/4867167622/
【もうひとつの最強馬伝説】アーモンドアイ 芝GI9勝・通算15戦11勝「抜群のルックスと圧倒的パフォーマンス」