平野美宇 Photo by Steph Chambers/Getty Images
東京オリンピック卓球女子団体で金メダルを目指す日本チームが順調に駒を進めている。
8月2日に行われた準々決勝では、アジアの強豪台湾に3-0でストレート勝ち。石川佳純(全農)/平野美宇(日本生命)のダブルスペアとエースの伊藤美誠(スターツ)がストレートで勝つと、3番で登場した平野もゲームカウント3-1で勝利。4番の伊藤へ繋ぐことなくチームの準決勝進出を決めた。
苦労した娘の晴れ舞台に母「5年は長かった」
平野の活躍を待っていたファンは多いだろう。今大会、団体戦から合流した平野はすこぶる調子が良く、肩の力が程よく抜け動きがスムーズ。足もよく動いている。そして、何より表情が生き生きとしている。
トップアスリートも人の子だ。そのときの状態はやはり顔に出る。平野も例外ではない。
リザーブに甘んじた2016年のリオ五輪。その悔しさをバネに女子ワールドカップでの日本人初優勝やアジア選手権で丁寧、朱雨玲、陳夢の中国トップ選手を次々に破っての優勝、世界卓球2017ドイツでの日本女子48年ぶりの銅メダル獲得など目覚ましい活躍を見せた。
だがそれゆえに国内外の選手にマークされ、2017年後半あたりからは思うような結果が出せなくなった。
また、2019年の壮絶な東京五輪の代表争いや2020年以降はコロナ禍の影響、さらには腰痛も抱え十分に練習ができなくなった。
他にも計り知れない気苦労があったに違いない。彼女の表情は曇りがちなことが多かった。
しかし、念願の五輪の初舞台では、まるで霧が晴れたようにすっきりとした表情を見せている。
平野が3歳半の頃から小学6年生まで卓球を教えた母・真理子さんも、わが子の雄姿を山梨県の実家で見守りながら、「(リオ五輪からの)5年は長かった。いい表情でプレーしているのを見て、気持ちが充実しているんだなと思ったら、母としてとても嬉しくなりました」と胸を熱くする。
気持ちを落ち着けフォア前からの展開にチェンジ
自身2戦目の準々決勝では、まずダブルスで石川とのコンビネーションが冴えた。2人はポイントごとに声をかけ合い、ゲームの主導権を握っていく。
試合を振り返る平野は「石川さんに声をかけていただいて、自信を持って試合をすることができました」と語り、先輩パートナーの石川も「いろんなパターンを練習してきたので、それをどんどん使っていこうという気持ちでした。二人とも声を出して、勇気も出してプレーできたのがすごく良かった」と話している。
そして、平野のシングルス。伊藤からバトンを受け取った平野は、Tリーグの日本生命レッドエルフで2019-2020シーズンまでチームメートだった陳思羽と対戦し、第1ゲームの出足から得意のバックハンドをクロス、ストレートへと際どいコースに打ち分けていく。
第2ゲームもロングサーブやチキータレシーブを駆使した攻めの3球目、4球目攻撃に出たが、ここではミスが先行し第2ゲームを陳に奪われた。
しかし、この後の修正が見事だった。第3ゲームに入るチェンジコートの際、女子代表の馬場美香監督から、「少し急いでしまってるというアドバイスをいただいた」と明かす平野は冷静になるために気持ちを落ち着け、1球目から攻めていくボールから一転、サービスもレシーブもフォア前に手堅く集め、一旦相手を前に寄せてからラリーに持っていく展開に変更。
そうしたことでミスが減り、のっけから7連続ポイントで、あっという間にリードを広げた。そして第3、4ゲームともに11-4で奪い勝利した。
平野は「戦術というよりかは自分の気持ちを少し変えました」と話すが、以前は攻めたボールがミスになると、そのまま連続ミスで失点する傾向にあったことを考えると、彼女が紆余曲折を経て精神的にも技術的にもまた一回り成長したことを実感する。
3日に行われる香港との準決勝(夜7時30分開始予定)、それに勝てば5日にはいよいよ金メダルをかけた決勝(夜7時30分開始予定)を迎える。おそらく相手は世界最強の中国になるだろう。
厳しい試合になることは間違いないが、今の平野ならば本来の爆発力で中国のぶ厚い壁に風穴を開けられるかもしれない。
かつて中国で「ハリケーン」の異名をとった平野。再び嵐を巻き起こせ。
(文=高樹ミナ)
石川佳純・平野美宇 写真:ロイター/アフロ