【スプリンターズS】大舞台で負け続けた天才と素質馬が掴んだ栄光

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2025.9.28

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三浦皇成/ウインカーネリアン(c)SANKEI

「武豊を超える天才騎手」――かつて、三浦皇成はこう呼ばれていた。

デビュー当時から注目の新人騎手として話題になると、新人としては異例のハイペースで勝ち星を突き重ね、デビューからわずか5ヵ月で重賞を制覇。秋には武豊が持っていた新人騎手の年間最多勝利数を更新し、最終的に91勝を挙げた。

その後もコンスタントに勝ち星を積み重ねていった三浦だが、不思議とGⅠタイトルには縁がなかった。デビューの年にスプリンターズSでGⅠ初騎乗を果たし、3年目には安田記念で3着に入った。「いつかはコウセイもGⅠを勝てるだろう」とレース後に嘯くファンも多かった。

だが、三浦に"いつか"はなかなか来なかった。人気の馬に乗ることがほとんどなかったとはいえ、GⅠに騎乗するだけで終わりというレースが続いて、いつしか三浦はデビューから18年が経過。交流GⅠでは3勝を挙げているが、JRAではその頂に届いていなかった。

「能力はGⅠクラス」――ウインカーネリアンの走りはそう信じられていた。例えば3歳時、ギリギリで2勝目を挙げて滑り込んだ皐月賞は17番人気ながら直線で見せ場を作る4着。

葉蹄炎という病で長期のブランクを余儀なくされたが、復帰後には関屋記念を制して重賞ウイナーの仲間入りを果たし、その後も息の長い走りで短距離戦線に挑み続けた。

だが、ウインカーネリアンの能力がGⅠではなかなか発揮されなかった。得意なはずの東京マイルで行われる安田記念では毎回大敗を喫し、そうしているうちに気が付けば8歳。GⅠどころか勝ち星からは2年も遠ざかってしまっていた。

こうしてみると、三浦皇成とウインカーネリアンはよく似ているのかもしれない。鹿戸雄一厩舎所属の馬だけに所属騎手の三浦が騎乗するのはごく自然のことだが、ここまでキャラクターが似るとは本当に不思議なものだ。

2025年の秋、三浦は32戦中、23戦で手綱を取っている相棒・ウインカーネリアンとともに、スプリンターズSに挑む。馬は9回目、騎手はなんと127回目のGⅠへの挑戦となる。

秋晴れという言葉がふさわしい快晴の中山競馬場で行われた電撃のスプリントGⅠだが、戦前の下馬評ではウインカーネリアンは単勝50倍の11番人気という低評価。これまでのGⅠ実績に加え、8歳という高齢、さらにこの日の馬場コンディションでは不利とされていた8枠16番からのスタートということでどうしても人気が上がらず。

結果的に春の高松宮記念を制したサトノレーヴ、悲願のGⅠ制覇を狙うナムラクレア、そして2年前のこのレースの覇者であるママコチャら6歳勢が人気の中心を担った。

だが、パドックでのウインカーネリアンの様子は決して悪くはなかった。514キロの馬体は筋肉質でいかにもスプリンターのそれ。8歳でなければ、8枠でなければ......と思わせるほどの好仕上がりだった。

8歳だから、8枠だから、そしてGⅠで結果が出ていないから......という先入観がウインカーネリアンと三浦の評価を下げ、結果的に11番人気に甘んじた。しかし、デビュー18年目の三浦と8歳馬ウインカーネリアンはその走りでこの低評価を見返した。

スタート直後、ウインカーネリアンと三浦は内枠の馬たちが積極的に前に行かないのを見ると、外からジューンブレアに被せるような形で2番手に付けていった。7枠と8枠の馬が先行争いをして、3番手に最内枠のピューロマジック、その後ろにママコチャ、トウシンマカオ、そしてそれらを見る感じでサトノレーヴが付けていた。

前半の3ハロン33秒7は過去5年の中で最も遅い。スプリントGⅠにしては緩やかな流れになった中、ウインカーネリアンはまさに絶好の位置取り。内枠有利と言われた馬場コンディションもこの位置に付けていられれば関係ない。あとは直線、どのタイミングで抜け出しを図るかだ。

そうして迎えた最後の直線。主役となったのは人気の6歳勢ではなく、4歳の伏兵と8歳の老兵だった。

逃げた4歳馬ジューンブレアとそれを追いかける8歳馬ウインカーネリアンの一騎打ち。歴代最多のJRAGⅠ通算84勝を誇るレジェンド・武豊の右鞭に応えるようにジューンブレアが脚を伸ばせば、JRAGⅠ初制覇へ127回目の挑戦となる三浦が懸命に右鞭を叩いて、ウインカーネリアンが抵抗する。

4歳の牝馬と8歳の牡馬、レジェンドとかつて天才と呼ばれた男――全く異なる2人と2頭の熾烈な叩き合いは残り50mを過ぎたところでウインカーネリアンと三浦がほんの少しだけ前に出た。これを逃したら、もう二度とGⅠのタイトルは掴めない――大舞台で負け続けた男と馬の執念に勝利の女神が微笑んだ。

そして迎えたゴール。ウインカーネリアンと三浦は追いすがるジューンブレアと武豊をアタマ差凌いで勝利。ゴールした瞬間、三浦は左手を高々と掲げ、ガッツポーズを見せた。18年前に初めて騎乗したGⅠレースに、ようやく手が届いたのだ。

「(GⅠ初制覇まで)長かった」と、レース後のインタビューで涙を浮かべながらそう答えた三浦は「最後はウインカーネリアンに勝たせてあげたいという気持ちで必死に追っていた」と直線での攻防の際の心情を語り、「これだけGⅠで負け続けた自分を乗せ続けてくれたオーナーやファンが応援し続けてくれて、焦った時期もあったけれどこうして勝ててよかった」と関係者、ファンへの感謝のコメントを残した。

8歳の古豪とデビュー18年目の騎手が掴んだ念願のタイトル。インタビュー後、中山競馬場は遅れてきたチャンピオンたちを祝福するかのように「ミウラコール」で包まれていた。

■文/福嶌弘

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<出演者>
キャプテン渡辺
冨田有紀(テレビ東京アナウンサー)
三嶋まりえ(東京スポーツ)

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第59回スプリンターズステークス(GI)枠順
2025年9月28日(日)4回中山9日 発走時刻:15時40分

枠順 馬名(性齢 騎手名)
1-1 ピューロマジック(牝4 松山弘平)
1-2 ヨシノイースター(牡7 内田博幸)
2-3 ダノンマッキンリー(牡4 横山典弘)
2-4 ママコチャ(牝6 岩田望来)
3-5 カンチェンジュンガ(牡5 坂井瑠星)
3-6 ナムラクレア(牝6 C.ルメール))
4-7 サトノレーヴ(牡6 J.モレイラ)
4-8 ペアポルックス(牡4 松若風馬)
5-9 ドロップオブライト(牝6 丹内祐次)
5-10 ラッキースワイネス(セ7 K.リョン)
6-11 トウシンマカオ(牡6 横山武史)
6-12 ヤマニンアルリフラ(牡4 団野大成)
7-13 ジューンブレア(牝4 武豊)
7-14 カピリナ(牝4 戸崎圭太)
8-15 ルガル(牡5 川田将雅)
8-16 ウインカーネリアン(牡8 三浦皇成)
※出馬表・成績・オッズ等は主催者発表のものと照合してください。

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