なでしこジャパン「短刀で懐に入る」戦いで五輪の短期決戦を勝ち抜く

サッカー

2021.4.23


女子サッカー 高倉麻子監督(c)JFA

なでしこジャパン日本女子代表の東京オリンピックでの対戦相手が4月21日(水)、決定。2大会ぶりの出場で金メダル獲得を目指す日本は、過去の世界大会で立ちはだかってきたイングランド主体の英国や、2大会連続銅メダリストのカナダと同組となった。

高倉麻子監督は「短刀で相手の懐に入る」日本流を活かし、国を背負って戦う覚悟と勝利への強い思いを持って、短期決戦を勝ち抜くつもりだ。

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男子と違ってフル代表が出場する女子のオリンピックサッカーは、女子ワールドカップと同様に世界タイトルのかかった重要な大会だ。その舞台に、なでしこジャパンは2大会ぶりに出場する。

そのグループステージE組で日本が対戦するのはカナダ、英国、チリという顔ぶれだ。カナダは4大会連続4回目、英国は2大会ぶり2回目の出場で、チリはカメルーンとの大陸間プレーオフを制して初の出場を決めたが、2019年ワールドカップには出場している。

4月21日に行われたFIFA(国際サッカー連盟)による大会組み合わせ抽選会をストリーミング中継で見ていた高倉監督は、英国が同じE組に引き当てられると「やっぱりきたな」と思ったという。

日本が優勝した2011年女子ワールドカップや銀メダルを獲得した2012年ロンドン・オリンピックの決勝で対戦したのはアメリカで、女子サッカーを世界的にけん引してきた存在として、日本が長年意識してきた相手だ。だが、もう1つ、日本が世界の舞台で苦しめられてきた存在がある。イングランドだ。

英国サッカー界ではイングランド、スコットランド、ウェールズ、北アイルランドの各協会単位での活動が確立済みで、1996年に女子サッカーが五輪競技となった以降も、国を代表しての大会である五輪に英国としての参加はなかった。

しかし、2012年ロンドン大会開催をきっかけに初出場を果たし、今回も前述4協会でチームを編成。その中心が、FIFAランキング6位のイングランドになるとみられている。

英国と日本の対戦は2012年ロンドン大会ではなかったが、イングランドとしてはワールドカップで4回対戦。2007年(2-2)、2011年(0-2)、2019年(0-2)はグループステージ、2015年カナダ大会では準決勝(2-1)で顔を合わせ、日本の1勝1分け2敗だ。高倉監督も、「よく当たるんですよね」と苦笑する。

2016年4月からなでしこジャパンを率いてからも、2019年ワールドカップのほか、アメリカでのシービリーブスカップで2度対戦して3敗中だ。いずれも無得点試合で、相性のいい相手とは言い難い。

なでしこジャパン指揮官は、「ゴール前の爆発力、ゴールへ向かうところが一枚上」とイングランドの力を認めている。

だが、狭いエリアでも連携を活かして戦えるスキルなど、相手にはない日本の良さがあるとして、「相手が長い刀なら、我々は短い刀で懐に入って戦う。選手たちは過去の敗戦から学んできている。いい戦いをして白星を挙げたい」と、7月24日のグループステージ第2戦での対戦へ向けて意気込んでいる。

初戦で2大会連続の銅メダリストと

だがその前に、重要なのが大会初戦だ。女子サッカーは7月21日にからの17日間に中2日での連戦で、8月6日の決勝まで行けば6試合をこなす。


なでしこジャパン 写真:JFA/アフロ

12チームで戦う女子の場合、4チームずつ3グループに分かれてグループステージを戦い、各組2位までと3位の中で上位2チームが準々決勝へ進む。E組の日本は1位突破であればF組かG組の3位通過チーム、2位通過であればF組2位との対戦となり、3位通過の場合はG組の1位との対戦が待つ。

E組以外の組み合わせは、F組が中国、前回2016年大会4位のブラジル、ザンビア、オランダで、G組は2016年大会銀メダルのスウェーデン、過去4大会で優勝のアメリカ、オーストラリア、ニュージーランドだ。

