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2017年3月23日 放送
日本の食卓を変える窯元!
主婦殺到の"便利土鍋"の秘密

- 長谷園 7代目当主 長谷 優磁(ながたに ゆうじ)
- 長谷園 8代目当主 長谷 康弘(ながたに やすひろ)
主婦の間で噂になっている75万台を売った大人気の炊飯土鍋がある。その名も「かまどさん」。実は、この土鍋15分間中火で加熱し、火を止めて20分蒸らすだけで、釜戸を使って「はじめ、ちょろちょろ、中ぱっぱ、赤子が泣いても、蓋とるな」で炊いたような、ふっくらとした、美味いご飯が、火加減の調整をしなくても再現できる優れもの。食べた人に、こぞって「もう炊飯器には戻れない」と言わしめる、感動を生む土鍋なのだ。そんな土鍋を生み出したのが、三重県伊賀市にある180年以上の歴史を持つ伊賀焼の窯元・長谷園。古くは、千利休が使用する茶器などを手掛けていたが、その後、清水焼や信楽焼などの有名焼き物の下請けに甘んじてきた窯元だ。そんな下請け窯元が、なぜ空前のヒット商品を生む会社に変貌できたのか?直面する危機を乗り越え、土鍋を使った食卓革命に挑む、老舗窯元の逆転秘話を徹底取材した。
社長の金言
- “時代の変化”の中に新たなチャンスがあるTweet
RYU’S EYE
座右の銘
放送内容詳細
自宅の食事が美味しくなる!主婦殺到の感動土鍋
東京・恵比寿に主婦の間で注目を集める土鍋専門店、その名も「いがもの」。あまり聞きなれない伊賀焼の専門店だ。しかし、店内は、連日のように多くの女性客で賑わっている。並んでいるのは、これまで世の中に無かった“機能性陶器”など200種類。例えば、煙が出ず、食卓で薫製を楽しめる土鍋「いぶしぎん」や、蒸し料理が簡単に作れる「ヘルシー蒸し鍋」。さらに、電子レンジやIHでも使える土鍋まで…しかも、その全てが、家庭料理のおいしさがアップする魔法のような土鍋だという。そんな食卓の常識を打ち破る土鍋を次々と開発したのが、伊賀焼き最大の窯元・長谷園7代目 長谷優磁(77歳)だ。主婦のココロをとらえて離さない感動の土鍋の秘密とは…
倒産寸前の危機を乗り越えた“脱下請け”物語
長谷園は三重県伊賀市の小さな産地にある。1832年、初代・長谷源治が16の窯が連なる登り窯を作ったのが始まりだ。しかし、当時の伊賀焼は知名度も低く、長谷園は、信楽焼や清水焼の下請けの仕事をせざるを得ない状況に追い込まれる。そんな長谷園に大きな転機が訪れたのは、優磁の父、6代目の彰三の時のこと。彰三は、伊賀焼に使う土を徹底的に研究し、建築用のタイル製造に事業を拡げたという。そんな窯元の7代目に就任したのが、法政大学の工学部を卒業した優磁だった。優磁は、会社を焼き物の下請けとタイル事業で存続させていくつもりだったが、その前提を覆す出来事が起こってしまう。それが、1995年の阪神淡路大震災。この地震の報道で、タイルが崩れる映像が繰り返し放送され「タイルは、重くて地震に弱い」というイメージが広がり、売り上げの7割を占めた建材用タイルに、キャンセルが相次いだのだ。年間の売上高が6億円程度の時に18億円の借金…そんな中で長谷園は起死回生の勝負に打って出る!逆境を克服した“感動の復活秘話”の全貌に迫る。
ヒットを生む秘密は「作り手は真の使い手であれ!」
世の中にない商品でヒットを連発してきた長谷園。それを可能にさせたのが優磁の「作り手は真の使い手であれ」という、ものづくりのポリシーにある。常に客の立場に立ってニーズをつかむことで、思わず買いたくなる新商品を生んできた。長谷園が守ってきた失敗知らずのヒットを生む秘策、その真髄を追った。
ゲストプロフィール
長谷 優磁
- 1939年旧阿山町(現・伊賀市)生まれ
- 1962年法政大学工学部卒業後、製陶業の修行
- 1966年家業に就く
- 1975年代表取締役社長に就任
- 2007年代表取締役会長に就任
企業プロフィール
- 築窯:1832年(天保3年)
- 本社:三重県伊賀市丸柱569
- 売上高:6億円8千万円(2016年12月期)
- 従業員数:84人
- 事業内容:伊賀焼 窯元
長谷 康弘
- 1969年旧阿山町(現・伊賀市)生まれ
- 1993年日本大学卒業後、東武百貨店入社
- 1997年長谷製陶入社
- 2007年代表取締役社長に就任
企業プロフィール

新素材の鍋が次々に開発されている。土鍋は、対照的で、人類最初の土器という説もあり、誕生は1万6000年前に遡るという。長谷さん親子は、そんな土鍋に改良を加え、魔法のような商品を生み出してきた。「かまどさん」の開発には4年かかった。確信があったわけではない。だが、「無理だ」とは決して思わなかった。重要なのは「できるだろうか」という問いではない。「やるだろうか」だ。寝ても覚めても考え続けることで、「完成」のイメージが生まれる。だから、長谷園の土鍋には、調理器具を超えたアートのような風格がある。