若きセルジオ越後が激怒したブラジル人監督の言葉と「心に残る教育」とは

サッカー

2020.8.21



【セルジオ越後の言いたい放題】

今回は若きセルジオ越後を怒らせたブラジル人監督の言葉、そしてセルジオが考える一番心に残る教育について語ってもらった。

揉まれた経験がプラスになる

特に最近は、日本の選手がたくさん海外に行くようになっていますが、受け身になっている選手が多いですね。これも日本の文化で、国から出た時に弱いんです。日本国内では成り立つけれども、国から一歩海外に出ると弱い。スポーツだけでなく、外交にしても外交的には逞しくない。

そこもやはりスポーツとかそういうところで揉まれながら学んで育っていくということが大事なのではないでしょうか。人間として、生きていくには揉まれた経験がすごくプラスになってきます。

今、僕はブラジルを出てアウェー(日本)で戦っています。アウェーで成功するためには何をすれば良いのか、ということは僕はサッカーが教えてくれたと思っています。理屈で考えるのではなく、体で経験して覚えるという良さがありました。

キツいジョークで選手をその気にさせる

昔、とてもユニークな監督がいました。日本の指導とどれくらい違うのかというと、変に怒らないんです。僕が選手としてデビューした頃にある試合の前半で緊張して調子が悪かったんです。そしたら監督がグラウンドの階段で僕を待っていて、僕の肩に手を置いて「セルジオ君、後半もお願いできますか?」と言ったんです。僕が「大丈夫ですよ、まだ全然元気ですから」と言ったら、監督に「当たり前だよな。お前は前半何もしてないもんな」と言われました。

僕はムカッときて怒られるよりも傷付いてしまって、馬鹿にされたように感じたから、後半は目が覚めて一生懸命頑張ってアシストもして活躍しました。そしたらその監督がまた同じ階段で待っていて、「セルジオ君、後半は良かった!」と褒めてくれました。僕は「そうだろう」と思って喜んでいたら、「ただ、あなたのサッカー人生で前半の45分は損をしたことを忘れないでください」と言われたんです。

そういうのは一番心に残る教育ですよね。選手が引っ込み思案にならずに前向きに次に向かって行くことができる、特に「向かって行け」という直接的な言葉があった訳ではなく、キツいジョークを言うことで選手をその気にさせる。

こんな話もありました。ロッカールームである選手が監督から「みんな彼からよく学べ!頭をよく使ってるし、運動量は多いし、技術は高い。この選手を見習え!」と褒められまくっていたと思ったら、小さな声で「ハイ、交代」と言われたんです。要するに、やっていなかったことを皮肉のように全部並べられたんです。そういうところも監督によってはユニークな伝え方がありました。

やはり教育というのは、そういう伝え方一つをとっても色々なレパートリーがあって、僕もそこから多くを学びました。「馬鹿野郎!」と監督に怒鳴られたらやっぱりもうその人の話を聞きたくないですよね。だから「あれは良かったよ。すごいな、あのプレー」と言いながら「でもこれとこれは良くなかったよ」と言われれば、選手も「はい、はい」と素直に聞きますよね。

そういったところも日本とは違った、ブラジルなりのスポーツ教育の仕方があるんじゃないかと思います。

さんまさんがテレビで使っている言葉なのに退場?

日本はあまりにも形にこだわり過ぎていて、使えない言葉が多すぎます。

みんなあまり知らないけれども、ブラジル人の選手がガンバの前身の松下電器のチームに来た時に、すごく面白い話をしていましたよ。彼は日本に来て大阪でずっとプレーをしていたから、大阪のテレビを見て学んだ言葉や知識を持って広島に試合で行った時に、審判に「アホと違うんじゃないか」と日本語で言って退場をくらってしまった。彼は「テレビでさんまさんも言っているのにどうしていけないの?セルジオさんどうして?」って僕に聞くから、僕は「多分、審判は関東の人だったのではないかな」と彼に伝えたんです。

違う国から来た選手がその日本の地域に馴染もうとしたら、逆にそれが裏目に出てしまった。それがアウェーの戦いというものですよね。

ブラジルの人はどの国に行っても這い上がってくるというのは、ブラジルが多民族国家という歴史や文化のおかげではないかと思います。ブラジルの人はどの国に行っても苦労しないですよ。なぜかと言えば、世界中の民族がブラジルにはいますから。



その中で生活してきているから、どの国に行っても同じような状況が起こっている感覚で生活ができる。

だからブラジルの人の方が、異国でも強気でいられるんじゃないかと思います。