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伊藤美誠を支える松﨑太佑コーチ、孫穎莎の巧みな戦術に「まんまとやられた」【五輪卓球】

2021.07.31
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2021.07.31

伊藤美誠・松﨑太佑コーチ Photo:Itaru Chiba

 7月24日に始まった「東京オリンピック」の卓球競技もいよいよ折り返し。後半は8月1日から男女団体戦が行われる。

混合ダブルス、女子シングルスおよび団体の全ての代表に名を連ねる伊藤美誠(スターツ)は、前半の競技日程を終えて2個のメダルを手にした。

1つは26日の夜、日本中を沸かせた混合ダブルス金メダル、もう1つは29日の夜に決まった女子シングルス銅メダルだ。

これで伊藤は前回大会のリオ五輪の女子団体銅メダルと合わせて3個の五輪メダルホルダーとなった。ちなみに女子シングルスのメダル獲得は日本卓球界初の快挙である。

 女子シングルス準決勝では同い年のライバル、孫穎莎(中国)にストレート負けを喫し、がっくりと肩を落とした伊藤。試合直後のインタビューでは、その目に涙を浮かべ、会場の東京体育館を後にしても悔しさが繰り返し込み上げてきたという。

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伊藤美誠 Photo:Itaru Chiba

「(試合のことが)蘇ってくると悔しいし、いろんな人に『(3位決定戦)頑張って』と言われても悔しい。(応援してもらえて)嬉しいのに、何を言われても悔しいなって」

 気持ちを切り替えて臨んだ夜の3位決定戦でも、序盤はユー・モンユー(シンガポール)に押され第1ゲームを奪われた。

ベンチで戦況を見守っていた伊藤の専属コーチの松﨑太佑氏は、「美誠対策をしっかりやってきてるな。多分、孫選手に負けた試合や美誠が負けた他の試合をすごい研究してきてるなという感じがしました」と話す。

「美誠対策」のひとつは伊藤のバックハンドだ。例えば孫は本来の破壊力のあるパワードライブを打たず、ゲーム序盤から伊藤のバック側にあえて緩いボールを送ってきた。スピードと回転を殺した"死んだ球"だ。

これに伊藤がつかまった。ラケットのバック面に表ソフトラバーを貼る伊藤は早い打球点と速いピッチで返球するのが得意だが、威力のないボールに対しては打球点が定まらずタイミングが狂う。松﨑コーチは言う。

「わざとボールの質を下げてきた。孫選手の特長はやっぱり強いボール。強打に対してはすごく準備をして練習してきていたんですけど、真逆のことを極端にやってきた。そこに美誠が対応できなくて、他の部分も全部崩れてしまった。うまく美誠の力を出させないようなやり方でまんまとやられてしまったという感じです」

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伊藤美誠 Photo:Itaru Chiba

 伊藤も「負けるにしろ全て出し切りたいじゃないですか。それがちょっと出来なかったのが悔しいです。(銅メダルを取っても)悔しい気持ちの方が強くて、嬉しい気持ちはちょっと薄い。1あるかなぐらいで99は悔しい」と悔しさの度合いを表している。
 
 松﨑コーチといえば小学生だった伊藤を指導し、伊藤が中学1年生になるのを機に専属コーチとなった。勤めていた会社を辞めてまでの一大決心だった。

以来、伊藤が3歳になる前から卓球を教え込んだ母・美乃りさんと伊藤との"三人四脚"で、東京オリンピックの金メダルに向かって猛進してきた。

 しかし、一番の目標にしてきた東京オリンピックの金メダルには届きそうで届かなかった。

 3位決定戦が終わったとき、すでに手にしていた混合ダブルスの金メダルの重さを松﨑コーチにたずねると、「実はまだ触ってないんですよ。なんか触りたくないなと思って」と驚きの発言。その真意は「触っちゃうとシングルスの金メダルが取れない気がするなって。満足しちゃって」と話してくれた。

オリンピックのメダルはコーチや監督には授与されない。けれど形ではない。指導者はそれ以上の価値を感じ選手とともに戦っているのだ。


(文=高樹ミナ)

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女子初のシングルス銅メダルでも悔し涙の伊藤美誠 Photo:Itaru Chiba

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東京2020 卓球競技 各種目日程

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