アメリカは1996年の第1回大会から毎回出場の常連で、2016年こそ5位と落ち込んだが、2000年の銀メダル以外は4大会を制しており、2019年ワールドカップでは連覇で4度目の優勝を遂げた。

世界王者として、東京大会で五輪金メダル奪還を目指すのは間違いない。日本がグループステージ3位通過の場合、準々決勝での顔合わせとなるが、これは避けたい。

日本としては7月21日の大会初戦で勝点3を手にして勢いをつけたいが、対戦相手のカナダは2012年ロンドン大会と2016年リオ大会の2大会連続で銅メダルを獲得した強豪だ。

37歳のFWクリスティン・シンクレア選手が、出場296試合中285試合に先発し、186得点をマークするなど、圧倒的な存在感でチームをけん引してきている。

日本とは五輪では2012年ロンドン大会のグループステージ初戦で対戦し、日本が2-1で勝利した。直近では2019年10月に静岡での親善試合で、これも日本が4-0で勝っている。だが、カナダは今年4月には英国先生でイングランドに2-0、ウェールズに3-0と連勝しており、全く侮れない。

高倉監督も「世代交代で少し波があるかと思うが、アメリカでプレーしている選手も多く、力強さ、個人の破壊力がある。最近の試合を分析しながら、戦い方を考えていかなければならない」とカナダへの警戒感を示している。

7月27日に宮城で対戦する3戦目のチリについては、「あまり情報がない」としながらも、「南米のチームなのでテクニックの高い選手がいると思うし、勝負に老獪なものを持っていると思う」と述べた。

日本はカナダ戦、英国戦を続けて札幌ドームで戦う。東京エリアよりも涼しい環境にある北海道では、開幕戦へ向けた調整にはプラスになりそうだが、空調の効いたドームでの試合では、暑さが得意ではないカナダや英国に対しても快適になりそうで、日本が優位に立てるとは言い難い。その後、宮城での第3戦を経て、7月30日の準々決勝は勝ち抜けの順位により、鹿島(1位抜け)か埼玉(3位抜け)への移動か、2位抜けの場合は宮城での連戦となる。

準決勝は8月2日で、8月5日に3位決定戦が行われ、6日の決勝は東京の国立競技場で行われる。

高倉監督は「オリンピックは短期決戦。勝利に向かって真っすぐに気持ちを1つにして進んでいけるかが大事になる。みんなで一つになって戦っていきたい」と話す。

また、世界制覇を遂げたU-17日本女子代表やU-20日本女子代表も歴任してきた選手の成長を見てきた指揮官は、「年代別代表を経験して、(相手に)引け目を感じる者はいない。やってやるというメンタリティを持った選手が増えている」と、選手のメンタル面での成長にも手ごたえを示している。

女子プロリーグのWEリーグ開幕を今秋に控えて、日本国内では各チームのプレシーズンマッチに実戦の場が限られる。これが選手の本大会前の調整にどのような影響を及ぼすのか気になるところだが、高倉監督は大会前のリーグ戦で怪我人が発生した過去の事例も念頭に、「必ずしもマイナスではない」という考え方を示す。

選手も国内で試合がない状況を活用して、MF長谷川唯選手(ACミラン)やFW岩渕真奈選手(アストンビラ)、FW田中美南選手(レバークーゼン)ら海外リーグで試合経験を積む選択をした選手も少なくない。

DF宝田沙織選手(ワシントン・スピリッツ)はセレッソ大阪からFWとして加わったが、代表チームでのポジションを考慮して、センターバックとしてのプレーを監督に直談判し、出場を続けている。五輪へ向けた選手の意識は高く、これまでにはないアプローチでもある。

なでしこジャパンは4月8日、11日に行われた国際親善試合でパラグアイとパナマに、それぞれ7-0で快勝し、11日は女子決勝の舞台となる国立競技場で試合を行い、本番での決勝進出へのイメージも膨らませた。今後は6月10日と13日、7月14日に国際親善試合を行い、本番へ備える。

本大会へ向けて、なでしこ指揮官は「チームがどれだけ国を背負って戦う覚悟を持って臨めるかがすごく大事になる。チームの技術戦術面と心の部分で、最高のレベルまで持っていかなければならない」と話している。

取材・文:木ノ原句望