バックナンバー
2019年1月24日 放送
新薬でインフルエンザと戦う

- 塩野義製薬 社長 手代木 功(てしろぎ いさお)
インフルエンザ流行の季節。インフルエンザ新薬を開発した塩野義製薬は、業界大手が注力しなかった感染症分野に力を注ぎ、「鳴かず飛ばず」といわれた企業を手代木社長が劇的に復活させた。いつしか、「手代木マジック」と言われるようになった経営手腕とは?
社長の金言
- 51対49で勝つTweet
-
RYU’S EYE
座右の銘
放送内容詳細
インフルエンザの季節到来!猛威と戦う!
皆さんインフルエンザの予防対策どうしていますか?受験を控えた中学生をもつ父。「今年は何としても防がないと。子供にうつしてしまったらシャレにならない」と家庭内感染に気を使う。また、「深蒸し茶」の産地、静岡県菊川市では、市内の全小学校に「給茶機」を導入。お茶でうがいをし、インフルエンザを予防する。
しかし、新年のクリニックには多くの患者が。医師「感染は仕方ない。でも、他にうつさないことが大事」という。インフルエンザと診断された患者に、ある薬が処方された。わずか1回の服用で済むインフルエンザの新薬「ゾフルーザ」。既存薬タミフルが5日間飲むのに対し、「ゾフルーザ」は1回のみ。ウイルスが急減するので、人にうつさないことが期待されている。「ゾフルーザ」を開発したのは塩野義製薬。大阪に本社を構える創業140年の老舗企業。社長の手代木功は、1990年代、業績不振で「終わった会社」と揶揄されていた塩野義を劇的に復活させた。「手代木マジック!」と言われる経営手腕に迫る。
インフルエンザ新薬開発の現場に潜入! 開発の裏に「手代木マジック!」
塩野義は、1990年代他社の開発した薬の販売で実績があった。そのためか、営業は強かったが、創薬力は弱かった。研究者は論文ばかり書き、薬を開発しなかった。改革にむけ白羽の矢が手代木に。2004年に研究開発部門トップになり、「創薬型企業」を目指すことを決意する。「薬を作るのが製薬会社本来の仕事だ!研究だけしたいなら大学に戻れ!」そして、25あった研究分野から「感染症」など3分野に絞り込んだ。抗がん剤の研究チームも解体。現場は猛反発したが「人数が圧倒的に多い大手に勝てるのか!嫌なら代案を出してくれ」と理詰めで現場を納得させた。そして2008年48歳で社長に。
今、世界の製薬業界は、メガファーマと言われる巨大製薬企業が資金と人材を投入し、新薬の開発競争を繰り広げている。そんな中で、塩野義は国内でも10位。メガファーマに規模では及ばない。しかし、大手でも開発が難しい“新薬”が、手代木リードで14年間に7つも生まれているのだ。通常、新薬の開発には、約15年の月日を要するが、ゾフルーザは約10年で成功した。何故、それが可能だったのか。開発現場に初めてカメラが入った!
世界のインフル患者を救え!
昨シーズン全米では、インフルエンザが大流行。警戒感が強まる中、新薬ゾフルーザがアメリカFDAでも承認された。2018年11月ニューヨーク、手代木の姿が。スイスの製薬大手「ロシュ」のCEOセベリン氏との面談。ロシュは「タミフル」を開発販売してきた世界最大のメガファーマだ。そのロシュに、日本・台湾以外の世界での販売権を与えた。ロシュの販売力で世界のインフルエンザ患者に新薬を届ける!
ゲストプロフィール
手代木 功
- 1959年仙台市生まれ
- 1982年東京大学薬学部卒業、塩野義製薬入社
- 1987年
&94年
2度アメリカに赴任 - 2008年社長に就任
企業プロフィール
- 本 社:大阪市中央区道修町3丁目1番8号
- 1978年:大阪・道修町で創業
- 2018年:新薬ゾフルーザ販売
- 売上高:3447億円(17年度)
- 従業員数:約5000人(連結)

生命科学の急速な進歩の影響も大きく、莫大なコストがかかる新薬の開発は、メガファーマが圧倒的に有利だ。だが塩野義は、研究開発の優先順位、選択と集中の徹底、それに海外メガファーマとの提携を含む経営戦略で、特別な存在感を示す。「患者さんが必要とする新薬を作り続ける」「製薬会社としての原点に回帰」手代木さんはそう言う。社長塾では、正解のない問題を巡り罵声が飛び、泣き出す社員もいるらしい。だがスタジオの手代木さんは、とても優しく、穏やかで謙虚な人だった。情とロジックが見事に融合した人物だった。