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2018年12月13日 放送
機能性の追求を武器に!スポーツメーカーのサバイバル経営

- デサント 社長 石本 雅敏(いしもと まさとし)
冬には売り切れになるという国産の高級ダウンがある。スポーツメーカーのデサントが開発した「水沢ダウン」だ。毎年、セレクトショップで大人気となっている。創業83年になるデサント、野球のユニホームに始まったスポーツウェア分野では、かつてアディダスで大ブームを作った。しかし、アディダスとの契約が切れ、赤字にも転落。そこで、ものづくりの原点に戻り、自社ブランドの育成強化に方向転換。今ではメジャーリーガーの大谷選手をはじめ多くのプロ選手に信頼される一方で、高い機能性は「水沢ダウン」など一般にも人気となる商品につながり、存在感を増している。そのサバイバル経営に迫る!
社長の金言
- 商品にブランドを語らせて 競争するTweet
RYU’S EYE
座右の銘
放送内容詳細
世界に見せつけたデサントクオリティ!売れ切れ続出の「水沢ダウン」
ヨーロッパブランドひしめくダウンジャケットの中にあって、国内最強のダウンと称されるまでに成長している「水沢ダウン」。製造販売しているのがスポーツメーカーのデサントだ。ちなみに「水沢」というのは工場のある岩手県の地名からとられている。もともとは2010年バンクーバー五輪で日本選手団に提供するために全社を挙げて開発し、五輪に先がけ2008年から一般販売された。究極の機能性を追求した結果、他のダウンとは一線を画すシンプルで洗練されたデザインに帰着。発売以来、トレンドに左右されないことも人気の秘密となっている。また、人気の火つけ役となったのがセレクトショップだ。本格的なダウンジャケットをタウンユースとして店頭に並べ、さらにその機能性の高さに、年々ファンを増やした。今では、本格的なダウンシーズンを前に完売してしまうほどの人気だ。「水沢ダウン」の高機能を実現しているのは、工場のベテラン職人たちだ。スポーツなどプロ仕様の商品開発に強みを持つデサント。メジャーリーグで大活躍の大谷選手のアンダーウエアや、サッカー元日本代表の遠藤選手のシューズ、水泳の瀬戸選手のスイムウエアなど、100名以上の一流スポーツ選手をサポート。デサントは、こうしたトップ選手の本格的スポーツウェア技術を、広く一般の人にも使えるように商品を展開している。こうした高機能を武器に、デサントは売り上げを伸ばしている。
アディダスショックから復活!ものづくりの原点回帰
デサントは社長の祖父、石本他家男(たけお)が大阪で1935年に興した紳士服店「ツルヤ」がはじまり。野球少年だった他家男は1953年に野球ユニホームの開発に成功。プロ野球の中日ドラゴンズに採用され、1970年代後半には12球団中11球団のユニホームに採用されるまでになった。社名をデサントに変更したのは1961年、野球ユニホームだけでなく、スキーウエアの開発や海外スポーツブランドのライセンスビジネスにも着手。1970年にはアディダスとライセンス契約を結んだ。プロ選手のユニホームになり、その後ファッションとしてもブームとなった。1997年には売り上げが1000億円を超える企業へと成長した。しかし翌年の1998年、アディダスとの契約が解消、売り上げの4割を占めていたアディダス無きあとは赤字にも転落し窮地に陥った。このアディダスショックを教訓とし、自社ブランド強化に全社一丸となって取り組んだ。ものづくりの原点に戻り、ついに機能性を追求した水沢ダウンも誕生。さらに、海外展開も強化した結果、2017年度には売り上げも過去最高の1411億円を達成した。
プロ仕様のスポーツウェア技術を日常にも!
デサントは、商品の企画開発力が競争力の源泉と位置づけている。2018年7月に大阪府茨木市にスポーツウェアの開発拠点を新しく開設した。人工気象室、人工降雨室、全天候型トラックなど最新鋭の施設には、デサント契約のプロスポーツ選手たちが製品のフィードバックにしばしば訪れる。デサントの商品開発は創業当時から、トップ選手の意見を聞くことを徹底している。それが高い機能性につながり、一般販売しても快適に着てもらえるウェアになるのだ。
ゲストプロフィール
石本 雅敏
- 1962年大阪府出身。慶応義塾大学卒業
- 1984年電通に入社。その後渡米し、MBAを取得。
- 1996年デサントに入社
- 2013年代表取締役社長に就任
企業プロフィール
- 本 社:大阪市天王寺区堂ヶ芝1-11-3
- 創 業:1935年
- 従業員数:3469名

創業者は、4度も召集され、戦後、最終的に、スポーツウエアの開発・生産を選んだ。平和とは何かを示すエピソードだ。アディダスから契約を解消され、重大な危機を迎えたが、生き延びた。むしろショックをバネにして、業績を回復させた。私見だが、その企業理念には、スポーツマインドが中核としてある。デサントとは仏語で滑降だが、他に暴落という意味もあり、社名として反対の声もあった。「社名は辞書ではなく現実で生きる」創業者の言葉だ。デサントは現実を生き、そして今、象徴のような、画期的なダウンを作り上げた。